新たな報告によると、民事詐欺事件を扱う裁判官が、盗難暗号資産の凍結・回収に積極的な姿勢を見せている。連邦当局による取り締まりが弱まるなか、小口投資家は司法に保護を求める動きを強めている。
しかし、こうした動きだけでは抜本的な解決には至らない。裁判官はブロックチェーンやWeb3の仕組みに必ずしも精通しておらず、詐欺師によって説得され、資産凍結が解除されるケースも出ている。
民事裁判官が暗号資産詐欺に挑む
トランプ政権下で連邦レベルの暗号資産取り締まりが後退するなか、裁判所は新たな役割を担い始めている。とりわけ民事裁判官は、従来は司法省や規制当局が対応していた案件に関しても、資産凍結などの緊急措置を求められるようになっている。
Sponsored「人々は盗まれた資産を取り戻す手段を切実に探しているが、司法省にはこれらの事件を追跡する余力がない。弁護士は資産の移動を確認できても、それを実際に回収するのはまったく別の問題だ」 —— スコット・アームストロング元連邦暗号資産検察官
多くのケースは機関投資家ではなく、ハッキングや詐欺で資金を失った個人投資家によるものだ。だが、民間セキュリティ企業は協力に消極的で、司法省も一部のマネーロンダリング関連調査を縮小している。こうした状況で、裁判官が被害者にとって最後の拠り所になりつつある。
限界ある対応
ただし、この解決策には大きな限界がある。裁判官は法律には精通していても、ブロックチェーンの専門家ではない。詐欺師が法廷で「資産を凍結し続けると価値が消滅する」と主張すれば、裁判官が応じてしまう場合もある。
実際、LIBRAミームコインのプロモーター、ヘイデン・デイビスは裁判所を説得してウォレット凍結を解除させた直後、別の暗号資産詐欺に関与したとされている。
こうした例は、司法が暗号資産特有のリスクを十分に理解できていないことを浮き彫りにしている。加えて、裁判官は他の多くの民事事件も抱えており、暗号資産だけに専念するわけにはいかない。
小売投資家は詐欺やハッキングの連続的な攻撃にさらされ続けている。資産回収を確実にするには、裁判所の場当たり的な対応以上の包括的な対策が必要だ。
司法の「善意の努力」だけでは足りない。暗号資産市場の透明性を高め、被害者が実際に資産を取り戻せるようにするための新しい法制度と技術的な枠組みが不可欠だ。