米格付け大手ムーディーズは、ステーブルコインを対象とした新たな評価フレームワークをつくり、利回りではなく償還可能性や準備資産の質など、信用リスクを軸に分析する姿勢を明確にした。ブルームバーグが18日、報じた。
評価基準の提示は、USDTやUSDCといった主要ドル建てステーブルコインの位置づけを相対的に浮き彫りにすると同時に、日本市場における円建てステーブルコインの役割を再定義する契機となる可能性がある。
ムーディーズが示したステーブルコイン評価の枠組み
ムーディーズは先週、ステーブルコインを対象とした信用評価フレームワーク案を公表した。従来の暗号資産評価が価格変動や市場流動性に焦点を当てる傾向が強かったのに対し、同社は「常時、額面で償還できるか」という点を中心に据える。
Sponsored具体的には、準備資産の構成と流動性、発行体のオペレーショナルリスク、ガバナンス体制、規制環境といった要素を多面的に分析し、最も脆弱な要因が全体評価を左右する設計とした。
アルゴリズム型ステーブルコインは対象外とされ、評価はあくまで信用リスクに限定される。これは、ステーブルコインを投機対象ではなく、決済・資金移動インフラとして位置づける姿勢を明確にしたものといえる。
米ドル建てステーブルコインの評価軸と市場の反応
この評価枠組みは、USDTやUSDCなど主要ドル建てステーブルコインにとって重要な意味を持つ。これらは既に国際送金、暗号資産取引、分散型金融(DeFi)における基軸資産として広く利用されており、金融機関や事業会社がカウンターパーティリスクを意識する場面も増えている。
ムーディーズの枠組みは、こうした利用実態を背景に、第三者による信用リスクの可視化を試みるものだ。評価結果が公表されれば、取引所の取り扱い判断や法人の決済手段選択に影響を与える可能性がある。
日本市場においても、ドル建てステーブルコインは海外取引やクロスボーダー決済を中心に利用が拡大しており、信用評価の有無が実務上の選別基準となる局面が想定される。
円建てステーブルコインの立ち位置と日本市場の課題
一方、日本では円建てステーブルコイン(JPYC)が制度対応を進めているが、市場での役割はドル建てとは性格を異にする。現在、日本で流通する円ペッグ型は国内利用を主眼とし、為替リスクを回避したい事業者の決済需要に焦点を当てている。
国内の報道では、円建てステーブルコインの成長戦略は国際競争ではなく、国内取引や法人間決済に特化する方向性が指摘されている。ムーディーズの評価枠組みは、こうした円建て資産に直ちに適用されるものではないが、準備資産の透明性や償還プロセスの信頼性が将来的に国際的な評価対象となる可能性を示唆する。
2026年に向け、日本市場ではドル建てステーブルコインが国際決済を担い、円建てが国内インフラを補完するという役割分担がより明確になるとみられている。