ビットコインマイニング企業のHut 8は17日、クラウドインフラプロバイダーのFluidstackと総額7兆円規模のAIデータセンターリース契約を発表した。この動きは、暗号資産マイナーがAIインフラに事業軸を転換するという業界全体のトレンドを強調するもの。
発表を受けてHut 8の株価は急上昇し、ここ最近続いていた株価の変動期に終止符を打ち、投資家の関心が再燃したことを示した。
SponsoredHut 8の画期的なAIリース契約の舞台裏
この契約には、ルイジアナ州River BendキャンパスにおけるHut 8のAIコンピューティング能力245メガワット分が含まれており、15年間の基本リース期間となる。
さらに、5年ごとの延長オプションが3回設定されており、契約全期間では総額約17兆7000億円に達する見込み。またこの契約により、Fluidstackはキャンパス拡張時に最大で追加1000メガワット分の優先リース権を持つ。
初期リースに加え、本契約はHut 8とAI開発企業Anthropicとの広範な提携の一環でもあり、将来的には最大2.3ギガワット規模まで拡大する可能性がある。
アルファベット傘下のGoogleが初期リース期間の財務的な裏付けを提供しており、大手クラウド事業者がAI向け大規模電力の長期確保に本腰を入れていることが窺える。
Hut 8はこのプロジェクトで、リース初期期間中に約6兆9000億円の純営業利益を見込む。
Sponsored発表後、投資家の反応は好意的で、プレマーケット取引でHut 8株は約20パーセント上昇した。
この動きは同社の経営安定化への取り組みを示しており、ビットコインマイナーが長期的な生き残りをかけてAI計算分野へ転換する業界全体のトレンドを体現している。
ビットコインマイニングに構造変化
この1年で、ビットコインマイニングは構造的により困難な事業となった。ネットワーク難易度の上昇、ハッシュレートの一時的な急増、電力費の高騰、半減期後の環境により、利益率が着実に圧迫されている。
その結果、ビットコイン専業企業として上場を維持する多くのマイナーは、安定した収益や成長ストーリーを示せず苦戦してきた。こうした流れの中で、事業構成の多角化に舵を切る企業が増えている。
一方、人工知能分野の急速な拡大により、演算能力需要は大きく高まっている。ビットコインマイナーはすでに大規模な電力や産業インフラを保有しており、AIデータセンターへの転換は現実的かつますます必要な戦略と見なされる。
Hut 8もこうした業界全体の潮流を認識しており、ここ数週間のビットコイン価格の変動により株価の安定を見いだせなくなっていたという状況が背景にある。