今年初め、ドバイの法人向け車両レンタル会社Gold Car Rentは、長期法人顧客からの需要増加に対応するため、成長資金を調達し車両の増強を目指した。
同社は従来の銀行融資には頼らず、世界中の投資家と現実資産の事業ローンを結ぶWeb3ベースのクラウドレンディングプラットフォーム8lendsを活用して資金を調達した。
この融資は、Gold Car Rentが保有するメルセデス・ベンツVitoバンの車両群を担保として評価・確保するかたちで提供された。
資金は段階的に支払われ、必要書類と請求書が確認されるたびに各トランシェ(分割分)が支給された。返済は、長期B2Bレンタル契約による営業収入から行われる。
Sponsoredこの仕組みでは、投資家はリターンが複雑なイールド構造でなく、事業パフォーマンスに連動していることを確認できる。企業側にとっても、審査基準を下げずにグローバルな資本にアクセス可能となった。
Gold Car Rentの事例は、P2P(ピア・ツー・ピア)レンディングの仕組みを通じて、DeFiイールド分野で静かに進行している変化を示している。この実態をさらに知るため、BeInCryptoは8lendsを展開するMaclearのアレクサンダー・ラングCFO兼共同創業者に話を聞いた。
投資家が安定収入型クラウドレンディングへ移行しつつある理由、8lendsのようなプラットフォームが機関の信用審査手法をWeb3基盤でどう適用しているか、このモデルが暗号資産投資家にとって持続的なパッシブインカム源となりうるかを探った。
2つのモデルと異なるリスクプロファイル
P2Pレンディング、すなわちクラウドレンディングは、暗号資産やDeFiが登場する以前から存在していた。マーケットプレイス型の貸付サービスは長年、銀行が融資しない中小企業と投資家をつなぎ、「実体経済を支えることで確定利回りを得る」というシンプルな仕組みを提案してきた。
だが、このモデルにはトレードオフもある。多くのP2Pプラットフォームは銀行の基準から外れる借り手を受け入れるため、従来型よりもデフォルトリスクが高まる。信用損失は、プラットフォームの審査基準、ローン構造、回収プロセス、さらに借り手企業の事業実績に大きく左右される。
同時に、多くの従来型P2Pプラットフォームは法域による制約があり、投資家の参入やクロスボーダーな分散投資が難しく、リスク管理や執行も域内の法制度に縛られる。
分散型金融(DeFi)は、この課題に異なるアプローチを取った。DeFiレンディングプロトコルではスマートコントラクトによって暗号資産の貸し借りができ、しばしば過剰担保や自動清算によってデフォルトリスクを管理する。
仲介業者や地域制約を排除することで、DeFiは貸付市場へのアクセスを飛躍的に拡大し、さまざまな資本効率の仕組みを導入した。
DeFi利回りエコシステムの初期成長期には、貸付収入とインセンティブ主導型リターンの区別が曖昧だった。一部プロトコルはトークン発行による補助利回りや、流動性・担保安定性への楽観的な前提に依存していた。
Sponsored SponsoredテラのAnchor Protocolはその最も顕著な例だ。全盛期には貸付活動と補助報酬を組み合わせ、UST預金に約20%の年利(APY)を約束。しかし、2022年に基盤となるステーブルコインが崩壊すると、その構造全体が瓦解した。
DeFi盛衰後、利回り見直す投資家の理由
だが、テラの失敗により業界は利回りの持続性を再検証せざるを得なくなった。ラングCFOも、投資家の間で同様の意識変化が生まれていると述べた。高利回りを信じる風潮は後退したが、暗号資産そのものを否定するわけではなかったという。
「多くの人は依然として、暗号資産の利便性・迅速性・世界的アクセスなどの長所は評価していました。しかし、高利回りプロジェクトが相次いで崩壊するのを目の当たりにし、考え方が大きく変わり始めた。例えば『20%リスクフリー』と謳うサービスが一夜で消えたり、突然出金停止になったりすると、非常に強い印象を残します。
こうした経験から、次の高APYを追いかけるのではなく、実業に裏付けられた商品を求めるユーザーが増えました。資金の出所や借り手、リターンの仕組みをきちんと把握できるもの、つまりスローガンや過剰な宣伝ではなく、現実のキャッシュフローに基づいたものを望むようになったのです」とラングCFOは語った。
ラングCFOは「Web3型クラウドレンディングは、従来型とDeFiの中間に位置する」と指摘する。利回りそのものを再発明するのではなく、伝統的な貸付メカニズムを、ブロックチェーンによりアクセス拡大・透明性の規格化・業績の国境横断的な検証を可能とするかたちで進化させている。
