東証上場のBitcoin Japan(旧堀田丸正)は17日、代表取締役社長兼CEOのフィリップ・ロード氏が2025年12月31日付でBakkt Holdings, Inc.の職務を退任し、同社の経営に専念する体制へ移行すると発表した。同社はAI関連分野への長期投資を中核戦略とし、ビットコインを戦略的リザーブ資産として活用する方針を明確化している。取締役会はロード氏の専任参画が成長戦略の推進に不可欠と判断した。
SponsoredAIインフラへの長期投資戦略を加速
Bitcoin Japanは、世界的にAIインフラへの投資が加速する中で重要な局面を迎えているとの認識を示している。
ロード氏は「この規模の数十年にわたる機会を確実に捉えるには、全面的な集中力、運営上の規律、そして最高水準のガバナンスが不可欠である」と語り、同社の戦略遂行に全時間を捧げる姿勢を表明した。
同社の成長戦略は、AI関連分野における長期的な投資と、投資機会の資本構造全体にわたる規律ある資本配分を中心に据えている。AIインフラ分野における資本パートナーシップの機会が増大する中、取締役会はロード氏の専任体制が目標達成に必要不可欠と判断した。
ロード氏は「これは世代を超えた大きな機会である」とし、すべてのステークホルダーの利益のために規律と誠実さをもって戦略遂行に取り組む意向を示している。
ロード氏はジェフリーズをはじめとする国際金融機関での上級職や、デジタル資産および金融テクノロジー分野でのリーダーシップ職を歴任してきた経歴を持つ。グローバルな資本市場における豊富な経験は、同社の長期戦略の実行と透明性の高いガバナンスおよび規律ある資本配分の実現において重要な役割を果たしていくという。
なお、同報道を受けて、同社株価は本稿執筆時点で、前日比99円安(-15.87%)の525円と急落している。
ビットコインを戦略的リザーブ資産と位置づけ
Bitcoin Japanは、ビットコインを長期的な価値保存手段として位置づけ、安定的なリターンと目標とする配当方針を支えるため、慎重かつ利回り重視の戦略を通じて活用していく方針を示している。同社はビットコイン・トレジャリー戦略を採用し、AI投資と並行してデジタル資産を企業財務の中核に据える姿勢を明確にした。
この戦略は、暗号資産を企業のバランスシート上で保有する動きが世界的に広がる中で注目される。米国では複数の上場企業がビットコインをトレジャリー資産として採用しており、日本市場においても同様のアプローチが浸透しつつある状況を反映している。
同社はまた、関係当局との定期的な対話、適用される法令および取引所基準の完全な遵守、透明性と説明責任に基づくガバナンス体制の維持へのコミットメントを改めて表明した。規制環境が厳格化する中、コンプライアンス体制の強化は上場企業として不可欠な要素となっている。
創業160年超の老舗企業が事業転換
Bitcoin Japanは1861年に日本の伝統的な繊維・きものメーカーとして創業した堀田丸正を前身とする企業である。近年、大規模な事業転換を経て社名変更を行い、デジタル資産とAI分野への投資を中核とする新たな成長戦略を採用した。創業から160年以上の歴史を持つ企業が、先端技術分野へと大きく舵を切る事例として業界内で関心を集めている。
同社の新戦略は、例えば、YZi Labのような企業と同様に長期的なAI関連投資への規律ある資本配分を中心に据えるとともに、ビットコインを戦略的リザーブ資産と位置づけ、安定的なリターンおよび目標とする配当方針を支える構造となっている。
伝統産業からの転換という異例の経営判断は、日本企業の事業ポートフォリオ見直しの動きを象徴する事例といえる。
ロード氏の専任体制への移行は、同社がAIインフラ投資とビットコイン戦略の両面で明確な方向性を打ち出す契機となる。取締役会の判断により、数十年規模の投資機会を捉えるための体制強化が進められることになり、今後の事業展開が注目される。同社は透明性と規律を重視した経営を通じて、長期的な企業価値向上を目指す姿勢を示している。