7月、米国はGENIUS法の成立により、デジタルドルの世界基準を定めた。これはステーブルコインに関する初の連邦法制であり、ドル裏付けトークンがデジタル決済を支えることをワシントンが公式に確認したものだ。
この動きはアジアで議論を呼び、中国は厳格な資本規制を維持しつつ人民元の利用促進を図るというジレンマに直面している。香港は8月1日に施行された新ライセンス制度を通じて、その妥協策を提示した。
Sponsored香港が開放、中国本土は規制強化
香港金融管理局は、発行者に対し2,500万香港ドルの資本維持、流動性準備の分離、マネーロンダリング防止規制の遵守を義務付けている。ただし現時点ではライセンスはまだ発行されていない。
中国本土では、人民銀行がデジタル人民元の試験運用を最優先課題として再確認。テザー関連送金を取り締まり、企業による暗号資産直接保有を禁止し、オフショア子会社や香港上場商品への露出も制限している。
より広範な課題は…金融業界の保守的文化だ。
—— 香港デジタル金融協会 エミル・チャン氏(CNNインタビュー)
トークン化とインフラ推進
香港はステーブルコイン規制をより広範なトークン化政策と組み合わせている。8月7日には世界初となる現実資産(RWA)登録簿を立ち上げ、データや評価の標準化に着手。カストディやOTC規則に関する協議も進められている。
これは香港を他のアジア諸国よりも一歩先へ進める…各国の青写真となるだろう。
—— アニモカ・ブランズ共同創業者 ヤット・シウ氏(CNN)
民間の取り組みも加速している。HSBCは貿易金融にブロックチェーン決済を導入し、中国資産管理(香港)はアジア初のトークン化小売マネーマーケットファンドを提供。さらにトークン化された金やグリーンボンドもエコシステムに加わっている。

アナリストは、人民元裏付けステーブルコインの実現は依然として難しいと指摘。オフショアCNH預金は1兆元未満にとどまり、オンショアの300兆元超と比べれば発行準備には不十分とされる。そのため香港ドルや米ドルへのペッグの方が現実的だ。
ドル連動型ステーブルコインはすでに大量の米国債を吸収している。香港ドル裏付けトークンも都市のドルペッグに連動するため、結果的に米ドルを強化することになる。
Sponsoredステーブルコイン優位性を巡る地域競争
香港の慎重な開放路線は、北京の禁止・統制姿勢と鮮明な対比を見せる。初期のステーブルコインライセンスは大手銀行やテック企業に与えられると予想され、年内承認が目標とされている。
一方で、シンガポールやUAEは多通貨ステーブルコインの枠組みを推進し、ドル依存を低減しつつ越境流動性を高めようとしている。
現状では、香港のライセンス制度とトークン化推進策がアジアの先頭に立っている。
ただし、高コストのコンプライアンス要件や金融文化の保守性が採用の足かせとなり、当面はUSD連動トークンが地域市場を支配する公算が大きい。