トラスティッド

日本のステーブルコインの現在地:規制は先手、活用は後手

10分
投稿者 Shigeki Mori
編集 Shigeki Mori

概要

  • WebX Fintech EXPOが22日、大阪市内で開かれ、SMBCの磯和氏、Progmatの齋藤氏、サークルの榊原氏が登壇した
  • ステーブルコイン規制の特性、ユースケースなどについて語りあった
  • 齋藤氏は「ジーニアス法とJPYCは、日本の金融市場にとってウェイクアップコール」と期待を寄せた
  • promo

次世代の金融市場における技術革新や規制の動向を議論するカンファレンス「WebX Fintech EXPO」が22日、大阪市内で開かれた。「ステーブルコイン発行の最前線:規制とビジネスの融合」と題したパネルディスカッションでは、三井住友フィナンシャルグループ執行役専務磯和啓雄氏、Progmat創設者兼CEOの齊藤達哉氏、サークル・インターネット・グループ日本担当マネジャー・榊原健太氏が登壇した。

磯和氏はメガバンク、齋藤氏はブロックチェーン基盤企業、榊原氏は米大手ステーブルコイン発行企業としての立場から、モデレーターの坂上謙太(DeFimans取締役 COO/CFO)の質問に答える形で語った。

ステーブルコイン規制、日米の違い

日本の金融業界は今、「ステーブルコイン」という新しい”デジタル通貨”に揺れている。金融庁は8月19日、国内初となる円建てステーブルコイン「JPYC」を承認し、今秋、ようやく正式発行の見込みとなった。「ようやく」と書いたのは、そもそも日本は2022年にステーブルコインの規制を世界に先駆けて制定していたからだ。

一方、米国の環境は日本とは逆で、テザーの「USDT」、サークルの「USDC」が先に社会普及し、ステーブルコインの発行や監視などのルールを定めたGENIUS法が7月に制定された。

榊原氏は「日本と米国の違いには大きく分けて3つある」と説明する。

①日本は、(2022年に)ステーブルコインの規制を世界に先駆けて導入し、各国はそれを参照している。
②米国は先日、ジーニアス法が成立し、ステーブルコインが連邦レベルで監督されるようになった。100億ドル以上の発行がある場合は、米国通貨監督局(OCC)の監視下に置かれることになり、USDCは670億ドル発行しているため、OCCの監督対象になった。
③日本では取引金額が100万円が上限となっており、米国またその他の国と非常に大きな違いがある。

ステーブルコインは、法定通貨と1:1で価値連動するデジタル通貨であり、発行事業者は国債や信託金などでの裏付け資産が必要となる。これは日本も米国も同じだが、磯和氏は「米国では、テザーとサークルを足すと日本円で30〜40兆円ほど発行されている。背景は何が違うと、短期国債の金利が高いため積み上がっていく。日本の短期国債は長年低金利が続いているため、成長しにくい環境にある」と語った。

また、「アンチマネーロンダリング(AML)は主に銀行が管理しているが、ステーブルコインだと当事者で行わないいけなくなるので、そこをどう担保するかが課題だ」と語った。

磯和氏(左から2番目)、齋藤氏(左から3番目)、榊原氏(右)が日本のステーブルコインの現状と展望を語った

ステーブルコイン関連事業者が抱える課題

一方、三菱UFJ銀行を皮切りに大手金融機関共同で設立した、デジタルアセット(セキュリティトークン、ステーブルコインなど)の共通基盤プラットフォームを提供する企業・Progmatの齋藤氏は、「銀行やクリプトに近い業者など、どのポジションでステーブルコインを扱うかによって、規制の影響は微妙に変わる点が課題だ」と指摘した。

つまり、アマゾンなどの小売業においては、100万円を超えるような送金はほとんどないが、銀行などが大企業や機関投資家などの顧客に送金するようなホールセール決済においては、規制の要件が異なってくるため、包括的に規制をクリアできるか否かが課題となる。

ジーニアス法の波及効果に期待

そんな厳しい規制の中で、JPYCが円建てステーブルコイン第1号となった。米大手のサークルはどのように日本でビジネスを展開していくのだろうか?

榊原氏は「USDCを3月末に日本で開始した。そこから、いろんなユースケースのアイデアをいただいた。その中でホールセールの国際送金や財務をステーブルコインに移していくなどの考え方には納得できる。円建てステーブルコインへの需要も非常に高く感じているので、現行の規制の中でもあらゆることにチャレンジしていくことが肝要。ジーニアス法が制定されたことで、日本にも良い波及効果が生まれることに期待している」と語った。

キャッシュレス決済からステーブルコインの活用へ

日本は2010年代後半より、QRコードを使ったキャッシュレス決済が出始めた。現在ではPayPayや楽天Pay、d払いなどさまざまなキャッシュレス決済サービスが乱立している。ステーブルコインはサービスの業態としてはライバルになる可能性がある。これからステーブルコインを活用するビジネスは、どのように向き合うべきか。

磯和氏は「さまざまな”〜ペイ”が生まれ、互換性もなく消費者は混乱したが、現在では各社が連携をとり、繋がってきている。ステーブルコインも今後あらゆる企業が導入すると思うが、立ち上げの時点で、どのステーブルコインを使うのが良いのか迷いのないように、一緒にスタートすることが重要」と語った。

また、磯和氏は「銀行のホールセール業務でいえば、たとえばグローバルな大企業や商社はCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)で資金をプールしているが、当然時差が大きければ資金移動も遅れる。社内ステーブルコインを活用すれば瞬時に送金できるので、資金効率が向上し、労働生産性も上がるだろう」と語った。

ステーブルコインの優位性

齋藤氏は「現在のキャッシュレス決済は各社のデータベースで管理されており、加盟店によって囲い込まれているため相互運用性がない。ステーブルコインは同じ技術規格の上に銘柄が載るため、銘柄間での交換が格段に簡単になる」とステーブルコインの優位性を語った。

グローバルビジネスにおいても、基軸通貨とされる法定通貨は種類は限定的であり、「最初はさまざまなステーブルコインが登場するだろうが、いずれ収斂するだろう」と齋藤氏は予測している。

また、齋藤氏は「ジーニアス法とJPYCの発行は、日本の金融市場にとってウェイクアップコールとなった。ステーブルコインに取り組まないことの方がリスクであることが明確になった」と期待を寄せて締め括った。

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大阪府出身。日本では雑誌編集者、読売テレビ広報記者、豪州では日系メディア編集・記者などを経てフリーに。日本とオーストラリアで20年以上、ジャーナリスト、編集者、翻訳者、ウェブプロデューサーとして活動してきた。近年は暗号資産関連の記事の執筆や翻訳、コンテンツ・マネジメントを行っている。
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