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日本版「鉄の女」高市早苗は暗号資産政策を推進できるか

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著者:
Shigeki Mori

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編集:
Shigeki Mori

06日 10月 2025年 16:18 JST
Trusted-確かな情報源
  • 高市氏の成長重視の姿勢は、日本における暗号通貨税制改革を間接的に支援する可能性がある。
  • 野党との協力は、暗号通貨の別課税の実施可能性を高めるかもしれない。
  • トランプ氏の訪問は、デジタル資産の規制と戦略における日米の連携に影響を与える可能性がある。
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自民党総裁選で高市早苗氏が4日、新総裁に選出され、15日にも召集される臨時国会で日本憲政史上初の女性首相に指名される見通しとなった。積極財政と保守的な国家観を重視する姿勢で知られる高市氏の経済政策の特徴は、デフレ脱却と経済成長を最優先課題に掲げ、財政出動を恐れない点にある。

この姿勢は、暗号資産業界にとってプラスにもマイナスにも作用する可能性がある。

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日本版「鉄の女」の誕生と高市氏の人物像

女性初の首相となる見込みの高市氏は、故・マーガレット・サッチャー英元首相を長年にわたり尊敬しており、サッチャー氏の代名詞である「鉄の女」になる野心の実現にこれまでになく近づいたと言える。

高市氏は1961年生まれ。神戸大学経営学部を卒業後、松下政経塾で研修を積み、その後、米連邦議会フェローとして米国議員の下で実務経験を積んだ異色の経歴を持つ。その後、民放テレビのキャスターを経て、1993年に衆議院議員に初当選し、現在10期目を務めている。

政治家としての経歴では、総務大臣を3度、経済安全保障担当大臣、内閣府特命担当大臣など要職を歴任してきた。特に安倍政権下では中核を担い、経済政策や安全保障分野で存在感を示してきた。サッチャー氏を敬愛する姿勢は一貫しており、総裁選出直後のあいさつでは「全員に馬車馬のように働いていただく。自身もワークライフバランスという言葉を捨てる」と述べ、その強固な意志を示した。

石破氏との対照的なスタンス

高市新総裁と石破前首相では、暗号資産・Web3に対する姿勢が異なる。石破氏は8月のWebX2025で登壇し、Web3やブロックチェーン技術の推進に前向きな姿勢を示したが、2024年12月の衆議院本会議で国民民主党の浅野哲議員から暗号資産の申告分離課税について質問を受けた際は慎重な姿勢を示しており、その心変わりに業界関係者を失望させていた。

石破氏はイベントでの発言こそ前向きだったものの、具体的な税制改正には消極的だった。これに対し、高市氏は暗号資産政策について明確な言及を避けているものの、その積極財政路線と減税志向は、間接的に暗号資産税制改正を後押しする可能性がある。

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野党連携が鍵となる税制改正の行方

高市氏の政権運営で最も注目すべきは、野党との連携方針だ。高市氏は首相就任後、維新や国民民主党との連携を強化する方針を示している。これは暗号資産業界にとって重要な意味を持つ。

国民民主党は以前から暗号資産の税制改正に積極的で、玉木雄一郎代表は石破首相の慎重姿勢に失望感を表明していた。維新の会も規制緩和や税制改革に前向きだ。高市氏がこれらの野党と連携を深めれば、減税政策の一環として暗号資産税制改正が実現する可能性が高まる。

金融庁は8月29日、令和8年度(2026年度)税制改正要望において、暗号資産取引の課税制度見直しを正式に要望した。具体的には、申告分離課税の導入(現行の最大55%の累進課税から株式等と同様に約20%の課税へ移行)と、損失繰越控除の導入(最大3年間の損失繰越を可能に)が柱となっている。

政府も「新しい資本主義グランドデザイン2025改訂版」で分離課税導入を含めた税制見直しの検討を明記しており、制度面での準備は進んでいる。高市政権が野党との連携を強化し、減税を政策の柱に据えれば、2026年の通常国会でこれらの税制改正が実現する可能性は高い。

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トランプ大統領来日と暗号資産政策への影響

高市新首相にとって最初の大きな外交課題が、10月下旬に予定されているトランプ米大統領の来日だ。トランプ氏は10月27日頃から3日間の日程で日本を訪れ、新首相と初の首脳会談を行う見通しとなっている。

トランプ氏は2025年1月の大統領就任以来、「アメリカを暗号資産の首都にする」と明言しており、ビットコイン戦略備蓄の構築や暗号資産諮問委員会の創設など、積極的な暗号資産推進政策を展開している。就任100日で暗号資産関連の大統領令を相次いで発令し、規制緩和を進めてきた。

積極財政派という共通点を持つ高市氏とトランプ氏の会談では、経済政策における協調が期待される。しかし、保守派として伝統的価値観を重視する高市氏が、トランプ氏の革新的な暗号資産政策にどこまで歩調を合わせるかは不透明だ。トランプ氏からビットコイン準備金構想や暗号資産規制緩和について言及があった場合、高市氏がどのような反応を示すかは、日本の暗号資産業界の今後を占う重要な試金石となるだろう。

日米同盟の強化を重視する高市氏にとって、トランプ氏との信頼関係構築は最優先課題だ。もしトランプ氏が暗号資産政策での協力を求めた場合、高市氏は日米関係を重視する立場から前向きな姿勢を示す可能性もある。この会談が日本の暗号資産政策に新たな動きをもたらすかもしれない。

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不透明要因と閣僚人事の重要性

一方で、不透明な要因も多い。高市氏自身が暗号資産政策について具体的な言及をしていないことが最大の懸念だ。その関心は主に伝統的な産業政策や安全保障に向いている可能性が高い。

加藤勝信財務・金融大臣の留任も重要なポイントだ。加藤氏は石破政権で財務・金融大臣を務めたが、暗号資産政策について目立った発言は少なかった。高市政権でも留任すれば政策の連続性は保たれるが、劇的な変化は期待しにくい。また、平将明デジタル大臣も現在のところ、高市総裁の元における暗号資産やWeb3政策について明確な方針を示していない。

潜在的なマイナス影響

高市氏の積極財政路線は、暗号資産業界にマイナスの影響をもたらす可能性もある。

積極的な財政出動がインフレを加速させれば、日銀は金融引き締めを強化せざるを得ない。金利上昇はリスク資産である暗号資産にとって逆風となる。また、積極財政を続ければ財政赤字が拡大し、いずれ増税圧力が高まる。その際、暗号資産業界にも課税強化の風が吹く可能性も否定できない。

保守的な政治姿勢を持つ高市氏は、暗号資産のマネーロンダリングテロ資金供与への利用に対して厳しい姿勢を取る可能性がある。経済安全保障を重視する同氏の立場からすれば、規制強化に傾く可能性は十分にある。

さらに、高市氏の関心は半導体や伝統的製造業など、より確立された産業に向かう可能性が高く、暗号資産やWeb3は政策の優先順位で後回しにされる懸念がある。アメリカやヨーロッパが暗号資産政策を積極的に進める中、日本が取り残されるリスクも存在する。

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