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海外の暗号資産取引所を利用するのは違法か?

22 mins

ヘッドライン

  • 2025年2月、BybitやKuCoinなどの海外取引所アプリが日本のApp Storeから削除。金融庁の規制強化で利用制限が拡大しています
  • 海外取引所の利用自体は違法ではないが、送金制限やアクセス制限の可能性あり。トラベルルール適用で取引の自由度が低下しています
  • 2027年から国税庁が海外の税務当局と情報共有開始。過去5年分の取引が遡及課税の対象となる可能性があります

近年、日本政府は海外暗号資産取引所への規制を強化しており、2025年2月にはBybitやKuCoinなどのアプリがApp Store(iPhoneなど)から削除されました。今後、アプリの利用制限やアクセス遮断など、さらなる規制が導入される可能性があります。加えて、2027年から国税庁は海外の税務当局と暗号資産取引情報を共有する計画を進めており、脱税対策の一環として過去の取引が遡及して課税対象となる可能性も指摘されています

本稿では、海外の暗号資産取引所の利用が日本国内で違法にあたるのか、その法的根拠や規制の現状について解説します。

海外暗号資産取引所アプリの一部がダウンロード不可に

海外の大手暗号資産取引所アプリが、日本のApp Storeでダウンロードできなくなっていることが25年2月6日に判明しました。6日時点で、ダウンロードが制限されている海外の暗号資産取引所アプリは以下の5つです。

  • Bybit
  • Bitget
  • MEXC
  • KuCoin
  • LBank

日本国内でこれらのアプリを新規にダウンロードしようとしても、App Storeの検索結果に表示されず、新規アカウントの作成ができない状況となっています。7日にはアップルのみならずグーグルにもアプリのダウンロードを停止するよう要請していたことが明らかになりました。本稿執筆時点でグーグルのプレイストアでは対応措置が行われていません。

金融庁の警告と規制措置

これらの取引所は、過去に「日本国内で無登録のまま暗号資産交換業を行っている」として、金融庁から警告を受けていました。金融庁は、海外取引所が日本での事業者登録を行わずに日本人向けに暗号資産取引サービスを提供することは、資金決済法に違反すると警告しており、今回の措置はその一環と考えられます。

ただし、日本以外のApple IDを使用すれば、日本国内にいても引き続きダウンロードが可能なため、完全な規制には至っていないのが現状です。一部のユーザーはウォレットを活用すれば問題ないと考えていますが、安全とは言い切れません。すでにBlockchain.comが日本のIPアドレスをブロックしており、国内からのアクセスが不可能になっています。これが他のウォレットサービスにも波及すれば、取引所だけでなく資産管理手段まで制限される恐れがあります。

関連記事:Bybitほか、海外暗号資産取引所アプリが日本のApp Storeから削除か

海外の暗号資産取引所を使用するのは違法なのか?

バイナンスP2Pカバー

海外の暗号資産取引所を利用することは、日本国内で違法なのでしょうか。結論として、日本人が海外の暗号資産取引所を利用すること自体は違法ではありません。現行の日本法において、暗号資産取引所の運営には金融庁の登録が義務付けられていますが、利用者に対する規制は設けられていません。

法的根拠

日本の「資金決済に関する法律」(平成二十一年法律第五十九号 第六十三条の二)は、暗号資産交換業者が事業を行うためには内閣総理大臣の登録を受けることを求めています。

暗号資産交換業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。

平成二十一年法律第五十九号 第六十三条の二

同法律は主に「暗号資産交換業」の提供者側に対するものであり、利用者に対する規制は含まれていません。このため、無登録の仮想通貨取引所の運営は違法ですが、登録されていない取引所のサービスを個人が利用することには法的な制約はないのです。

海外取引所の登録状況と誤解について

多くの海外暗号資産取引所は、日本の金融庁に登録されていないため、日本国内での利用に不安を抱く方も少なくありません。また、一部の取引所は過去に金融庁からの指導により、日本国内のユーザーがアクセスできないよう制限がかけられたケースもあります。こうした事例から、「海外取引所=違法」という誤解が広がりやすい状況がありますが、法律上、登録されていない取引所を日本人が個人利用すること自体は違法ではありません。

