TRON(TRX)創設者のジャスティン・サン氏が、米ブルームバーグに対し法的措置を開始した。 訴訟は8月1日、デラウェア連邦地裁に提起され、同社が世界の富豪ランキング「ブルームバーグ・ビリオネアズ・インデックス」にサン氏を掲載しようとしたことが発端となった。
背景には、近年増加している暗号資産関連犯罪や、誘拐・暴力を伴う事件への懸念がある。ただし、単なる安全面の問題にとどまらない可能性もある。
ジャスティン・サン氏、保有暗号資産の開示をめぐりブルームバーグと対立
サン氏は、同社が暗号資産ポートフォリオの詳細を公開しようとし、機密保持契約に違反したと主張している。
報道によれば、ブルームバーグは口頭・書面の双方で、ポートフォリオデータを「厳密に機密扱い」とし、純資産の確認以外には使用しないと繰り返し保証していたという。
サン氏は、こうした保証が参加を決めるうえで重要だったと訴える。訴状には、編集者や記者がアクセスを制限し、確認後に削除すると合意した旨の内部メッセージも引用されている。
他の掲載者の事例を確認したところ、すでに公表済みの場合を除き、暗号資産の詳細内訳が公開された例はなかったという。
しかし、7月末に送付されたブルームバーグのドラフトには「多数の不正確な記載」と、コイン別の保有量が明記されていたとされる。その中には、サン氏が600億TRXを保有しているとの推計も含まれ、TRON総供給量の約63%に相当する。
彼の怒りは、600億TRX(総供給量の63%)を保有していると推計されたことにあるのではないか。多くを所有していることは知られていたが、私が見た推計はそれより低かった
ソフトウェアエンジニア兼暗号資産研究者 モリー・ホワイト氏 Xへの投稿
TRXは他の暗号資産と比べ値動きが比較的安定しており、この推測は的外れとはいえない可能性がある。

また、ブルームバーグの資料には、1万7000BTC、22万4000ETH、70万USDTの保有も記載されており、サン氏はこれらを高度に機密性のある情報だとしている。
サン氏は、この情報公開が自身や家族の安全を脅かす恐れがあると主張する。
暗号資産の富が招くリスクへの懸念
訴状では、情報公開がハッキングや盗難、恐喝、さらには身体的危害といった深刻なリスクを招く可能性が指摘されている。
こうした懸念は、近年の暗号資産犯罪増加の事例からも裏付けられる。例えば身代金目的の誘拐事件で被害者の指を切断する計画や、フランスでの連続暗号資産誘拐事件、さらにはコインベースCEOが不審物受領後に爆発物処理班を呼んだ事例などがある。
こうした背景から、サン氏の代理人は8月2日付で差止命令を通知し、公開内容を純資産と大まかな資産区分に限定するよう求めた。
しかしブルームバーグ側は詳細情報の公開を進める意向とされ、既に記事も掲載済みであることから、サン氏の仮処分申請に異議を唱える構えを見せている。
サン氏は差止命令を送付したが、ブルームバーグは公開予定を通知。現在、同氏は差止命令を裁判所に求めている
モリー・ホワイト氏 Xへの投稿
モリー・ホワイト氏は、サン氏の情報秘匿への強い姿勢は、規制当局の監視や課税、TRXの大口保有による印象などと関係している可能性を指摘する。
また、一部ではサン氏が政治的にセンシティブな取引を隠す意図があるとの見方も出ている。現在、同氏は特定の保有額開示阻止のため、仮処分・予備的および恒久的差止命令、法的費用の補填を求めている。
ブルームバーグは、自社の報道は正当な範囲内であり、訴えに対抗する方針を示している。
この訴訟の行方は、暗号資産長者の情報公開における透明性の基準や、報道機関がどこまでブロックチェーン富豪の資産状況を追及できるかに影響を及ぼす可能性がある。
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