ARKインベストとアンチェインドによれば、量子コンピューティングは突然発生する「Qデー」イベントとして登場する可能性は低い。代わりに、技術的進歩を伴い段階的に登場するため、市場とビットコイン(BTC)ネットワークは、本当の脅威が顕在化する前に準備や適応の時間を確保できると指摘する。
両社がこのほど公開したホワイトペーパーでは、量子コンピューティングの商業利用から暗号への本格的影響までの進展を5段階で示すフレームワークを提示している。
5段階フレームワークで量子開発の進捗を分類
このホワイトペーパーは、アンチェインドのドゥルベ・バンサルCSO、トム・ホンジク(アンチェインド カストディリサーチディレクター)、そしてARKインベストのデビッド・プエル(トレーディングアナリスト兼アソシエイト・ポートフォリオマネージャー)によるもの。量子の脅威を体系的に評価する手段を提供する。
フレームワークはステージ0から始まる。この段階では量子コンピュータは存在するが、商業的な有用性を持たない。現時点でこの技術がある位置だとホワイトペーパーは指摘する。
「現在のシステムは“NISQ時代”にあり、論理量子ビットは約100個、回路深度は数百である。これはビットコインの楕円曲線暗号(ECC)を破るために必要な閾値には到底届かない。ECCを破るには最低でも2330論理量子ビット、数千万から数十億の量子ゲートが必要だ」と著者らは述べている。
ステージ1では、量子システムが化学や材料科学など特定の業種で商用利用可能になる。ステージ2で転換点を迎える。この段階になると、量子技術が弱い鍵や 廃止された暗号システムを突破できるようになる。
「ビットコインが採用する強力な256ビットECCを破る高度なCRQCが登場する前に、よりシンプルなCRQCが現れ、短い鍵やバグのある実装を使った脆弱な暗号システムを破ることになるだろう。その結果、CRQCによる攻撃は最も脆弱なシステムから始まり、徐々にビットコインのような強固なシステムへと対象を広げていく可能性が高い」と論じている。
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ステージ3は、ビットコインにとって現実的なリスクとなる最初の段階。このレベルの量子コンピュータは理論上、ビットコインの秘密鍵を守るECCを破ることも可能。しかし、実際の処理には依然として多くの時間がかかる。
「大まかに言うと、2011年以前に作成されたビットコインのデポジットは、当時広く用いられていたP2PKアドレスの形式から量子的な脆弱性を持ちやすい。一方、近年のシステムは量子耐性を有している場合が多い。朗報として、ビットコイン保有者は幅広いウォレットやカストディアンで量子耐性アドレスを活用可能だ」
最終段階のステージ4は最も重要な閾値となる。この時点では、量子マシンがビットコインのブロック生成時間(10分)以内に秘密鍵を破ることができるとされる。報告書によると、
「ステージ4でプロトコルレベルの対応を怠れば、ビットコインは実用的な金融システムとして深刻な打撃を受ける。プロトコルにとって存在的な脅威となる。ビットコインが通貨として機能し続けるためには、量子コンピューティングがステージ4に到達する前に、完全な量子耐性アドレスのサポートが必須だ」
ARKインベストとアンチェインドは、量子耐性のあるビットコインアドレスへの提案はすでに存在し、ネットワークに関わる利害関係者は、必要に応じて防御策を導入する強力なインセンティブを持っていると指摘する。
また、ポスト量子暗号(PQC)の進展は、ビットコインの暗号保護を打ち破る暗号的に意味のある量子コンピュータ(CRQC)の開発よりも現状で先行している点も強調した。
著者らは、量子コンピュータが長期的なリスクをもたらす一方で、現時点で直ちに脅威となるものではないと主張する。技術が進化する中で、ビットコインコミュニティは引き続き調査やネットワーク保護策の検討を続けるべきだと述べている。
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ビットコインと量子技術の将来予測3案
一方で報告書は、この脅威が現実化するまでの三つのシナリオも提示した。悲観的シナリオでは、突如として量子分野で大きなブレイクスルーが起こり、ビットコインコミュニティが不意を突かれるケース。
この場合大きな混乱は生じるものの、著者らは複数のPQC案がすでに存在するため、追い詰められても導入は可能であるとしている。
楽観的シナリオでは、量子コンピューティング開発に障壁が立ちはだかり、進展が鈍化する。その間にビットコイン側は十分な調査や試験、量子耐性アップグレードを実装する時間が与えられる。
バランス型シナリオでは、主流の機関予測と一致しており、量子コンピュータがステージ3に到達するには今後10〜20年かかると予想する。
「我々の見解では、10〜20年の間にPQC研究コミュニティがアルゴリズムで十分な進歩を遂げ、ビットコイン開発コミュニティにはブロックチェーンや仮想マシン、関連ツール、デバイス、関連企業に向けた適応および最適化の時間が確保される」と論じている。
このように、本報告書の結論は一貫している。現状、ビットコインは危険にさらされていない。量子コンピューティングへの関心はここ最近の進捗報道を受けて高まっている。しかし、現在の技術力とビットコインを突破する力との間に隔たりは依然として大きい。