2025年、DOGE、SHIB、PEPE、WIF、BONK、FLOKIといった主要ミームコインは、年間チャートで軒並み2桁の下落となった。暗号資産市場全体はビットコイン現物ETFの資金流入やステーブルコイン需要の拡大に支えられ、時価総額3兆ドル規模を維持した一方、ミームコインだけが大幅な資金流出に直面した構図が浮かび上がる。
2026年、市場が「投機」から「金融インフラ」へと軸足を移す中で、ミームコインは淘汰か再定義かの岐路に立たされている。
2025年は、ミームコイン市場にとって「冬の年」となった。
2024年にかけてドージコイン(DOGE)や柴犬コイン(SHIB)、PEPEなどがビットコイン以上の上昇率を記録したのとは対照的に、2025年は年央以降にかけて主要ミームコインがそろって大きく値を崩した。
11月にはミームコイン全体の時価総額が年初の約1,167億ドルから約394億ドルまで縮小し、2025年安値圏に沈んだとするリポートもある。下落率はおよそ66%に達し、「ミームコイン冬」の象徴的な局面となった。
一方で、同じ2025年の暗号資産市場では、ステーブルコインやビットコイン現物ETFといった「インフラ的資産」に資金が流入し、ミームコインとのコントラストが鮮明になっている。
1. 「ミームコイン冬」2025年の全体像
Sponsoredセクター時価総額:ピークから6割超の縮小
データ系サイトCoinLawによると、2025年初め時点でミームコイン市場は暗号資産全体の約5〜7%を占め、時価総額はおよそ800億〜900億ドル規模まで拡大していた。2025年1月5日には、ミームコインセクターの時価総額が約1,167億ドルに達したとされる。
しかし、11月20日の急落局面では、ミームコインの時価総額は約394億ドルまで縮小。年初来のピークから約66%減少し、セクターとして2025年安値圏に沈んだ。
- ミームコイン時価総額
- 2025年1月上旬:約1,167億ドル
- 2025年11月20日前後:約394億ドル(約66%縮小)
リスク選好の逆回転:ビットコイン<ミームの「レバレッジ」が裏目に
2024年後半〜2025年前半、ミームコインは「ビットコインのレバレッジ・ベット」として機能していた。ビットコインが上昇している局面では、PEPEやBONK、WIFなどがそれ以上の上昇率を記録するケースも多かった。
しかし、2025年11月の「暗号資産市場クラッシュ」局面では、この構図が逆回転する。分析サイトBlockedenは、11月の下げ局面について「ビットコインが下落すると、もっとも投機色の強いトークンが最も大きく売られた」と指摘。ミームコインがリテール投資家の投げ売りの中心となったと分析している。
2. 主要ミームコイン6銘柄の2025年パフォーマンス
ここでは、ドージコイン(DOGE)、柴犬コイン(SHIB)、PEPE、dogwifhat(WIF)、BONK、FLOKIの「2025年中の最大ドローダウン(高値からの下落幅)」と、2025年11月前後の時価総額の目安を整理する。
※ドローダウンは各種レポート・ニュースが示す「ピーク比下落率」やYTD(年初来)下落率をもとにした概算レンジであり、厳密な終値ベースの数字とは異なる可能性がある。
DOGE/SHIB/PEPE/WIF/BONK/FLOKI の2025年ドローダウンまとめ
| 通 貨 | 時価総額の目安 (25年11月時点) | 25年中の最大 ドローダウン(概算) | コメント |
|---|---|---|---|
| DOGE | 約150億ドル前後 | 約−50% | 2025年内に0.18ドル近辺まで上昇後、0.14〜0.15ドル台まで反落した局面が指摘され、「2025年に50%クラッシュ」と表現する分析もある。 |
| SHIB | 約80億ドル前後 | 約−50〜60% | 複数の市場レポートで「年初来で約58〜60%下落」とされるなど、高値から半値以下まで沈んだとされる。 |
| PEPE | 約30億ドル前後 | 約−80% | 過去の高値0.000028ドルから、0.000004ドル台へと推移した局面が報告されており、ピーク比約80%の下落と分析されている。 |
| WIF | 約16億ドル前後 | 約−90% | 一部アナリストは「dogwifhatはピークから約92%下落した」と指摘。2025年春以降も大きなディスカウント水準で推移した。 |
| BONK | 約12億ドル前後 | 約−70〜80% | BONKは2024年の上昇分の大半を2025年第1四半期に失い、ATH比で約78%下落していた局面が報告されている。 |