セキュリティへの注意点

とはいえ、金融庁の登録を受けていない海外取引所には、セキュリティ面でのリスクが潜んでいる可能性があります。これには、ハッキング被害や、詐欺的な仮想通貨の取り扱いリスクが含まれます。そのため、海外取引所を利用する際には、取引所の信頼性やセキュリティ対策を十分に確認することが重要です。

一方で国内の暗号資産取引所を利用することで、リスクを大幅に軽減できます。日本の取引所は法律に基づき、顧客資産を分別管理しており、万が一取引所がハッキングされたり破産したりしても、資産が保護される仕組みが整っています。一方、海外の取引所では、こうした分別管理の規定が設けられていない場合があり、ハッキングや破産が発生した際に資産の安全が確保される保証はありません。そのため、資産をより安全に管理するには、国内取引所を選択する方が望ましいと言えるでしょう。

金融庁も、無登録業者との取引は高リスクであると注意喚起しています。以上の点を踏まえ、海外の暗号資産取引所を利用する際には、十分な情報収集と慎重な判断が求められます。

関連記事:暗号資産規制のメリットとデメリット

海外の暗号資産取引所を利用する際にはトラベルルールの理解が必須

画像:金融庁

「トラベルルール」は、暗号資産の送金に関する規則であり、取引所が送金者と受取人の詳細情報を相手の取引所へ通知することを義務付けるルールです。

日本では、犯罪収益の防止を目的として2023年6月1日に施行された「犯収法」の改正によって導入されました。特に、国内取引所にはテロ資金供与対策の一環として対応が求められており、利用者への影響も大きいため、このルールの理解が不可欠です。

1. 送金時の詳細情報通知が必須

トラベルルールの適用により、国内取引所から海外取引所へ暗号資産を送金する際には、送金者と受取人の詳細情報の通知が義務付けられています

通知が必要な情報には以下が含まれます。

  • 送金者名
  • 受取人名
  • 顧客識別番号
  • ブロックチェーンアドレス

なお、各取引所によって要求される情報が異なる場合があるため、事前に確認することが重要です。

2. 異なるソリューションの取引所間では送金不可

国内取引所では、「TRUST」や「Sygna」などの異なるトラベルルール対応ソリューションが採用されています。しかし、異なるソリューションを導入している取引所同士では、暗号資産の送金ができません。特に、海外取引所では日本の取引所とは異なるソリューションを使用していることが多いため、送金前に取引所間の互換性を確認する必要があります

3. 一部の暗号資産が送金不可

トラベルルールの適用により、国内取引所で対応している暗号資産であっても送金が制限される場合があります

例えば、TRUST対応の取引所ではビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)の送金が可能ですが、その他の暗号資産には制限がかかることがあります。そのため、海外の取引所へ送金する際には、事前に対応暗号資産の種類を確認することが重要です。

今後は海外の暗号資産取引所は使えなくなる?

暗号カード対銀行

結論から言えば、明確な規制のフレームワークが策定されるにつれて無登録の海外暗号資産取引所の営業の余地は無くなる可能性があります。

弁護士の小峰孝史氏は、暗号資産の分離課税が一歩前進している証拠とも考えられますが、誰とでもダイレクトに繋がれるという暗号資産の本来の強みが失われてしまえば、たとえ分離課税が実現しても、その意義が半減してしまうのではないかとも主張してます。実際に、市場では日本国憲法第29条第1項に基づき、国民の財産を持ち自由に使う権利が保障されていることを指摘し、同件を非難する意見も見られました。加えて小峰氏は、これまでも海外の大手暗号資産取引所が日本での登録を目指すも、手続きや規制の負担が大きすぎるため、自社の強みを損なうリスクを考慮し、登録を断念したと関係筋からの情報を共有しました。日本の規制下の営業は煩雑な手続きを行うことが必要であるとして知られています。

さらに、暗号資産関連の税務に精通した村上ゆういち税理士は以下のように主張しています:

村上氏は、政府が分離課税の検討条件として「税務当局への報告の整備」を前提とすると明言している点に着目しています。そのため、海外の暗号資産取引所は税務当局への情報提供ができないと判断され、アプリ削除が要請された可能性があると考えています。これらの透明性の欠如は他の情報筋でも指摘されています。

日本の税務署と海外の取引所はCRS(共通報告基準)を通じて情報共有する予定ですが、同制度の開始は2027年とまだ先であり、CRSが分離課税の要件を満たすかどうかは不透明だと指摘します。さらに、日本の税務署が海外取引所へ情報提供を依頼することは既に行われているものの、それだけでは十分ではなく、政府はより厳格な対応を求めている可能性があると推測しています。

