暗号資産販売所「Coin Estate」を運営するFINX JCryptoは28日、一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)に正会員として入会したことを発表した。27日には、東証スタンダード上場のTHE WHY HOW DO COMPANY株式会社(ワイハウ)との業務提携契約締結も明らかにし、ビットコインを活用した株主優待制度の導入検討を開始した。国内企業による暗号資産の活用が広がる中、業界団体への参画と新たな株主還元手法の模索が同時に進む形となった。
業界団体への参画で規制対応と協働を強化
FINX JCryptoのJCBA入会は、Web3・暗号資産を取り巻く環境が急速に進化する中、規制・テクノロジー・国際動向の正確な理解と、安全かつ透明性の高いサービス設計を強化することを目的としている。同社は関東財務局登録の暗号資産交換業者として、アジア最大級のビットコインETFを保有するAvenir Groupのグループ企業に位置づけられる。
JCBAは2016年設立の業界団体で、2025年11月時点で正会員36社、準会員104社を含む計159社が参加する。暗号資産、NFT、ステーブルコインなどデジタル資産ビジネスの環境整備を目的とし、政策提言活動や業界標準化の議論を展開している。FINX JCryptoは今後、これまで培った知見や技術力を業界全体へ還元し、既存会員企業との連携を通じてWeb3領域の社会実装や利用拡大に貢献する方針だ。
国内では暗号資産の企業保有が拡大傾向にある。2025年4月時点で40社以上の上場企業が暗号資産を保有していると推定され、デジタルサービスやゲーム開発企業を中心に参入が続く。特にビットコイン保有では、メタプラネットが3万BTC超を保有し「アジア版マイクロストラテジー」と称されるなど、財務戦略としての活用事例が目立つ。こうした動きを背景に、業界団体を通じた知見共有と規制対応の重要性が高まっている。
ビットコイン株主優待の広がりと新たな提携
FINX JCryptoは同日、ワイハウとの業務提携も発表した。ワイハウは2025年7月に新経営体制となり、M&Aによる事業拡大とEBITDA10億円の実現を目指している。今回の提携では、ビットコインを活用した株主優待制度の導入に向けた詳細設計を進める。FINX JCryptoの暗号資産に関する豊富なノウハウを活用し、利便性の高い受領環境と保管態勢の安全性を確保する計画だ。
国内では2025年、暗号資産を株主優待として提供する企業が増加している。イクヨは9月末基準で500株以上保有の株主を対象に、抽選で最大10万円相当のビットコインを贈呈する制度を新設した。gumiも総額1,600万円相当のビットコインを抽選配布する制度を導入し、SBI VCトレードと提携している。コンヴァノやセレスなど複数社がXRPやイーサリアムなどの暗号資産優待を実施しており、新たな株主還元手法として定着しつつある。
ワイハウの代表取締役社長・亀田信吾氏は「米国をはじめとした世界の国々が暗号資産を順当な資産という位置づけをしつつある」とコメント。堅実な企業買収戦略を軸としながら、先端的構想も取り入れる方針を示した。同社はコロナ禍で中断した暗号資産取引所ソフトウェアのレンタル事業の経験も保有しており、今後幅広く事業展開する構えだ。
企業による暗号資産活用の展望
2025年に入り、上場企業によるビットコイン保有は世界的に加速している。Bitwiseの分析では、公開企業によるビットコイン保有量が第1四半期に16%増加し、合計約68万8,000BTC(評価額約570億ドル)に達した。フィデリティ・デジタル・アセットのデータでは、1,000BTC以上を保有する上場企業が第1四半期末の24社から35社に増加し、総額1,160億ドル超となった。
日本では、業界団体を通じた知見共有と規制対応の強化が進む一方、株主優待という形での暗号資産活用も広がりを見せる。FINX JCryptoのJCBA入会とワイハウとの提携は、こうした二つの潮流を象徴する動きといえる。今後、企業による暗号資産の戦略的活用がどのように進展するか、業界の注目が集まる。