AMDは、フェイフェイ・リー氏が率いる設立2年のスタートアップ企業World Labsを、株式交換で約82億ドル(約8200億円)で買収する。同氏が立ち上げたImageNetの画像データベースは、現代AIブームの起爆剤となった。
このスタートアップには、実はNvidiaも一部出資している。これにより、Nvidiaは極めて微妙な立場に置かれることとなった。
AMDが「頭脳」を獲得、半導体と組み合わせ
World Labsは、AIに単語や2次元画像ではなく、3次元空間の理解・生成を学習させようとしている。
例えば、ChatGPTは「椅子がテーブルの隣にある」と理解できる。
World Labsは、AIがその部屋が実際に3Dでどう見えるのか――椅子の位置、テーブルとの距離、背後から見た風景、そして物体が動いたり相互作用した際に何が起こるか――なども把握することを目指す。これを「空間的知性」と呼ぶ。
今回の提携を通じ、リー氏はAMDの最高科学責任者(チーフサイエンティスト)に就任し、同社の会長兼CEOに直轄で報告することとなった。
リー氏はSubstack上で、研究所にAMDのような半導体メーカーが必要な理由を語った。
「専任のハードウェア開発がなければ、AIは効率性やスケール面で不利になる。私たちの目的にとってAIは、デジタル世界に閉じ込められたままだ」と同氏は記した。
World Labs買収はNvidiaに何をもたらすか
Nvidiaは、自身が支援した企業と最大の競合が提携する事態を歓迎しない。しかしNvidiaはAI向けオープンワールドモデルで依然として優位性を持つ。
同社の物理AIモデルであるCosmosは、すでにサムスン、LGなどがロボットを開発する際に活用している。
Nvidiaは2月にWorld Labsへ、AMDと並んで出資した。当時の企業価値は約50億ドルだったとSiliconANGLEは伝えている。AMDは今回、約64%高い評価で買収に臨む。
この結果、Nvidiaは同ラボをライバルに奪われるが、SiliconANGLEによれば、出資分が大きなリターンとなる見通し。AMDは株式で対価を支払うため、World Labsの出資者――Nvidiaを含む――はAMD株を受け取ることになる。なおNvidiaは保有比率を公表していない。
この買収は、AMDが初めて企業価値1兆ドルを突破し、Nvidia、ブロードコム、マイクロンに続く米半導体メーカー4社目となった1週間後に発表された。
AI分野の著名研究者「これはアクハイア狙い」と批判
歓迎の声ばかりではない。ワシントン大学名誉教授で計算機科学のペドロ・ドミンゴス氏は、この売却を揶揄した。
「AI解決を掲げて新設ラボを作り、すぐ数十億ドルで売却――そうした目的だったなら、最初から本気ではなかった。『アクハイア狙い』と名乗ったほうが正直だったのでは」と同氏はコメントした。
アクハイアとは、主に人材の獲得を目的としたスタートアップの買収を指す。
リー氏はラボの使命は継続するとしている。共同創業者のジャスティン・ジョンソン氏やベン・ミルデンホール氏もAMD内のチームにとどまる。買収の完了には規制当局の承認が必要であり、年内の取引完了を見込む。