村上氏は、分離課税の実施には取引所が投資家の損益を把握し、税務当局へ報告できることが必須条件と考えています。これにより、脱税を防ぐ仕組みが整うと指摘しています。

また、次の規制対象は分散型取引所(DEX)になる可能性があるとも述べています。DEXは中央管理者が不在で税務当局への報告義務がないため、金融当局が取引所からウォレットへの送金を制限する措置を講じる可能性があると警鐘を鳴らしています。

暗号資産インフルエンサーのまぷ氏は2月の金融庁の規制を踏まえ今後のシナリオを以下のように予想しています:

1. アプリの利用制限

  • 現状:既にダウンロード済みのアプリは引き続き利用可能だが、今後のアップデートやサポートが制限される可能性がある。
  • 対策:アプリを最新の状態に維持し、公式サイトや信頼できる情報源から最新情報を確認することが重要。

2. 取引所へのアクセス制限

  • 現状:現在はウェブ版や他のプラットフォームからアクセス可能だが、今後規制が強化される可能性がある。
  • 対策:公式ウェブサイトや代替のアクセス方法を事前に確認し、必要に応じて対応策を準備しておく。

3. 資産の安全性確保

  • 現状:取引所の運営状況が不透明であるため、資産の安全性にリスクが生じる可能性がある。
  • 対策:必要に応じて、信頼できるウォレットや他の取引所へ資産を移動することを検討する。

このほかにも顧客確認(KYC)がパスポートを使用する場合取引所側が口座閉じる可能性があるとの指摘など、さらなる強固な規制が制定される可能性があると指摘されています。

関連記事:日本FSA、ビットコインETF解禁検討=税制優遇も

政府による海外暗号資産取引所の規制進展中

国税庁は2027年から暗号資産の取引情報を海外の税務当局と共有する方針を固めました。これは、海外の取引所を利用した脱税や申告漏れへの対策とみられています。政府は2024年度の税制改正を通じて対応体制を整備しており、国内の取引所に顧客情報の報告を義務付け、54カ国・地域との情報交換を開始する予定です。

国税庁は暗号資産取引に関する税務調査を強化しており、2023年度には126億円の申告漏れ所得を指摘しました。1件あたりの追徴税額は平均650万円を超えています。今後、情報共有により発覚した申告漏れは最大5年遡及して課税対象となるため、2027年の運用開始時には、2022年分までの取引が追徴課税の対象となる可能性があります。

さらに、金融庁は、外国に本社を置く暗号資産交換業者の破綻時に、国内資産の海外流出を防ぐため、資金決済法の改正を検討しています。新たに「保有命令」の規定を設け、顧客資産の海外持ち出しを禁止する見込みです。これまで保有命令は金融商品取引業者のみが対象でしたが、改正後は全ての暗号資産交換業者に適用されます。背景には、2022年のFTX破綻があり、当時、日本法人は登録業者だったため保有命令を発出できましたが、未登録業者には適用されず、資産流出のリスクがありました。

関連記事:暗号資産の税金には抜け道がある?正しい節税方法と注意点

まとめ:海外の暗号資産取引所での資産運用には細心の注意を!

取引所の使用自体は違法ではないものの、日本の金融庁は未登録の海外暗号資産取引所への規制を強化しており、2025年2月にはBybitやKuCoinなどのアプリがApp Storeから削除されました。今後、さらなるアクセス制限が予想されます。

また、政府は2027年から暗号資産取引情報を海外の税務当局と共有し、脱税対策を強化する方針です。これにより、過去5年分の取引が遡及して課税対象となる可能性があります。

さらに、資金決済法の改正により、未登録の海外取引所が日本の顧客資産を海外へ移動させることを制限する動きも進んでいます。今後、海外取引所の利用はより厳しい規制の対象となると考えられます。

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Shota Oba
国際関係の大学在籍中に国内ブロックチェーンメディアでのインターンを経て、2つの海外暗号資産取引所にてインターントレーニング生として従事。現在は、ジャーナリストとしてテクニカル、ファンダメンタル分析を問わずに日本暗号資産市場を中心に分析を行う。暗号資産取引は2021年より行っており、経済・社会情勢にも興味を持つ。
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