金融庁はフィンテック企業JPYC(東京・代表取締役:岡部典孝)が発行する日本円建てステーブルコイン「JPYC」を、国内で初めて承認する見通しだ。日本経済新聞が17日、報じた。
8月中に同社を資金移動業者として登録し、その数週間後にJPYCの販売が始まる予定。これにより、日本におけるステーブルコイン活用の新たな一歩が記されることになる。岡部氏は7月、IVCサミット2025に登壇し、「JPYCの新しいバージョンのリリースを準備している」と語っていた。
ステーブルコインは、暗号資産と同様にブロックチェーン技術を基盤としながら、法定通貨と価値を連動させることで価格の安定性を確保する。JPYCは「1JPYC=1円」に設計され、発行残高は預金や国債といった流動性の高い資産によって裏付けられる仕組みを採用する。ユーザーは購入申し込み後、代金の振り込みに応じてデジタルウォレットにJPYCが送金される流れとなる。
国際的にはドル建てのステーブルコインが主流で、時価総額は2850億ドル(約42兆円)を超える規模に拡大している。金融庁は今回の承認を通じて、日本でも円建てのステーブルコインを普及させ、国際送金やキャッシュレス決済の手段として活用を促す考えだ。

決済インフラの新たな選択肢に
JPYCの発行は、国内の金融・決済市場に多面的な影響を与える可能性がある。個人にとっては、日常的な決済手段や送金の利便性向上につながるほか、法人にとっても国際取引における為替コストの低減が期待される。特に円建てという点は、ドル依存度の高い既存市場に対して独自性を持ち、国内外の投資家や事業者の利用を後押しする可能性がある。
一方で、資金洗浄や不正利用への懸念は根強い。金融庁は既存の資金決済法や関連規制の下でモニタリング体制を強化し、健全な市場形成を図る方針だ。JPYC側も、取引履歴の追跡可能性や利用者確認の強化など、規制順守を重視した運営を進めるとしている。
海外との競争と今後の展望
国内市場ではすでに、SBIホールディングス傘下のSBI VCトレードが米ドル建てステーブルコイン「USDC」を取り扱っているが、円建ての承認はJPYCが初めてとなる。日本発の取り組みがどこまで浸透するかは未知数だが、海外市場との競争が避けられないのも事実だ。
今後は、電子商取引やデジタル証券、さらには中央銀行デジタル通貨(CBDC)との関係性も注目点となる。円建てステーブルコインが社会に浸透すれば、日本の決済インフラにおけるデジタル化の加速要因となり得る。金融庁の今回の判断は、デジタル通貨時代における日本の立ち位置を左右する試金石となりそうだ。
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