米国のRipple Labs(リップル社)が発行するドル建てステーブルコインRLUSDは8日、複数ブロックチェーン上での発行を背景に時価総額が約12億〜13億ドルに急伸した。マルチチェーン戦略を採用することで、決済・流動性用途を広げており、ステーブルコイン市場における構造変化の一端を示している。
マルチチェーン構造とRLUSDの拡大
米リップル社が発行するステーブルコイン RLUSD は、2024年12月の発行開始から約1年間で時価総額1億ドル台を超えていたが、2025年12月8日時点で「約12億~13億ドル」規模まで成長したと報じられている。
Sponsored同コインが特筆されるのは、従来単一チェーンで展開されることが多かったステーブルコインに対し、EthereumとXRP Ledger(XRPL)という異なるブロックチェーン上にネイティブに発行され、かつ両者のインフラ特性を活用するマルチチェーン設計を採っている点である。
Ethereum上では DeFi(分散型金融)流動性やスマートコントラクト連携などが強みであり、XRPL上では低遅延・低手数料の決済処理といった“支払い原資”用途が想定されている。こうした構成が、流通・ユースケース拡大に寄与しているとの分析が目立つ。
ステーブルコイン市場構造と国内投資家への示唆
ステーブルコイン市場においては、従来から存在する大手ドルペッグコイン(例:USDC/USDT)が支配的な地位を占める一方、新規発行体による“規制対応型”ステーブルコインの台頭が注目されている。RLUSDの場合、発行元が米ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)監督下の信託会社を通じて発行しているとの報道もあり、規制対応・準備金裏付け・マルチチェーン実装の観点では一段階上の設計と評価されている。
日本の暗号資産投資家にとって意義深い点として、こうしたマルチチェーン戦略を支える技術・流動性構造を理解することが挙げられる。例えば、ドル建てステーブルコインを保有・活用する際、発行チェーン・流動性プール・ネットワークリスク・規制リスクなどを把握することは運用リスク低減に資する。
また、国内取引所・ウォレットでの入出金利便性や為替(ドル/円)影響、取引所在国の規制対応も検討すべきである。さらに、ステーブルコインが“支払い原資”として活用され始めている現況下では、マルチチェーン構造は決済エコシステムの変化を示す指標ともなり得る。
課題と展望―日本市場の視点から
しかしながら、RLUSDの急拡大には留意すべき論点もある。まず、マルチチェーン設計ゆえにチェーン間の流動性移動・ブリッジリスク/スマートコントラクト脆弱性・クロスチェーンの流通監査といった技術/運用面の課題が残存する。また、規制環境の地域差が大きく、国外発のステーブルコインを日本の投資家が活用する際には、国内法規(例えば日本の暗号資産交換業規制・税務・出入金ルート)との整合性を確認する必要がある。加えて、ドル建て資産を保有する際の為替リスク(ドル安・ドル高による円換算時の変動)も無視できない。
展望としては、RLUSDのようなマルチチェーン対応ステーブルコインが、グローバルな決済インフラやトークン化資産(Real-World Assets=RWA)市場の中で“基軸資産”になり得る可能性がある。特に日本では、地方の企業や金融機関がブロックチェーンを使った実証に乗り出しており、チェーン選択・マルチチェーン対応を視野に入れた設計が一層重要になろう。暗号資産投資家としては、こうした制度・技術インフラの潮流変化を踏まえ、自身のポートフォリオや決済・保有戦略を再検討するタイミングと言えよう。