日本円に価値を連動するステーブルコイン「JPYC」が27日、規制準拠のステーブルコインとして国内で初めて発行される。受付は27日午後1時開始。JPYC株式会社が改正資金決済法に基づく資金移動業者として登録を完了したことを受けたもので、日本のWeb3およびフィンテック市場にとって歴史的な転換点となる。
JPYCの発行は、これまでUSDCやUSDTなど米ドル建てステーブルコインが支配的だった国内デジタル資産市場に、為替変動リスクのない安定した円建ての流動性を提供し、企業間の決済やDeFi(分散型金融)の応用を加速させる起爆剤となる。
Sponsored規制下の「プログラマブル・マネー」が始動
JPYCの発行は、単なるデジタル通貨の登場ではない。これは、2023年6月に施行された改正資金決済法に基づき、厳格な日本の金融規制下で1円=1JPYCの価値保証が図られた「規制準拠の円」である。裏付け資産は預貯金や国債などにより保全されており、ユーザーは同額の日本円に償還が可能である。
これにより、JPYCは、従来の暗号資産とは一線を画す「電子決済手段」として、国内市場における信頼性を確立した。特に、プログラマブル・マネーとしての特性を活かし、Web3プロジェクトの資金調達、企業間の迅速かつ低コストな決済、地域通貨としての活用など、金融機関を介さない革新的な利用が期待される。
Web3とTradFiの融合:JPYCが変える経済圏
JPYCの発行開始は、日本のWeb3市場の構造を根本的に変える可能性を秘めている。
まず、国内企業がDeFi運用やWeb3事業を行う際、米ドル建てのステーブルコイン(USDCなど)を使う必要がなくなり、為替リスクを排除したビジネス展開が可能になる。これは、国際競争力を持ちながらも、財務の安定性を重視する日本企業にとって極めて大きなメリットとなる。
また、既にJPYCは、建設現場でのインセンティブ付与や、クレジットカードの支払いにステーブルコインを利用可能にする提携(Nudgeカードなど)といった具体的な実用化事例を示している。この動きは、デジタル決済がWeb3のインフラと融合し、日常生活の金融サービスや企業のサプライチェーンにまで浸透する道筋を示している。JPYCは、既存のFinTechサービスと連携しながら、日本独自の「円建てデジタル経済圏」の確立を主導していくことになるだろう。