ChatGPTを開発した米OpenAIが、従業員向けの株式売却を通じて企業評価額50兆円を目指していることが報じられた。こうした動きがある一方、中国政府は、暗号資産と引き換えに生体データを収集する外国企業に警戒感を強めている。特にWorldcoin(WLD)を暗に批判する内容となっている。
AI市場、約5000億ドル規模へ──生体データ収集巡り各国で警戒強まる
OpenAIが目指す評価額50兆円は、前回の資金調達時の30兆円から66%の上昇となる。この30兆円という評価額自体、すでにテクノロジー業界における最大規模の未公開企業評価額の一つだった。
OpenAIはコインベースのように、従業員や初期投資家に対して株式売却の機会を提供し、市場の旺盛な需要を活用する考えだ。
先週には、ソフトバンク主導で実施された約4兆円規模の資金調達ラウンドの第2弾で、OpenAIは8300億円を調達したことが報じられている。
この募集は5倍を超える応募超過となり、市場の関心の高さを示した。現在、OpenAIはGPT-5の投入準備や、ジョニー・アイブ氏の新たなAIハードウェア企業との約6500億円規模のパートナーシップに向けて動いている。
しかし、AI分野への資金流入が過熱する一方、各国の規制当局、特に中国は警戒感を強めている。
中国、暗号資産を利用した外国企業の虹彩データ収集に警告
中国国家安全部は最近、外国企業が暗号資産の報酬を与える形で虹彩データを収集する行為について、国家安全保障上の懸念を示す警告を出した。
当局は企業名を特定しなかったが、内容から明らかにWorldcoinを指していると見られている。Worldcoinは最近、名称をWorldに変更した。
WorldcoinはOpenAIのサム・アルトマンCEOが支援しているプロジェクトで、ユーザーの虹彩をスキャンすることでユーザーの身元を確認し、その対価としてトークンを付与するシステムを採用している。この仕組みについては以前からプライバシー面での懸念が指摘されてきた。
Worldcoin側は、生体認証を用いた本人確認が暗号資産経済において公平性を確保すると説明している。しかし、中国当局は、こうした手法が外国企業による監視や影響力行使につながる恐れがあると主張する。
中国の警告以前にも、ケニアとインドネシアではWorldcoinに対する規制措置が取られ、同プロジェクトの虹彩データ収集活動を停止させている。これらの国々は、生体データの使用目的や国境を越えた移動に関する懸念を理由として挙げている。
この状況は、暗号資産のユーザーにとって分散化が必ずしも現実世界の国家間の緊張や規制から自由でないことを改めて浮き彫りにしている。
OpenAI自身はトークンを発行していないが、アルトマン氏がWorldcoinと両プロジェクトに関与していることで、AIと暗号資産、生体認証による個人データ収集の問題が改めて注目されている。
現在、米国内ではOpenAIのAI技術をめぐる知的財産の使用とプライバシー基準に関する規制の議論が活発化している。一方、中国はデータ主権を強化し、AIや暗号資産が海外の影響力の道具として使われる可能性を強調している。
OpenAIが50兆円という巨大な企業評価額を目指す中、同社の事業拡大には期待と同時に規制面での不安もつきまとう状況になっている。
次世代技術への投資熱が高まる一方で、東西両方から規制当局が示す警戒感を投資家は慎重に考慮する必要がある。

CoinGeckoによると、本稿執筆時点でWorldcoinのトークン(WLD)は0.9391ドルで取引され、過去24時間で2.2%下落している。
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