日本を代表するビットコイントレジャリー企業であるメタプラネットとイオレが25日、相次いであらたなビットコイン(BTC)財務戦略を発表した。ビットコイン価格が未だ回復傾向を鮮明に示せない中、両社の動きが示す意味とは何か。
メタプラネット、BTCを担保に約200億円を借入れ
メタプラネットは25日、保有するビットコインを担保に約203億円の借入れを実行したことを明らかにした。調達資金は、ビットコインの追加取得、ビットコインを活用したインカム事業、そして市場環境に応じた自己株式取得に充当されるという。メタプラネットは、2025年9月末時点で累計保有数を約30,823 BTCと公表しており、ビットコインを財務戦略の主要軸に据えている。
この借入れ手法は、ビットコインを売却せずに流動性を確保しつつ保有を続けるという「トレジャリー運用」の典型と位置付けられ、国内では“日本版マイクロストラテジー”とも称されるにふさわしい動きと言える。保有BTCを担保にすることで、相場が低迷している局面でもレバレッジを掛けすぎずに資本効率を高めようという意図が読み取れる。
Sponsoredイオレ、約1億円で57BTC保有へ 「Neo Crypto Bank」構想の第一歩
一方、東証グロース上場のイオレは25日、11月21日までの期間に約6.97 BTCを取得し、累計保有数を約57.65BTCに拡大したと発表した。購入金額は約9999万9697円、平均取得単価約1434万8,600円だった。
同社が掲げる「Neo Crypto Bank構想」において、ビットコイン保有は単なる資産蓄積ではなく、暗号資産レンディングやDeFi(分散型金融)サービスと連動した次世代金融プラットフォームのリザーブ資産として位置づけられている。
このように、イオレは少額ながらビットコイントレジャリー戦略を財務・事業面から着実に着手しており、BTCを用いた金融サービス構築を視野に入れた動きを示している。
回復の鈍いビットコイン相場下での両社の戦略意義
ビットコイン価格は26日、本稿執筆現在で8万7300ドル付近と、明確な回復トレンドを示しておらず、企業が保有BTCを財務資産として活用するには慎重な環境だ。
ゆえに、両社の戦略には次のような意味がある。
まず、メタプラネットのように保有BTCを担保に資金調達を行う手法は、BTCを売却することなく流動性を確保し、追加取得や事業投資へと再配分する「資産活用型のトレジャリー運用」と位置付けられる。価格上昇を待つ受動的な保有ではなく、保有資産を積極的に運用することで中長期的な企業価値の拡大を図る構図である。
次に、イオレの取り組みは、金額規模こそ限定的ながらも、BTCを単なる資産ではなく金融サービスの基盤とする点に特徴がある。DeFiや暗号資産レンディングと結び付けた「Neo Crypto Bank構想」は、価格変動に依存しない収益機会の創出を志向しており、従来型の保有モデルから一歩進んだ戦略といえる。
両社の共通点は、相場回復を前提とせず、価格停滞局面においても財務・事業の両面からBTCを活用しようとする姿勢にある。これは短期的な価格上昇を狙う投機的運用とは一線を画し、ビットコインを「企業の中長期戦略資産」として位置付ける姿勢を鮮明にするものだ。