ビットコインに特化するメタプラネットは、完全子会社「ビットコインジャパン株式会社」の設立を発表した。あわせて、プレミアムインターネットドメイン「Bitcoin.jp」を取得した。
新会社は、ビットコイン関連のメディア、イベント、サービスを統括する。具体的には、ビットコイン特化の出版物ビットコインマガジンジャパンの運営を担い、2027年開催予定のビットコインジャパンカンファレンスを主催する。
アジアの大手ビットコイン企業が戦略的拡大を計画
Sponsoredメタプラネットは現在、アジアの主要な「ビットコイントレジャリー企業」と位置づけられ、20,136 BTCを保有。世界の上場企業のビットコイン保有量ランキングで6位に入る。サイモン・ゲロビッチCEOは年初に、世界のトップ10入りを目指し「保有量を10,000 BTC以上へ引き上げる必要がある」と述べていた。同社は9月に20,000 BTCの節目を達成した。
今回の子会社設立は、同社の事業戦略における重要な転換点を示す。従来のビットコインの取得・管理中心の活動から一歩進め、より包括的なエコシステムの構築へと舵を切る。「Bitcoin.jp」ブランドの下で既存事業と将来の取り組みを統合し、透明性と収益性の向上を図る方針だ。
個人所有者からのドメイン購入
「Bitcoin.jp」ドメインの取得は、企業ブランドの強化にとどまらない戦略的意義を持つ。同社はプラットフォームを積極活用し、広告やアフィリエイトなど商業収益機会の拡大を図るとともに、日本におけるビットコインエコシステムの中核的情報ハブの確立を目指す。日本の暗号資産分野で情報発信と商業活動の影響力を高める狙いがある。
特筆すべきは、同社が10年以上にわたり個人所有者から当該ドメインを直接取得し、仲介会社や第三者を介さなかった点である。
Sponsored Sponsoredメタプラネットの米国事業
メタプラネットは同時に、米国で完全子会社「メタプラネットインカムコープ」を設立した。フロリダ州マイアミに拠点を置き、ビットコイン収益事業と関連デリバティブ取引に注力する。計画資本金は1,500万ドルで、デリバティブ取引を含む収益創出活動を強化する。
これらの動きは、同社が国際展開と国内基盤の構築を並行して進める「二重軌道戦略」を採用していることを示す。米国子会社は金融商品開発に注力し、国内子会社は情報発信とコミュニティ形成に軸足を置く。役割分担を明確にし、連携を強化する構えだ。
業界への影響と課題
Sponsored Sponsored今回の事業拡大は、日本の暗号資産業界全体に多面的な影響を及ぼす可能性がある。第一に、メディア運営やイベント開催を通じた情報発信の強化が期待される。国内では、正確で包括的な暗号資産情報の不足が課題となっており、メタプラネットの参入が情報ギャップの解消に資する可能性がある。
第二に、事業モデルの多角化が業界全体のリスク分散に寄与し得る。多くの暗号資産企業が取引所や投資に特化するなか、同社の包括的アプローチは新たな収益源を生むモデルとなる可能性がある。
一方で、デジタル資産トレジャリー(DAT)企業に特有の構造的リスクも顕在化しつつある。ビットコイン価格が高水準を維持するなかでも、同社株価は大きく下落しており、セクター共通の課題といえる。
たとえば、マイクロストラテジーの株価は今月15%下落し、長く享受してきたビットコイン保有プレミアムを失った。DAT企業の株価とビットコイン価格の相関に変化が生じ、投資家がビジネスモデルの持続可能性に疑問を抱き始めたことをうかがわせる。
DAT企業が直面する主なリスクには、まずビットコイン価格との乖離リスクがある。伝統的には高い相関が見られた「ビットコイン関連株」だが、足もとでは株価がビットコインの動きに連動しない場面が出ている。次に、新たな米国会計基準(ASU 2023-08)の適用により、ビットコインの評価損(未実現損失)が株価の下押し要因となる可能性がある。
Sponsored加えて、規制動向の変化、市場ボラティリティへの耐性、事業拡大に伴うリソースの多様化が企業成長に及ぼす影響など、注視すべき点は多い。
成長戦略の実現可能性
同社は極めて積極的な成長目標を掲げている。2025年度のビットコイン収益目標を232%から600%以上へ引き上げ、BTC取得目標を4,369 BTCから15,000 BTCに上方修正。円建て増加目標は16億ドル(2,300億円)とした。2025年第2四半期の連結業績は、前年同期比で売上高が約41%増の約810万ドル(12億円)、営業利益が約38%増の約540万ドル(8億円)と、引き続き財務の拡大基調を示している。
新会社の設立により、メディア運営やイベント事業からの新収益の確保を見込み、ビットコインの保有・管理と併せてビジネスポートフォリオの安定化を図る。2025年度の連結業績への影響は軽微と見られるが、中長期的な業績押し上げ効果に期待が集まる。
暗号資産市場の成熟が進むなか、メタプラネットの包括的アプローチは、投機一辺倒を超えて事業基盤の構築を志向する新たな企業モデルの姿を示しており、業界内外から注目される展開といえよう。