| FLOKI | 約12億ドル前後 | 約−75〜80% | FLOKIは2024年の高値から2025年時点で約75〜80%下落しているとされ、2025年8月時点でも年初来で約40%安との分析がある。 |
いずれの銘柄も「年初から急騰→春〜初夏のピーク→秋〜冬の大幅調整」という同じパターンにはまり、ピークからの最大ドローダウンは70〜90%に達するケースも少なくない。
3. なぜ2025年は「ミームコイン冬」になったのか
3-1 投機疲れと「政治ミーム」スキャンダル
2024年は、DOGE・SHIB・PEPEなどがトリプル・クアドラプルバガー(数倍)を演じ、ミームコインが暗号資産市場のラリーを主導した年だった。
しかし2025年に入ると、この流れが一転する。MarketWatchは、2024年のラリーを牽引したミームコインが2025年初頭にかけて時価総額ベースで約59%も縮小したと指摘。アルゼンチン大統領絡みの「Libra」や、トランプ前大統領関連トークンなど、政治色の強いミームコインで90%超の暴落・インサイダー疑惑が相次ぎ、リテール投資家の信頼を大きく損ねたと報じている。
「簡単に何十倍も狙える」というミームコインの夢物語が、政治・有名人を巻き込むスキャンダルとともに剝がれ落ちた格好だ。
Sponsored Sponsored3-2 供給過多:1日数万トークンが量産される世界
2025年のミームコイン市場を象徴する数字のひとつが、「新規トークンの発行ペース」だ。
- 2025年前半
- 月間80万トークン超のミームコインが新規発行
- 一部のローンチプラットフォームでは、1日あたり3万〜10万トークン規模の新規ローンチが発生
- Solana系のプラットフォームでは、2024年以降の累計で600万トークン超がミームコインとしてローンチされたとの集計もある
生き残るのはごく一握りで、上場にこぎつけるミームコインは1%未満、60日後まで残存するプロジェクトも1桁%台とされる。CoinLaw
こうした「過剰供給」が、DOGEやSHIBといったレガシー銘柄への資金流入を希薄化し、セクター全体のボラティリティを高める一因になった。
3-3 構造的な脆弱性:クジラ集中とブリッジリスク
同じくCoinLawは、ミームコイン市場の「構造的な弱点」として次の点を挙げている。
- 上位100ウォレットが総供給量の70%以上を保有するプロジェクトが多数
- クロスチェーンブリッジを経由したハッキング・損失が2025年9月時点で1億9000万ドル超
- 新規ミームコインのうち、正式なスマートコントラクト監査を受けたのは15%未満
- 低流動性プールでは、ボットによる価格操作が35%超のケースで確認
こうした構造的なリスクは、相場が上昇している局面では見過ごされがちだが、11月のような急落局面では「売りが売りを呼ぶ」形で価格崩落を加速させた。
3-4 マクロ・規制:ミームから「コレクティブル」へ
2025年には、米SECがミームコインを有価証券ではなく「コレクティブル(収集品)」と位置づけたとする報告もある。表面的には規制リスクの後退に見えるが、同時に機関投資家の本格的なエクスポージャー対象になりにくいという側面もある。
さらに、2025年の米金融政策はタカ派寄りで、金利高止まりとともにリスク資産全体への圧力が強まった。ミームコインは暗号資産の中でも最もボラティリティが高く、リスクオフ局面では真っ先に売られる「周辺資産」として扱われやすい。
4. 資金の行き先:ステーブルコインと「インフラ銘柄」
ステーブルコインは4兆ドル超の送金インフラに
2025年の暗号資産市場のもう1つの特徴は、「ステーブルコインのインフラ化」だ。TRM Labsの最新レポートによれば、、2025年のステーブルコイン送金ボリュームは4兆ドルを超え、過去最高水準に達した。
Sponsored注目すべきは、その内訳だ。
- ステーブルコインの利用目的は投機よりも「決済・送金・保全」が増加
- 2025年の不正利用(マネロン・制裁回避など)は前年比約60%減少
- EUのMiCAやアジア・中東の規制整備により、「規制された発行体」が主流化
ステーブルコインは、かつての「ハイリスクな流動性ツール」から、むしろ「トレーサブルで規制準拠な決済レール」へと性格を変えつつある。
ミームコインの取引シェアは低下
CoinGecko の「Crypto Industry Report Q1 2025」によれば、2025 年第1四半期のスポット取引量に占めるミームコインの割合は 約 3〜4% と、主要カテゴリの中で最も小さい構成比にとどまった。ビットコイン(約46%)、ステーブルコイン(約22%)と比べると存在感は限定的で、市場の流動性がミームコインから離れている実態が示されている。
