10月の市場ショックにより、暗号資産財務企業(DAT)が保有する資産価値が急落し、業界全体に広範な損失が波及した。
一部のアルトコインは部分的に回復を見せたものの、下落分を補うには至っておらず、今後の蓄積戦略には依然として不確実性が残る。どのDATが損失を出しているのか、そしてどのように対応しているのか――以下の分析がその全貌を明らかにする。
SponsoredETH、SOL、TON、WLFIの財務が10月に損失
DAT(Digital Asset Treasury)モデルは、当初ビットコインを活用したマイクロストラテジー(現ストラテジー)の成功が火付け役となった。その後、ETF承認への期待、機関投資家による蓄積、そしてビットコインの支配力低下を背景に、アルトコイン領域へと拡大している。
これらの企業は、時価総額を活用し、ビットコインやETH、SOL、WLFI、XRP、BNBなどのデジタル資産を積極的に蓄積している。
CoinGeckoのデータによれば、10月時点で複数のDATが顕著な損失を報告している。
- ビットマイン・イマージョン(BMNR): 10月13日、同社は3,032,188 ETHを平均購入価格4,154ドルで保有していると公表。ETHが執筆時点で4,000ドルを下回っているため、約4%の未実現損失を抱える。
- フォワード・インダストリーズ(FORD): 同社は最大のソラナ(SOL)財務を保有し、6,822,000 SOLを所有。総供給量の1.248%を占める。平均購入価格232ドルに対し、現在の損失は2億4,500万ドル超(約-15.5%)。
- アルファトン・キャピタル(ATON): 1,128万TONを蓄積し、総供給量の0.448%を保有。総コスト3,000万ドルに対し、現在の評価額は2,487万ドル。約513万ドルの損失を記録している。
- ALT5シグマ(ALTS): 1,300億ドル超のWLFIを蓄積後、現在の評価額は10億ドルに留まり、約3億ドルの損失を計上。
- その他の企業: ビットオリジンはDOGE保有から約200万ドルの損失を、パイナップル・ファイナンシャルはINJ保有で270万ドルの損失を報告している。
また、複数の企業が7月から8月にかけてXRPを蓄積したが、XRP価格が当時より低下しているため、これらの企業も損失を抱えている可能性が高い。ただし、平均購入価格や総保有量が公表されていないため、正確な損失額は不明である。
これらの損失はすべて未実現であり、アルトコイン価格が反発すれば回復の余地はある。しかし、市場の低迷が続く現状では、そのシナリオはますます不透明だ。
SponsoredDATが損失に直面する際の潜在的影響
アルトコイン価格が平均取得コストを下回ると、DATは深刻な財務上の課題に直面する可能性がある。
年末までに市場が回復しない場合、企業は四半期決算で損失を計上せざるを得ず、純利益の減少や純損失への転落が懸念される。
多くのDATは、アルトコインの蓄積を資金調達するため、転換社債や信用枠などの債務手段を活用している。そのため、資産価格の下落はマージンコールを引き起こす恐れがあり、低価格での売却を余儀なくされるケースも想定される。これが実現損失を拡大させ、流動性リスクを高める。
さらに、株主信頼の低下により株価が急落する可能性がある。株価が企業の純資産価値(NAV)に接近、もしくは下回る場合、経営陣は債務返済や自社株買いのために資産売却を余儀なくされる。この動きがアルトコイン市場にさらなる下押し圧力を与えるリスクも否定できない。
アナリストのジョー・カルラサレ氏は、これらDAT投資家が損失を出している現状を認めつつ、「DATモデルは詐欺ではなく、単に失敗した実験だ」と評した。
DATモデルは詐欺ではない。だが、この実験がうまくいかなかったことは明らかだ —— ジョー・カルラサレ(アナリスト)
10月が進むにつれ、DATの拡大ペースは鈍化しているように見える。マクロ経済の不安や関税圧力の再燃が、企業の慎重姿勢を強めている可能性がある。