ベトナムが8600万件超の銀行口座を削除する決定は、個人資産に対する中央集権的管理への懸念を一段と高めている。生体認証が義務化されるなか、批評家は大規模な口座閉鎖が従来型銀行システムの脆弱性を露呈したと指摘している。
今回の出来事は、政府や金融機関の監視を受けない分散型の代替手段、特にビットコインへの関心を再燃させている。
Sponsoredベトナム、新たな生体認証規則で数千万口座を削除
ベトナムの商業銀行は2025年9月初旬、8600万件超の銀行口座の削除を開始した。これはベトナム国家銀行(SBV)が施行した新たな生体認証要件に基づく。政府当局は、顔認証や指紋認証のない口座が対象であり、詐欺やサイバー犯罪、マネーロンダリング防止が目的と説明している。
同国の銀行口座数は約2億件と推定されるが、全国的な見直し後にアクティブとされたのは約1億1300万件。生体認証データ未登録や非アクティブと判定された口座は削除され、多くの住民が期限に追われて手続きを急いでいる。
外国人居住者からは特に不便との声が上がる。対面での本人確認が必須でリモート対応が限られるため、国外滞在者や支店にすぐ行けない人々にとって大きな障害となっている。批評家は、今回の措置が脆弱な層を排除し、正当な金融活動を妨げるリスクを孕むと警鐘を鳴らす。
突然の口座凍結の世界的背景
ベトナムでの大規模な削除は孤立事例ではない。世界各国で政府や金融機関は、しばしば事前通知なしに口座を凍結・資金を押収している。
中国では2022年、地方銀行の顧客が詐欺調査の一環で数か月間預金を凍結され、大規模抗議を引き起こした。米国では長年、民事資産没収制度により犯罪の有罪判決がなくても法執行機関が資産を押収可能だ。英国には「口座凍結命令」があり、マネーロンダリング防止の観点で当局がアクセスを遮断できる。
Sponsored2022年のカナダ・トラック運転手抗議活動では、政府が非常権限を発動し、デモ参加者や支援者の銀行口座や暗号資産口座を凍結した。こうした事例は、中央集権型銀行システム下で個人が資金アクセスを即座に失い得る現実を浮き彫りにしている。
分散型代替案への関心の高まり
分散型金融の支持者は、ベトナムでの措置が従来型銀行の弱点を象徴すると見る。あるXユーザーはニュースを引用し「30日までに従わなければ資金を失う。だからこそビットコインを使う」と指摘した。
中央集権システムでは、政府や銀行が預金を最終的に支配し、政策や規制要件が変われば口座凍結や削除のリスクがある。
生体認証義務化は、金融アクセスを個人認証と結びつけ、詐欺防止を強化する一方、技術障害や人的ミス、政治的優先の変化によって取引能力が突如制限されるリスクを集中させる。
対照的に、ビットコインなど分散型ネットワークは、仲介者なしで価値を保有・送付できる。取引はピアツーピアで行われ、恣意的な凍結や押収は困難だ。支持者は、この自律性こそが金融主権であり、サイバー犯罪者だけでなく国家の過度な介入や予期せぬ規制変更からも保護すると強調する。