ネパールでは、ジャック・ドーシーが開発した分散型メッセージングアプリ「Bitchat」のダウンロード数が急増している。汚職に対する若者主導の抗議活動と、大規模なSNS禁止措置の拡大が背景にある。
9月8日、ネパールでのダウンロード数は48,781件に達し、これは世界全体の約39%を占めた。
Bitchat、検閲耐性ツールとして浮上
Bitchatはインターネットを必要とせず、30メートル以内のデバイスをつなぐBluetooth Low Energyのメッシュネットワークを利用。暗号化メッセージは複数デバイスを経由して転送され、ネット遮断中でも通信可能だ。
Sponsoredさらに、このアプリはメッシュ経由で事前署名済みビットコイン取引を中継できる機能を備えており、革新的な機能の一つとして注目されている。
世界全体では9月初旬までに125,486件に達し、インドネシアやロシアでも不安の高まりの中でダウンロード数が急増。インドネシアでは議会手当や警察暴力への抗議活動のさなかに8月だけで12,581件、ロシアは8,749件、米国でも8,211件が記録された。
ドーシーはBitchatを「災害調整と検閲回避のための週末プロジェクト」として設計。ランダムなピアID、トリプルタップでの緊急消去機能、IRCスタイルのコマンドによるトピックチャットルームなどの機能を搭載している。
今回の急速な採用は、検閲に抗う「自由技術」への需要の拡大を示している。
抗議活動はネパールで数十年ぶりの深刻な政治的動乱を引き起こし、少なくとも30人が死亡、KPシャルマ・オリ首相が辞任に追い込まれた。
当局は登録要件を強化し、FacebookやYouTubeを含む26の主要SNSを遮断。デジタルプラットフォームに依存するZ世代の活動家たちは、生活や抗議活動が封じられたことに強い憤りを示している。
ネパールの政治的不安定は根深い。2008年の君主制廃止以来、17年間で13の政府が交代している。
また、トランスペアレンシー・インターナショナルの2024年腐敗認識指数では107位と低評価で、制度的な統治の失敗を反映。エリート層の富の誇示と若者の高失業率が「ネポキッズ」現象への反発を招き、抗議の炎をさらに強めている。