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NFTと推し活が生む新市場、地域活性化からライブ体験まで広がる活用

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執筆&編集:
Shigeki Mori

13日 11月 2025年 10:44 JST
Trusted-確かな情報源
  • NFTを活用した推し活が地域経済と音楽業界に変革をもたらし、アーティストとファンの新しい関係性を構築している。
  • AKB48広島実証実験では参加者93%が買い物を実施。ローチケNFTは100案件超の実績を積み重ねている。
  • 音楽NFTはアーティストの直接収益化を可能にする一方、認知度の低さや法整備の遅れが課題として残る。
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ブロックチェーン技術を活用したNFTが、アーティストとファンを結ぶ推し活の新たな形として定着しつつある。
NTTテクノクロスはこのほど、JTB、ビットトレード、DHと協力し、推し活と地域活性化を結ぶ実証実験「AKB48×広島寄り道イベント」の結果を発表した。

調査結果では、参加者の93%が店舗で買い物を行い、推し活が地域経済に直接貢献する可能性が示された。チケットのNFT化やデジタルコンテンツの配布など、ファンとアーティストの関係を再定義する取り組みが、音楽業界を中心に広がりを見せていることがわかった。

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従来の物理的なグッズやチケット半券に代わり、デジタル上で永続的に保存できるNFTは、推し活の証明として、また新たな収益源として注目を集める。一方で認知度の低さや技術的障壁、法整備の遅れといった課題も残されており、市場の成熟には時間を要する見込みだ。

ブロックチェーンが実現する地域活性化モデル

NTTテクノクロスが2025年9月に実施した「AKB48×広島寄り道イベント」は、推し活とNFTを組み合わせた地域活性化の新モデルとして注目されていた。この実証実験では、ファンが事前取得したNFTを活用し、広島市内の対象店舗でQRコードを読み込むことで、AKB48メンバーの限定デジタルコンテンツを獲得できる仕組みを導入した。

出典:PR Times

実験の結果、参加者は平均3店舗を回遊し、93%が実際に買い物を行った。さらに96%が「広島の魅力に触れることができた」と回答しており、推し活を通じた地域観光の促進効果が確認された。店舗側からも「新規来店のきっかけができた」「売上増の効果を感じた」との報告が寄せられ、今後のコラボレーションに前向きな姿勢が見られた。

出典:PR Times

ブロックチェーン技術の特性を活かし、NFTは特定のイベントや地域に限らず、次回イベントや他地域との連携にも活用可能である。NTTテクノクロスは協力企業のJTBやビットトレードとともに、今後の事業化に向けた実証実験やプレ商用化を計画している。推し活を軸とした地域活性化プラットフォームの実用化が期待される。

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ライブ・コンサート体験を変えるNFTチケット

チケット販売大手のローソンチケットは2022年6月から「ローチケNFT」を展開しており、2023年11月時点で100案件を超える実績を積み重ねている。このサービスは、チケット購入者が実際に参加したイベントの座席番号などが記載された記念NFTを発行するもので、紙チケットの半券をデジタル上で半永久的に保存できる点が特徴である。

東方神起のジェジュンのコンサートでは、アリーナ前方席の購入者に約1万枚のNFTが発行された。NFT付きチケットは通常チケットよりNFT分の価格が高く設定されているが、購入者の30%以上がこれを選択しており、ファンからは「唯一無二の席番入りメモリアルNFT」として高く評価されている。

2025年6月には「NFT ART TOKYO 5」が東京で開催され、ソニーのブロックチェーンプラットフォームSoneiumが初の音楽NFTコレクションを手掛けるなど、企業の参入も加速している。レコチョクもNFTチケットソリューションを提供しており、チケットの偽造防止や転売対策に加え、イベント後のアーティストからのメッセージ配布など付加価値の提供を可能にしている。ブロックチェーン上で取引記録が保存されるため、転売業者の迅速な発見も実現する。

音楽業界の新たな収益モデルとしてのNFT

音楽NFTは、アーティストの収益構造を変革する可能性を秘めている。従来のストリーミング配信では再生回数に応じた分配が主流で、アーティストの収益は限定的であった。しかしNFTを活用することで、アーティストは中間業者を介さずファンに直接楽曲や限定コンテンツを販売でき、売上の大部分を受け取ることが可能となる。

OIKOS MUSICは楽曲の権利をNFT化し、アーティストとファンが共同保有できるマーケットプレイスを運営している。ファンは「OIKOS」と呼ばれるNFTを購入することで、保有割合に応じてサブスクリプションサービスで生じる利益の一部を受け取れる仕組みだ。2022年のサービス開始から約1年で4000近いNFTを販売するなど、着実な成長を遂げている。

ソニーのSoneiumは2025年2月、Web3レーベルCoop Recordsと提携し、東京を拠点とするプロデューサーNUU$HIの未発表楽曲を含む初の音楽NFTコレクションを公開した。価格は0.000777 ETH(約2ドル)に設定され、99万9999個のNFTに約22分間の音楽が埋め込まれている。Soneiumは「音楽収益化モデルを再定義している」と宣言しており、大手企業の本格参入が市場拡大を後押ししている。

一方で、音楽NFTには課題も存在する。

NFTへの認知度はまだ低く、ブロックチェーン技術の理解には専門知識が必要である。また仮想通貨の価格変動に連動するため、NFTの価値が大きく上下するリスクがある。セキュリティ面では、ウォレットのハッキングや秘密鍵の紛失による盗難の危険性も指摘される。著作権や法整備も不透明であり、NFTを購入しても楽曲を自由に使う権利を得られるわけではない場合が多い。

それでもアーティストにとって、NFTは音楽配信サービスやCD販売以外の新たな収入源となる可能性がある。転売時にアーティストに収益が入るロイヤリティの仕組みもあり、継続的な収益獲得が期待できる。市場が成熟し法整備や技術の進歩が進むにつれ、デメリットは軽減されていく可能性が高い。NFTを活用した推し活は、アーティストとファンの新たな関係性を構築する手段として、今後も発展が見込まれる。

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