2024年のようにミームコインが「マーケット全体のムードを決める主役」だった時期から、2025年にはステーブルコインやビットコインETF、主要L1/L2といったインフラ銘柄が中心に据わる構図へと変化しつつある。
5. 2026年のミームコイン市場:3つのシナリオ
2025年が「冬の年」だったとしても、ミームコイン市場そのものが消えるわけではない。むしろ、淘汰後の2026年は「二極化」と「再定義」が進む可能性がある。
シナリオ①:二極化するミームコイン ― OGと“ユーティリティ付き”の生き残り
すでに2025年の段階で、従来型ミームコイン(DOGE・SHIB)から、新世代ミーム(レイヤー2を兼ねるLILPEPEや、決済特化のRemittixなど)へと投資家の関心が移りつつあるとの指摘も多い。
2026年にかけて想定されるのは、次のような二極化だ。
- コミュニティとブランド力で生き残る「OGミーム」
- DOGE/SHIBなど、依然として高い知名度と流動性を持つ銘柄
- ETF・ETP上場や決済対応などで、ある種の「デジタルカルチャー資産」として定着
- インフラ機能や実需を取り込む「ユーティリティ型ミーム」
- レイヤー2や決済、ゲーム/RWAとの接続など、ミーム+αの機能を持つプロジェクト
- 2026年に向けて「ミームだが、単なるギャンブルではない」という訴求が鍵
2025年の冬を生き延びたプロジェクトは、単なる「ネタ」ではなく、コミュニティ運営やプロダクト開発を伴う「カルチャープロジェクト」として再定義される可能性が高い。
Sponsored Sponsoredシナリオ②:マクロ悪化・規制強化で「第二の冬」
一方で、2025年11月のクラッシュは、あくまで「第一幕」に過ぎないという見方もある。
- ビットコインの流動性悪化・金利高止まりが続く
- ミームコインを巡る詐欺・ラグプルが再燃し、規制当局による個別摘発が強化
- クロスチェーンブリッジやローンチプラットフォームに対する規制が本格化
こうした状況では、ミームコインセクター全体の時価総額がさらに縮小し、2024年以前の「ニッチ市場」へと後退するリスクもある。
シナリオ③:ビットコインの再上昇に遅行する「第二波ミームシーズン」
BeInCrypto の市場分析では、2025年11月の急落後、ビットコインの RSI が過去の強気転換局面と同程度まで低下し、「売られすぎサイクルの最終段階」に近いとの指摘があった。過去にも、2019年・2020年・2022年といった RSI が極端に沈んだ局面から短期的反発や持続的な上昇トレンドが続いた例が多く、今回も同様に反発余地が意識されている。
こうした BTC の底値圏入りは、通常ミームコインに対して遅行的な反発を誘発する傾向があり、2026年に向けた市場循環を読む上で重要なシグナルとなる。
また、他の分析では「ビットコインが底入れした後、ミームコインがディスカウント水準(ピーク比50〜70%下落)で仕込み場となり、その後に第2波のミームシーズンが来る」という従来サイクルの再現を予想するレポートもある。
このシナリオでは、2026年前半〜半ばにかけて、
- ビットコインが11月安値から回復
- その後、選別されたミームコイン(特にコミュニティが強く流動性のある銘柄)がレバレッジベットとして再評価
という「遅行ラリー」が再び訪れる可能性がある。
6. 投資家にとっての示唆:ミームコインは何を映す鏡か
2025年のデータを整理すると、ミームコインは依然として「リテール投資家のリスク選好」を最も敏感に映し出す市場であることが分かる。
- セクター全体としてはピークから約6割縮小
- 個別銘柄レベルでは、ピーク比70〜90%のドローダウンも珍しくない
- その一方で、短期的には数十%〜数百%の反発も起こる、極端なボラティリティの世界
2025年にステーブルコインやビットコインETF、主要L1/L2に資金がシフトしたという事実は、市場が「ギャンブル」から「インフラ」へ重心を移しつつあることを示している。
2026年のミームコイン市場をどう見るかは、
- ビットコイン・イーサリアムといったコア資産のサイクル
- 規制当局のスタンス
- ステーブルコインやRWA、AIトークンなど他セクターとの相対的な魅力度
によって大きく変わるだろう。
少なくとも2025年の教訓は、「ミームコインは相場サイクルの恩恵を受けやすい一方で、ピークからのドローダウンも最も深い」という、ごくシンプルだが忘れられがちなリスクの再確認だったと言える。