エンターテインメント事業を主力とし、日本上場企業で初のソラナ・トレジャリー事業に参入しているモブキャストホールディングスは19日、2025年10月下旬以降、ソラナ(SOL)の取得を継続し、同日時点で総額約3.5億円相当になったと発表した。同社はステーキング報酬の獲得やバリデータ運用の試験開始を進め、トレジャリー戦略とデジタル資産運用の構築を模索している。
SOL取得推移と保有状況
モブキャストホールディングス(以下、モブキャストHD)は2025年10月24日以降、暗号資産ソラナ(SOL)の取得を継続している。会社発表によると、同日から12月19日までの取得総額は約3億5000万円相当に達し、保有数量は13,800枚超となっている。
Sponsored取得単価の推移をみると、11月初旬以降は平均取得価格が2万5000円前後で推移しており、相場変動を受けながら資産形成を進めている状況である。こうした保有の拡大は暗号資産トレジャリー(DAT)戦略の一環として進められており、デジタル資産のポジション構築が企業運営に与える影響が注目される。
同社はSOLのステーキングによる報酬も積み上げているとし、現時点で月次のステーキング収益が百万円規模に達しているとの見解を示した。これは複利的な効果によるもので、取得量の増加と報酬の蓄積が同時に進んでいることを示している。ただし、ステーキング報酬はソラナ(SOL)ベースでの計測であり、日本円換算では価格変動に応じて影響を受ける点に留意が必要である。暗号資産市場全体がボラティリティの高い局面にあるなか、これらの収益性評価には市場価格の変動リスクが直結する。
バリデータ運用とトレジャリー戦略の転換点
2025年11月末に公表された別の動きとして、モブキャストHDはソラナ上でのバリデータ運用を試験的に開始した。バリデータはブロックチェーンの合意形成に参加するノード運用者を指し、ネットワークの安定性やセキュリティ確保に寄与する役割を担う。試験運用の目的は運用ノウハウの蓄積やネットワーク貢献度の評価にあるとみられ、将来的なバリデータ本格稼働に向けた準備段階と位置付けられる。
バリデータ運用開始は、単なる保有目的を超えてデジタル資産との関与を深める動きになる可能性がある。他方、バリデータ運用には技術的な運用管理やインフラコストが伴うため、収益とコストのバランスが重要な判断材料となる。ソラナのようなProof of Stake系ブロックチェーンにおけるバリデータ参加は、取引検証手数料や報酬による収益獲得の機会を提供するが、一方で稼働要件やセキュリティリスクへの対応も不可欠である。
暗号資産市場における企業トレジャリーの潮流
企業による暗号資産の保有・運用は、近年トレジャリー戦略の一部として関心が高まっている。特にビットコインなどの主要資産を対象とした事例が多かったが、SOL のようなエコシステム系トークンを対象とする動きも散見されるようになった。本件のように取得量の増加、ステーキング報酬の蓄積、バリデータ運用の検討という複数の局面を同時に進める取り組みは、企業トレジャリーの多角化を示す一例である。
ただし、暗号資産市場は流動性や価格変動が大きいという特性を持つため、企業の財務戦略として組み込む際には適切なリスク管理が求められる。財務諸表上の評価損益の変動や規制環境の変化が収益性に影響を与え得るため、外部監査や開示ルールとの整合性にも留意する必要がある。モブキャストHD の取り組みが今後どのような収益評価や運用方針につながるか、市場関係者の関心が集まっている。