ビットコイン価格が10万ドルを割り込み、10月の史上最高値から大幅に調整し、国内外のビットコイントレジャリー企業の株価も軟調になる中、暗号資産関連の事業基盤づくりが進みつつある。イオレとGaiaは18日、暗号資産金融分野で提携し、財務戦略としてのビットコイン保有や運用の実務インフラを共同で整備する方針を示した。相場の逆風期における協業は、企業の暗号資産活用を支える新たな枠組みとして注目される。
ビットコイン低迷とトレジャリー企業の負荷
ビットコイン価格は10月の史上最高値から約25%下落し、11月14日には10万ドルを割り込んだ。暗号資産相場全体の投資マインドが弱含むなか、財務戦略としてビットコインを大量に保有する「ビットコイントレジャリー」企業の株価調整も続く。米マイクロストラテジーほか、日本ではメタプラネットが代表例で、同社株は年初来の上昇分の多くを失い、資本調達モデルの持続性が問われている。
暗号資産を企業財務に組み込む場合、カストディ(保管)、鍵管理、取引執行、レンディング、DeFi(分散型金融)運用など、複数の機能を整備する必要がある。相場が下落すると保有資産の評価変動が自己資本に直結し、資金調達環境の変化にさらされる。特に監査や情報開示の枠組みが標準化されておらず、投資家が保有量やリスク状況を把握しにくい点は課題とされる。こうした状況は、企業が暗号資産保有に踏み切る際のハードルを引き上げている。
イオレとGaia、暗号資産の実務インフラ整備へ
イオレとGaiaは11月18日、暗号資産金融事業に関する基本合意を発表した。両社はビットコイン保有(トレジャリー)、資産貸出、DeFi運用、決済インフラ、コンプライアンス対応など、暗号資産管理に必要な要素を共同で整備する。特定サービスの販売を前面に出すものではなく、企業が暗号資産を扱う際の実務手続きを標準化する狙いがある。
イオレは暗号資産を財務戦略として扱う「デジタルアセットトレジャリー(DAT)」を中期計画に掲げる。さらにレンディング(DAL)、運用(DAM)を組み合わせたビジネスモデルを想定している。GaiaはDeFi運用データやレンディングの制度設計、暗号資産決済導線などの知見を持ち、これらを企業向け管理体制に落とし込む役割を担う。
両社の枠組みは企業財務のバックエンドを支える形で、暗号資産の取得から運用、リスク管理、開示までの一連の流れを整える構造となる。国内の金融機関は暗号資産保有に慎重な姿勢を続けているが、企業側の相談ニーズは高まりつつあり、こうした外部パートナー形式の選択肢は一定の需要があるとみられる。
国内金融業界への波及と今後の課題
今回の提携は、ビットコイン下落局面における「受け皿づくり」としての意味合いもある。単に暗号資産を保有するのではなく、どのようなガバナンスで管理し、どのスキームで運用し、どのように開示するかという枠組みが重視されるようになっている。トレジャリー企業の株価調整が続く中、運用プロセスの透明性は企業の説明責任を左右し、投資家の評価にも影響する。
暗号資産関連の財務戦略を検討する企業が増えるほど、実務インフラの整備は不可欠になる。今後は自主規制ルールやAML/CFT(マネロン・テロ資金供与対策)との整合性、DeFi運用時のリスク許容度など、従来の金融とは異なる論点が浮上する可能性がある。ビットコイン相場が低迷する現局面は、こうした基盤整備を進める適期との見方もある。
暗号資産を巡る制度設計が進む中、企業がどの形でビットコインを活用するかは依然として模索段階にある。イオレとGaiaの協業は、国内での暗号資産財務モデルの実装に向けた1つの試みであり、実務運用や規制対応の成果が今後の普及を左右しそうだ。