「現実の業績に基づく予測可能で分かりやすいリターンを得ながら、暗号資産の世界にとどまることができる――これがWeb3型レンディングの特徴だ」とBeInCryptoに語った。
Sponsored信用規律をオンチェーンに導入
続いてラングCFOは、8lendsがDeFiの要素と従来型クラウドレンディングをどう融合しているかを説明した。開発チームはスイスで実績あるP2Pレンディング企業Maclearの経験を活かしたが、Web2型サービスの延長線上として構築したわけではないという。
むしろポイントは、デジタル分散型環境において信用審査プロセスをどう再設計し提示するかであり、両者の投資家が持つ異なる期待値に配慮したことだ、と同氏は語った。
「従来型融資で人々は法規制や評判を頼りにしますが、オンチェーン利用者はまず透明性を重視します。意思決定の根拠を明示することが不可欠です。そのため、分析情報や借り手評価の方法、リスク監視の仕組みなど、プロセスの中核部分を徹底的に見える化することに注力しました。」
また、Web3ユーザーは進捗が随時反映される情報提供に慣れているとも指摘。最終結果を待つのではなく、途中経過も常に確認したいというニーズに応えるため、8lendsでは投資家が審査手続きの厳格性を維持しながら、動向を分かりやすくリアルタイムで追える情報設計に改めた。
最後の要件は「一貫性」。Maclearは厳格かつ再現性ある手続きを中心に、文書チェックや財務分析、定期モニタリングで評価を築いてきたという。ラングCFOは続ける。
「その運用手続きをブロックチェーン上で再現するには、情報の表示・検証方法を標準化し、ユーザーが論理過程を自ら確認できるようにする必要がありました。」
企業側にとっては、ここにこそブロックチェーンの実益がある。資金フローや返済、業績データをその都度開示でき、スマートコントラクトによる一貫運用でオペレーションリスクも軽減される。同時に、引き続き審査基準の厳格さを保ったまま、世界中のユーザーにサービスを開放できる。
Sponsored SponsoredProof of Loan―8LNDSは利回りを置き換えず参加を促進
ブロックチェーン・インフラによる透明性とアクセス性の向上に加え、8lendsは独自トークン「8LNDS」も導入した。これは、同プラットフォームが展開するWeb3型クラウドレンディングエコシステムへの参加を促す仕組みである。多くのDeFi系トークンとは異なり、8LNDSは貸付商品の経済性を変更するものではなく、コミュニティの関与や長期参加の強化を目的とした設計。
8lendsの貸付利回りは、引き続き固定型で、資産担保型・借り手のパフォーマンス連動型となる。8LNDSトークンはこの枠組みの中で機能し、リワードやロイヤルティ制度、またアクティブな貸し手に対する追加特典を、従来型とWeb3ネイティブ双方のユーザーに提供する。
「8LNDSはパブリックセールや初期流動性の供給によるローンチではなかった。収益獲得専用トークンとして、直接プラットフォームでの活動に応じて配布される形で始まった」とティモシキン氏が説明した。
8LNDSは、8lends独自の「Proof of Loan」メカニズムを通じて発行される。ユーザーが実際のビジネスローンに出資した際に付与される。つまり、トークン配布は実体経済の貸付活動を反映する構造であり、投資家が得るリターンは従来通り、営業企業からのローン返済に限定される。
Web3クラウドレンディングの課題
話が終息に向かう中、ラング氏はWeb3クラウドレンディングが一般普及するために求められる条件を挙げた。借り手やローン条件の透明性、明確で理解しやすいリスク評価、そしてインセンティブではなく実際の返済活動に基づくリターン。この3点が最も重要であるという。
また、流動性について誠実である重要性を強調した。固定期間ローンは、即時解約可能な商品ではなく、あくまで定期性投資として扱うべきだと指摘。
「この分野が成長するには、高利回りを訴求するマーケティングではなく、本質的なファンダメンタルズへの依拠が必須だ。透明性が任意となった時、市場が何を経験したかは皆が知っている。安定収入モデルを持続させる唯一の道がここにある」
ラング氏にとって、業界の成功を示す最も明確な兆しは、表面的な成長指標ではなく、投資家の行動変化である。暗号資産投資家が、利回りだけでなく信用の本質で評価する形でビジネス担保型レンディングをスタンダードなポートフォリオ構成要素とみなすようになれば、Web3クラウドレンディングは成熟段階に入った証左となる。
「その転換は、大げさな条件を要しない。Web3投資家の平均ポートフォリオの5%から10%が、現実世界の貸付に振り向けられれば、クラウドレンディングはニッチな概念から通常のパッシブインカム手段となったと評価できる」と同氏は語った。