米国財務省と内国歳入庁(IRS)は、暗号資産を保有する企業に課される「未実現利益」に対する15%の最低税を緩和する方針を打ち出した。暗号業界からの強い反発を受け、当局が一歩引いた格好だ。
新指針は、マイクロストラテジーやコインベースといった大手企業のロビー活動を受けて策定された。彼らは「紙上利益」への課税は不公平であり、株式や債券などの伝統資産と扱いが一致しないと主張していた。
IRS、企業の暗号資産税負担を軽減
Sponsored財務省とIRSは、米上院財政委員会の公聴会に先立ち、企業代替最低税(CAMT)の負担を和らげる暫定指針を発表した。これにより、企業は暗号資産の未実現利益を調整後財務諸表所得(AFSI)の計算から除外でき、売却・交換・利用時にのみ課税される形となる。
「税の不確実性は米国の投資先としての魅力を損ない、遵守を難しくする。暗号資産を巡る明確なルールが必要だ」 —— マイク・クレイポ上院財政委員長
未実現利益課税の罠
CAMTは2022年のインフレ抑制法で創設され、平均所得10億ドル以上の大企業に15%の最低税を課す仕組み。2023年12月にはFASB会計基準により、企業は暗号資産を公正価値で計上する義務を負った。その結果、売却されていない資産の価格変動も損益計算書に反映され、紙上利益への課税リスクが浮上していた。
新指針によって、課税は従来型資産と同様、実現時ベースで行われることが明確になり、暗号資産企業にとっては大きな安心材料となる。
ロビー活動と議会の同盟者が税制優遇を確保
業界は1月から強い圧力をかけてきた。マイクロストラテジーやコインベースはIRSに正式書簡を送り、CAMTが適用されれば「資産を売却して納税資金を確保せざるを得ない」と警告。共和党のシンシア・ルミス上院議員らも財務長官に対し、投資阻害を避けるために指針を緩和するよう要請していた。
今回の発表で、米国に拠点を置く暗号資産企業は、少なくとも課税ルール面での一貫性を得られる見通しとなった。今後は議会審議を経て正式な制度に落とし込まれるかが焦点となる。