マイクロストラテジー(MSTR)の株価プレミアムが、同社が長年依存してきたビットコイン(BTC)のパフォーマンスから初めて乖離した。
この変化は「ビットコイン代理株」としての地位が拡大する過程で起きており、最大の企業保有者として知られるマイクロストラテジーのビジネスモデルに新たな疑問が浮上している。
マイクロストラテジーのプレミアムがBTCと乖離
この乖離は、マイケル・セイラー氏が主導してきた金融モデルの持続可能性に影を落としている。さらに、デジタル資産財務(DAT)の新規参入が、ウォール街の「ビットコインゲートウェイ」としての独自性を侵食しつつあるとの見方もある。
マイクロストラテジーの強みは、株価が純資産価値(mNAV)に対してプレミアムで取引される局面で新株を発行し、その資金を原資にBTCを購入するという単純な仕組みにあった。この「金融錬金術」は2020年以降、セイラー戦略の基盤となってきた。
しかし、研究者のジョセフ・アユーブ氏は、DATの台頭がこの循環を弱めていると指摘する。
その歴史上初めて、ビットコインの価格と強く連動していたディスカウントが乖離している。これは市場で他のDATが立ち上がった結果だろう。このプレミアムが有意に戻ることはないとみている
— アユーブ氏|レポート
もし同氏の指摘が正しければ、マイクロストラテジーが株式発行を通じて新規ビットコイン購入を続ける能力は恒久的に損なわれる可能性がある。
DATは株式発行によって暗号資産を取得する仕組みを持ち、2020年以降、総純資産は100億ドル規模から1000億ドル超へと急拡大した。比較すると、ビットコインETFは約1500億ドル規模であり、DATはETFに似た株式エクスポージャーを提供する一方で、大幅なプレミアムを伴うケースも少なくない。
アユーブ氏はDATを「現代版クローズドエンドファンド」と表現。ETFとは異なり、株式償還機能を持たないため、評価は市場心理に依存している。かつてのグレースケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)のように、大幅なプレミアムから2022年の弱気相場で50%ディスカウントへと転落した事例を想起させる。
キャッスルアイランド・ベンチャーズのニック・カーター氏も、この動向を1920年代の投資信託ブームになぞらえ、Be Waterの分析を引用しつつ歴史的な類似性を指摘した。
セイラー氏のマイクロストラテジーにリスク増大
プレミアム縮小は、同社のビットコイン集中戦略に対する投資家の監視が強まる中で生じている。最近の戦略変更が株主を「ソフトウェア会社株主」ではなく「レバレッジ型ETF投資家」に近いリスクへ晒しているとの批判もある。
MSTRが恒常的にディスカウントで取引されれば、株主がNAVに近い償還を求め訴訟に発展する可能性がある。また、規制当局が1940年代のトノパー鉱業や2021年のGBTC事例を参照し、マイクロストラテジーを「投資会社」と再分類するリスクも指摘される。その場合、より厳格な規制や構造改革を迫られる可能性がある。
アユーブ氏は、株式発行で資金調達するビットコイン財務モデルには限界があると警告する。
人工的で未熟なDAT需要を吸収するのに十分な供給が整えば、巻き戻しが始まる。それは遠くない未来に起こり得る
— アユーブ氏
ビットコイン財務のデータによれば、マイクロストラテジーは約63万BTCを保有し、負債水準は依然として管理可能とされる。
ただし、株価プレミアムの乖離は、従来の好循環モデルが崩れつつある兆候とも受け取れる。もしそれが現実となれば、同社は弱気相場よりも、自らの独自優位性の侵食という形で最大の試練に直面することになりそうだ。
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