米国で成立したGENIUS法の影響を受け、利回りを生むステーブルコインに資金が流入している。その中でも特に注目されているのがEthenaの「USDe」だ。しかし、急激な成長には懸念も伴い、これが次の大きな革新となるのか、それとも再びUSTのような問題が起こるのかという不安が高まっている。
USDeの供給量、95億ドルに急増—第3位のステーブルコインに浮上
Ethenaのステーブルコイン「USDe」は、ここ最近、類を見ない成長を記録している。DefiLlamaによれば、直近1か月でUSDeの流通供給量は約75%増加し、95億ドルに達したという。

この急激な拡大により、USDeはテザーのUSDTとサークル(USDC)に次ぐ、時価総額で第3位のステーブルコインとなった。
Entropy Advisorsのデータ責任者トム・ワン氏は、USDeとUSDtbを合わせた時価総額がすでに100億ドルを超えたと指摘し、EthenaがTVL(預かり資産残高)ベースでトップ5のDeFiプロトコル入りを果たしたことを明らかにしている。
二重計上を除いても、EthenaのTVLは現在94億ドルに達しており、間もなく100億ドルを超える数少ないDeFiプロトコルの一つになるだろう。
トム・ワン|Entropy Advisorsデータ責任者
今回の急成長の背景には、7月18日に成立したGENIUS法がある。同法が利回りを生むステーブルコインへの資金流入を促した結果、USDeがその最大の恩恵を受けている。
Sentora(旧IntoTheBlock)のリサーチャー、デビッド・アーナル氏によると、GENIUS法成立以降、USDeには約27億ドルの新規資金が流入したという。テザーにも24億ドルの流入があった一方で、USDCは約8億ドルの資金流出に直面し、市場の信頼が揺らいでいる兆候が現れている。

利回り型ステーブルコインは、もはや一過性のトレンドではなく、DeFiにおける新しい基盤構造になりつつある。
デビッド・アーナル|Sentoraリサーチャー
急成長するUSDe、アナリストから脆弱性を指摘する声も
成長は目覚ましいが、USDeがまだ十分に市場の試練を受けていないとの指摘もある。暗号資産アナリストのデュオ・ナイン氏は、真の弱気相場をまだ経験していないUSDeのリスクを警告した:
このような合成型ベーシストレード・トークンは、市場の厳しい弱気局面を経験するまで、本当に信頼できるものとは言えない。現在の市場規模の膨張は、弱気相場が再来した際にリスクを高めるだろう。
デュオ・ナイン|暗号資産アナリスト
こうした懸念を踏まえ、別のアナリストであるアラン・ザ・イールド・ファーマー氏は、USDeをかつて破綻したUST-LUNAと比較し、このサイクルにおける新たな潜在リスクと指摘している。
また同氏は、USDeが提供する利回り(APY)は3.5%と比較的控えめで、競合のUSDSやUSDYが提供する4.5%以上に比べ魅力が乏しいと指摘し、不安定な市場環境ではEthenaの運用資産残高に圧力がかかる可能性があるとした。
一方で、このような比較は過剰だという意見もある。オンチェーンアナリストのユキ氏は、USDeにはテラのUSTが崩壊した際に問題となった「ペッグ解除」の仕組みがない点を強調し、USDeがより安全に設計されていると主張した。
さらに、暗号資産投資家のブンジル氏は、USDeがETHのステーキングとショートヘッジに裏付けされている点を指摘し、LUNAのようなインフレ型トークンではないことから、リスクが限定的であると警告した:
もしEthenaが自社トークン(ENA)を担保として使い始めたら、私は即座に逃げ出すだろう。
ブンジル|暗号資産投資家
Ethena Labs創業者がリスク管理対策を説明
こうしたペッグ解除への懸念について、Ethena Labsの創業者ガイ・ヤング氏は、リスクを抑えるための重要な対策として、オラクル価格の設定を述べた:
USDeのオラクル価格はAaveプラットフォーム上でUSDTに設定されており、一時的に1ドルから乖離しても清算リスクが抑えられる仕組みになっている。数十億ドル規模で50%のAPYを実現できるのはDeFiだからこそであり、我々のAavethenaがその役割を果たしている。
ガイ・ヤング|Ethena Labs創業者
利回り型ステーブルコインは、DeFi市場においてトレンドを超えて重要な柱になりつつある。だがUSDeが100億ドル規模に近づく今、市場参加者の間には一つの問いが残されている。Ethenaのステーブルコインは本格的な市場の試練を乗り越えられるのか、それともかつてのステーブルコインと同様の混乱が繰り返されるのか—その答えはまだ出ていない。
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