カニエ・ウェスト(イェ)が新たにソラナ上で立ち上げたYZYミームコインは、音楽界の影響力者による新たな文化的出来事として注目を集めた。しかし同時に、セレブリティ発のトークンがいかにして論争の火種となり得るかを示す事例ともなった。
オンチェーンデータからは、YZYに関わるインサイダーと、過去にLIBRAやTRUMPミームコインを取引した投資家との不自然なつながりが浮かび上がった。調査では、インサイダーによるポンプ・アンド・ダンプの仕組みの背後に「マイキー・シェルトン」という人物がいる可能性も指摘されている。
カニエのYZYで数百万ドルを失った投資家
YZYトークンは2025年8月21日に公開された。公開から40分以内に時価総額は30億ドルに達したが、その後はほぼ3分の1まで下落した。
分析企業Nansenによれば、ローンチ日に62,465のウォレットがYZYを取引し、結果は極端に分かれた。
- 利益:上位500ウォレットが合計5040万ドルの利益を獲得。
- 損失:総額2140万ドルの損失が発生。
- 最大利益:1ウォレットあたり最大300万ドル。
- 最大損失:1ウォレットあたり最大130万ドル。
- 流動性プール:手数料収入は1000万ドル。
結果として、わずかなウォレットが巨額の利益を得る一方で、多くの個人投資家は損失を被った。

マイキー・シェルトンの不透明な関与
ローンチ後に注目されたのは、今年初めからイェの周囲に現れたマイキー・シェルトンである。
2月にイェが公表した会話では、彼がシェルトンに「あなたがブランドだ。何であれ成功する。信頼できる人が重要だ」と語っていた。
YZYの公開後、シェルトンのインスタグラム・ストーリーが拡散した。黒い画面に「最高の日」と表示され、その下にチャットメッセージが添付されていた。
最初の10分で16万ドルを稼いだ。まだ300ドル未満しか売っていない。
この発言から、シェルトンの周囲がインサイダーアクセスを得て、公開直後に数十万ドル規模の利益を手にしたことが明らかとなった。
単なる自慢なのか、あるいは実際の認識を示したのかは不明だが、この内容はインサイダー取引の疑惑をさらに強める結果となった。
一方で、シェルトンのオンライン活動は限定的だ。Twitterの最後の投稿は2023年8月に遡り、現在はプライベート設定のインスタグラムでのみ活動しているようだ。
注目されるのは、彼のインスタグラムプロフィールにベイラー大学とスタンフォード大学の経歴が記載されている点である。スタンフォード出身者がポンプ・アンド・ダンプに関与したのかとの憶測も広がっている。
オンチェーン分析が示すインサイダー取引の痕跡
複数のアナリストはウォレットの挙動を追跡し、疑惑を裏付ける結果を示した。Dethectiveによると、YZYとLIBRAで合計2300万ドルを引き出した「スナイパー」ウォレットが2つ確認された。
これらのウォレットは公開前から資金を準備し、流動性プールを通じて一気に投入された。データによれば、YZYとLIBRAのみを対象としており、偶然ではなく内部情報に基づく行動と見られている。

Bubblemapsの分析では、YZYの最初の購入者がナシームであることも判明した。同人物は今年初めにTRUMPミームコインで1億ドル以上を得たトレーダーでもある。
分析結果では、TRUMP、LIBRA、YZYの間にウォレットのリンクが確認され、一貫して早期アクセスを得ていることが示されている。最初のYZY購入は25万ドルで、すでに80万ドルの利益を確定させ、なお60万ドルを保持している。
なぜ同じウォレットがセレブリティ・ミームコインの公開時に繰り返し先頭に立つのか。巧妙なスナイピングなのか、それとも特権的アクセスなのか、大きな疑問を残している。
暗号資産コミュニティの中には、カニエのトークン公開を事前に知っていたと主張する声もある。しかし倫理的理由から参加を控えた関係者もいた。
ナンセンのデータもこれを裏付ける。10ドル以上の利益を得たウォレットは9413件に過ぎず、損失が10ドルを超えたウォレットは1万6000件近くに達していた。
YZYが示すセレブコインの課題
今回のYZY騒動は、2025年のセレブトークンに共通するパターンを改めて浮き彫りにした。
- 事前準備されたインサイダー: 公開前からウォレットが用意され、一斉に資金を投入する。
- 利益誇示: マイキー・シェルトンのように、関係者が利益を公開し、疑念を増幅させる。
- 繰り返し登場するウォレット: TRUMP、LIBRA、YZYに同じアドレスが登場し、組織的な関与の疑いを強める。
- 小口投資家の損失: 数万の投資家が損失を被り、早期参入者の出口流動性となる。
TRUMPの初日出来高295億ドルに比べれば、YZYの72億4000万ドルは規模が小さい。しかし、構図は変わらない。インサイダーが勝ち、遅れて入った投資家が損をする。不透明さが残るのが現実だ。
結論
YZYは本来、イェのWeb3参入を象徴するはずだった。しかし実際には、セレブトークンがインサイダーの舞台となっている現実を露わにした。
シェルトンのインスタ投稿、オンチェーンでの取引分析、バブルマップによるウォレットの関連性、そしてナンセンの統計はすべて同じ結論を示している。ローンチの恩恵を受けたのは、一部の限られた投資家だった。
イェ本人が主導したのか、それとも周囲に利用されたのかは不明だ。ただ一つ確かなのは、YZYがまた一つのセレブ暗号資産の警告事例として加わり、小口投資家が代償を払う結果となったことである。
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