戻る

ゆうちょ銀のトークン化預金、不動産業界で初の実証実験へ

sameAuthor avatar

執筆&編集:
Shigeki Mori

27日 11月 2025年 09:33 JST
Trusted-確かな情報源
  • ゆうちょ銀行のトークン化預金が不動産業界で初の実証実験、ディーカレットDCPとシノケンGが協業
  • 賃料決済の自動化を検証、2025年12月完了予定で2026年以降の本格導入を目指す
  • 国内外でトークン化預金の導入が加速、ステーブルコインとは異なる銀行主導のデジタル通貨
プロモーション

ゆうちょ銀行とディーカレットDCPが提供するトークン化預金の実証実験が、不動産業界で初めて実施される。シノケングループとの協業により、賃貸管理における月次賃料の支払いをユースケースとして検証が行われ、2025年12月末の完了を目指す。トークン化預金による決済の自動化と効率化を検証し、2026年以降の本格導入を見据える。

今回の実証実験では、ディーカレットDCPが開発するデジタル通貨プラットフォーム「DCJPY」を活用する。トークン化預金は、銀行預金をブロックチェーン上でトークン化したもので、従来の預金と同等の安全性を維持しながら、スマートコントラクトを通じた取引の自動化や即時決済を可能にする。不動産業界においてトークン化預金を活用した実証実験は今回が初の事例となる。

Sponsored
Sponsored

国内外で加速するトークン化預金の実用化

トークン化預金市場は、2025年に入り商用展開が本格化している。ゆうちょ銀行が9月に2026年度中のトークン化預金取り扱い開始を正式発表したほか、SBI新生銀行も同月にディーカレットDCPと提携し、外貨対応のトークン化預金検討を開始した。同社が事務局を務める「デジタル通貨フォーラム」には2025年11月時点で125社以上が参加し、セキュリティトークン決済や企業間取引など多様なユースケースの実証が進む。

海外では2025年11月、JPモルガン・チェースが米ドル建て預金トークン「JPMD」をコインベースのイーサリアムレイヤー2ネットワーク「Base」上で正式提供を開始した。機関投資家向けに提供される同トークンは、24時間365日のほぼ即時決済を可能にし、スマートコントラクトを通じた金融ワークフローの自動化にも対応する。JPモルガンは既存の「JPM Coin」で1日あたり10億ドル規模の取引を処理してきたが、今回初めてパブリックブロックチェーンへの展開に踏み切った形だ。

トークン化預金は、ステーブルコインとは法的位置づけが異なる。日本の資金決済法で電子決済手段として定義されるステーブルコインが不特定多数間での流通を前提とするのに対し、トークン化預金は通常の銀行預金として扱われ、預金保険の対象となる。また、銀行の資本健全性の範囲内で柔軟な発行が可能であり、将来的には付利も想定される点で、金融機関にとって運用しやすい特徴を持つ。

不動産決済へのブロックチェーン適用と規制動向

不動産業界では、セキュリティトークンによる資金調達や権利の小口化が先行して普及してきた。三井物産デジタル・アセットマネジメントの「ALTERNA」など、不動産をトークン化して投資商品として提供するサービスが展開されている。しかし、賃貸管理における日常的な決済業務へのトークン化預金の適用は前例がなく、今回の実証実験は新たな活用領域の開拓となる。

シノケングループは将来的に、トークン化預金を利用して賃料や光熱費の支払日を入居者が一定範囲内で自由に設定できる仕組みを検討している。さらに、入居期間や支払履歴などに応じて独自ポイント「シノケンコイン」を還元し、次の住まい探しなど同社サービスで利用できるようにする構想も描く。

トークン化預金の実用化には、法的整備が課題として残る。日本銀行が7月に公表した論文では、トークン化された預金での支払いの私法上の位置づけや、スマートコントラクト活用時の法的安定性について論点が提起された。スイスやドイツなど欧州諸国では既に権利関係の明確化に向けた法整備が進んでおり、日本でも同様の議論が求められている。

金融庁の資金決済制度等ワーキング・グループは1月、ステーブルコインの裏付資産運用に関する規制緩和案を報告書で提言した。トークン化預金は通常の預金として扱われるため、銀行の資本健全性の範囲内で柔軟な発行が可能である点が特徴だ。今回の実証実験の成果次第では、不動産業界における決済業務のデジタル化が大きく進展する可能性がある。

免責事項

当ウェブサイトに掲載されているすべての情報は、誠意をもって作成され、一般的な情報提供のみを目的としています。当ウェブサイトに掲載されている情報に基づいて行う一切の行為については、読者ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。

スポンサード
スポンサード