ウォール・ストリート・ジャーナルが引用した最新の調査によると、米国の関税が国内経済に密かに重荷となっているという。この重しが、2023年10月の売り圧力以降、暗号資産市場が勢いを取り戻せない理由とも考えられる。
ドイツのキール世界経済研究所の調査によれば、2024年1月から2025年11月までに課せられた関税の96%を米国の消費者と輸入業者が負担した。一方、外国の輸出業者が負ったコストはわずか4%。
関税収入およそ2千億ドルは、そのほとんどが米国内で支払われた。
Sponsored関税が国内消費税と同様の役割
この調査は「関税の負担者は外国生産者」という政治的主張の根幹に異議を唱える。実際には、米国の輸入業者が国境で関税を支払う。その上で、コストを吸収もしくは転嫁する。
外国の輸出業者は主に価格を据え置いた。その代わり、米国向け出荷量を減らすか、他市場へ供給を振り向けた。その結果、輸入品が安くなることなく、貿易量のみが減少した。
経済学者はこの影響を緩やかな消費税と呼ぶ。価格は急上昇せず、コストは時間をかけてサプライチェーン全体にじわじわ浸透する。
米国インフレは穏やかも圧力強まる
米国のインフレ率は2025年まで比較的落ち着いている状況が続いた。それゆえ、関税の影響は限定的と判断した向きもある。
しかしWSJが引用した調査では、関税コストの約20%のみが6か月以内に消費者価格へ転嫁された。それ以外は輸入業者や小売業者の利益を圧迫した。
この転嫁の遅れが、インフレが穏やかに見える一方で、購買力が静かに蝕まれた理由。圧力は突然ではなく、徐々に蓄積した。
暗号資産市場の停滞との関連
暗号資産市場は余剰流動性を前提とする。家計や企業が余剰資金の投下に自信を持てる時、市場は上昇する。
関税はこの余剰をゆっくりと吸い上げた。消費者が多くを払い、企業がコストを負担。投機的資産への資金流入が弱まった。
これが、10月以降に暗号資産が急落せず、かつ上昇にも転じなかった理由の一つ。市場は流動性の高原に入った。弱気相場ではない。
Sponsored10月の下落によりレバレッジは清算され、ETFへの資金流入も鈍化した。通常ならインフレ鎮静化でリスク志向が戻る環境だった。
しかし、関税が金融環境を密かに引き締めた。インフレ率は目標を上回り、FRBは慎重なまま。資金供給は広がらず。
その結果、暗号資産価格は横ばい。パニックは起こらず、継続的な上昇材料もなかった。
総じて、今回の新たな関税データだけでは暗号資産の変動性は説明しきれない。ただし、市場が停滞した理由の一因とは言える。
関税は密かに金融システムを引き締め、余剰資金を奪い、リスク志向の回復を遅らせた。