多くの先進国市場がETFやDeFiのような複雑な金融商品に熱視線を送る一方、サブサハラアフリカ(SSA)は、インフレや為替規制に直面する何百万人にとってビットコインやステーブルコインが“日常の金融インフラ”になり得ることを、リアルワールドで証明している。
過去1年間でオンチェーンの取引価値は52%増。地域別ではAPAC、ラテンアメリカに続く世界3位に浮上した。これは単なる資金の往来ではなく、暗号資産が金融インフラを根底から置き換え始めていることの実証だ。
ビットコインを核に、小売が牽引
Chainalysisによれば、SSAは2024年7月〜2025年6月のオンチェーン価値が2050億ドル超と前年比+52%。牽引役は日常決済・価値保存・インフレヘッジに暗号資産を使うリテール層だ。
Sponsored中でもナイジェリアと南アフリカが双璧。ナイジェリアは高インフレと厳格なFX規制の中、オンチェーン価値が921億ドルへ拡大。一方の南アフリカは明確な規制枠組みと大手行(例:アブサ)の参入で機関利用が前進し、クロスボーダー決済や新商品開発が加速している。
“デジタルゴールド”としてのビットコインは依然圧倒的で、ナイジェリア小売の取引価値の89%、南アでは74%を占める。一方で大口の価値移転にはUSDTなどのステーブルコインが実務的な「ドル代替」として選好されている。
他地域との比較:SSAは「現実解」で際立つ
APACはDeFi・L2ブームで前年比+69%、機関マネーが香港・シンガポール・韓国へ流入。ラテンアメリカは+63%で送金・P2P決済が拡大。北米はETF/カストディ主導で約1.2兆ドル、欧州はMiCA整備とDeFiで約1.1兆ドルの規模感だ。
それでもSSAが特筆されるのは「実需」。高度な商品で稼ぐAPAC・北米と違い、SSAはインフレ耐性・資産保全・越境決済といった基礎的課題を暗号資産で解決しつつある。暗号資産が投機の道具ではなく“生活インフラ”足り得ることを、同地域は体現している。
今後、規制の整備が進み、イノベーション促進とリスク管理のバランスを取れれば、SSAは「現実世界での暗号資産採用」のフロントランナーとなる可能性が高い。高インフレ・厳格な資本規制・脆弱な決済網といった環境下でこそ、ビットコインとステーブルコインの底力が発揮されるからだ。