7月が終わりに近づくなか、ビットコイン(BTC)市場では月末特有の利益確定売りの圧力が再び強まり始めている。市場関係者の間では、8月以降の相場転換への警戒感が高まっている。現在、市場関係者やオンチェーン分析からは、ビットコイン価格に影響を与えうる主な売り圧力として4つの要因が指摘されている。
1. 再活性化した「休眠クジラ」ウォレットからの利益確定
BeInCryptoが7月初旬に報じたように、約14年間動きのなかった8万BTCを保有するクジラウォレットが動き出し、売却活動が始まったことが確認されている。この動きはGalaxy Digitalが支援したとみられ、同社のウォレットから大量のBTCが取引所へ流入している。

CryptoQuantのデータによれば、Galaxy Digitalからの資金移動は過去にもビットコイン価格の下落と重なっている。7月29日にはLookonChainが、さらに3782BTC(約4億4700万ドル相当)の移動を報告した。
Galaxy Digitalは再びクライアントのBTC売却を支援しているのか?過去12時間で、Galaxy Digitalはさらに3782BTC(4億4700万ドル)を移転し、その大部分が取引所に送られた。
さらに、BeInCryptoは、6年から14年の間非活動だった2つの追加の休眠ウォレットが活発化したと報じた。SpotOnChainはこのほど、3つの休眠クジラウォレットが3〜5年の保有の後に1万606BTC(12億6000万ドル)を移動したと報告した。
2. 長期保有者からの売り圧力の兆候
ビットコイン市場の売り圧力として、市場を支えてきた長期保有者(LTH)からの売却の動きも注目されている。暗号資産分析企業CryptoQuantのデータによれば、LTHは7月末にビットコイン価格が12万ドル近辺に達すると売却に転じ始めた。これは相場の変動が大きくなる可能性を見越し、一部の投資家が慎重な姿勢を取って利益確定に動いたためとみられる。

Sponsored Sponsored長期保有者は、12万ドル付近でネットポジションをマイナスに転じ始めた。この水準は歴史的に心理的な節目となっており、過去の相場サイクルを通じてビットコインを保有してきた投資家が利益確定を始めた兆候と考えられる
2025年の第1四半期にも、長期保有者によるネットポジションの減少が相場を押し下げ、BTC価格が一時7万5000ドルを割り込む場面があった。今回も同様の売却が継続すれば、8月の相場は大きな調整圧力を受ける可能性がある。
3. マイナーの流出が増加中
3つ目の売り圧力として指摘されているのが、ビットコインマイナーによる売却の動きだ。CryptoQuantのデータによると、7月に一時的に落ち着いていたマイナーウォレットからのBTC流出量が再び増加に転じている。この流出量はトレンド転換の兆候として注目されている。
マイナーは、採掘コストや設備運営費用を賄うため、あるいは相場が上昇したタイミングで利益を確定する目的で売却を行うことが多い。今回のようにマイナーからの売却が継続すれば、クジラや長期保有者の売却動きとも合わさって、市場全体に対する売り圧力が強まる可能性がある。

マイナーウォレットから送金される1取引あたりの平均コイン量が増えると、同時に複数のマイナーが一部の保有分を売却していることを意味し、価格下落を引き起こす可能性がある
4. 米国投資家からの売り圧力
Sponsoredコインベースプレミアムと呼ばれる指標は、米国の取引所コインベースとグローバル取引所バイナンスにおけるビットコインの価格差を示している。この指標がマイナスに転じると、コインベースでのビットコイン価格が相対的に低く、米国市場での需要が弱まっているか、売却が優勢になっていることを示唆している。

コインベースプレミアムが再びマイナスに転じた。米国市場でビットコイン需要が弱まりつつある兆候であり、注意が必要だ
過去のデータでは、この指標がマイナスになったからといって必ずしもトレンドが反転するわけではないが、相場の勢いが弱まっている可能性を示唆することが多い。この状態が長期化すれば、下落圧力が一段と強まる恐れがある。
8月のMVRV比率からの反転シグナル
一部のアナリストは、4カ月間上昇が続いたビットコイン相場が8月に入り、転換点を迎える可能性を指摘している。暗号資産分析企業Coinglassの統計によれば、第3四半期は例年、年間を通じて最も軟調となる傾向があり、特に8月はその中でも下落率が大きくなる傾向があるという。
Sponsored SponsoredCryptoQuantのアナリストYonsei氏は、市場価値と実現価値の比率を示すMVRV比率が直近の上昇でサイクルのピーク水準に近づいており、8月末までに転換シグナルが現れる可能性があると指摘している。

2021年には、このMVRV比率がダブルトップを形成し、相場のピークを的確に予測したケースがあった。今回も同様のパターンが繰り返されれば、8月がビットコイン相場の目先の高値となり、その後は調整局面に入るとの見方が強まっている。
市場が楽観と慎重さの両方を持つべきタイミングに入った。オンチェーンデータに基づいたリスク管理を強化し、柔軟な対応が必要になる
一方で、仮想通貨市場の調査会社Kaikoは、市場の流動性に関しては依然として強気な見解を示している。同社の分析では、現在の市場は大口取引を吸収できるだけの流動性を有しており、機関投資家を中心とする需要も底堅いとしている。
大口注文をこなせる流動性の高さや、価格変動に左右されにくい機関投資家の存在は、市場の安定性を示す好材料だ。これらのトレーダーは価格に対して無関心であり、BTCの価格動向にとって良い兆候となるだろう
こうした状況から、クジラ、長期保有者、マイナーなどによる売却で短期的な相場の変動が生じる可能性はあるものの、現在の市場環境は深刻な下落を回避する力を有している可能性もあるとみられている。