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ソシャゲの革命児からWeb3業界の台風の目へ|BlockSmith&Co. 真田哲弥CEOインタビュー

15 mins

IVS Crypto Kyoto 2024が7月4〜6日、京都パルスプラザで開催された。国内外から著名なスピーカーたちが登壇し、企業たちは趣向を凝らしたブースを展開する中、講演後にオーディエンスたちが三顧の礼よろしく、列をなしてスピーカーに挨拶をしているステージを見つけた。そのスピーカーとは真田哲弥氏(59)だ。

「ITバブル」と言われた1990年代後半、世界初のモバイルインターネットのシステムである「iモード」の開発プロジェクトに参画したほか、2000年代以降はいわゆる「モバゲー」「ソシャゲ」といったモバイル端末ゲームを開発する企業KLabを創設した。09年には同社を東証プライムに上場させるなど、真田氏は日本のモバイルエンターテイメントを牽引してきたシリアルアントレプレナー(連続起業家)の草分けだ。そんな日本のモバイルゲームの最先端を行く真田氏は22年4月、突如としてWeb3業界に進出。ブロックチェーンゲーム開発企業BlockSmith&Co.を立ち上げたのだ。

そんな時代を常にリードしてきた真田氏に、Web3業界に進出した真意と同社の動向について話を聞いた。

真田哲弥(さなだ・てつや):1964年、大阪府生まれ。関西学院大学在学中に若干19歳で株式会社リョーマを起業。その後、97年に現株式会社ACCESSに入社、98年株式会社サイバードを共同で設立し、2000年、ジャスダック(当時)上場などを果たす。同年、株式会社ケイ・ラボラトリー(現:KLab株式会社)を設立し、代表取締役社長CEOに就任。モバイルゲーム事業で成功し、11年には同社を東証マザーズ(当時)に上場、12年、東証1部に市場変更させた。現KLab取締役会長、株式会社BLOCKSMITH&Co.の代表取締役社長CEOを兼任。

Q:KLabが上場するなど経営が順調な中、BlockSmith&Co. を立ち上げた経緯とビジョンについて教えて下さい。

BlockSmith&Co.の立ち上げは、Web3とブロックチェーン技術が次の大きな波になると確信したからです。我々のゲーム開発スキルを活かしつつ、「潰れずに永久に続く」トークノミクスの開発を目指しています。

ビジョンとしては、ゲーム、SNS、広告モデルを融合させた新しいWeb3プラットフォームの構築です。最終的には10億人規模のユーザーを目指していますが、段階的に成長させていく戦略です。

我々は単なるゲーム会社ではなく、Web3時代の新しいエンターテインメントとコミュニケーションの形を創造する会社なのです。

Q:他国に比べて日本ではWeb3の普及が遅いと感じていますが、「Web3の可能性」についてはどのように感じていますか? また、ビジネスチャンスだと捉えていますか?

Web3の普及速度が遅いと感じるのは正しい観察ですね。確かに仕組みの複雑さは一因ですが、これは大きなチャンスでもあります。

我々はWeb3の本質を「価値の分散化」と捉えています。この概念を一般ユーザーにも分かりやすく、使いやすい形で提供することが鍵です。

例えば、我々の「QAQA」は、クイズという親しみやすい形式を通じてWeb3の利点を体験できるよう設計しています。ユーザーは難しい仕組みを理解しなくても、自然にトークン経済に参加できるんです。

Web3の真の可能性は、こうした「複雑さの隠蔽」と「価値還元の実現」にあると考えています。これを実現できれば、大きなビジネスチャンスになるはずです。

Q:ブロックチェーンゲーム(NFTゲーム)のコミュニティでは、純粋にゲームを楽しみたいユーザーと、いわゆる”投機勢”との間に対立構造のような見えない溝があり、それがNFTゲームの発展を難しくしているという話があります。このことについて、真田CEOのお考えはありますか?

ブロックチェーンゲーム業界が直面している課題の1つは、ゲームの本質と経済的価値のバランスが崩れていることです。純粋にゲームを楽しみたいユーザーと投機目的のユーザーが共存できるモデルの構築が重要です。

私たちの「QAQA」は、クイズという楽しいコンテンツを基盤に、トークン経済を組み込むことでこのバランスを実現しようとしています。また、コミュニティ管理を通じて、ゲーム性と経済性を両立させることも求められます。教育的アプローチを取り入れることで、ユーザーにブロックチェーン技術やトークン経済の可能性を理解してもらい、健全なエコシステムを構築することを目指しています。

最終的には、持続可能な経済モデルを構築し、ゲームとしての魅力を維持することが私たちの挑戦です。

IVS Crypto Kyoto2024で講演する真田氏

Q:グローバルの観点から見ると、昨年から今年に至るまでNFT業界は業績不振が続いています。日本の市場においてはどのように感じていますか?

日本市場でも同様の課題が見られますが、私はこれを一時的なものと捉えています。新しい技術が普及するには時間がかかるのは当然であり、特にNFTのような新しい概念はなおさらです。

私たちは長期的な視点で市場を見ており、今後の成長に対して楽観的です。

Q:上記、NFTの不振について、どうすればNFT業界は上向きになると考えますか?

NFT業界の再活性化には、「価値の再定義」が鍵だと考えています。まず、NFTを単なる投機対象から脱却させ、実用性とエンターテインメント性を融合させる必要があります。

例えば、我々の「QAQA(カカ)」のように、日常的に楽しめるコンテンツと結びつけることで、NFTの存在意義を高められるでしょう。

次に、ブランドや企業とのコラボレーションを強化し、リアルワールドとの接点を増やすことです。NFTが現実世界で特典や体験につながれば、その価値は大きく向上します。

さらに、技術面での改善も重要です。ガス代の低減や取引の簡素化など、ユーザビリティを高めることで、一般ユーザーの参入障壁を下げられます。

最後に、教育と透明性の向上です。NFTの本質的な価値をユーザーに理解してもらい、健全な市場を育成することが長期的な成長につながると確信しています。

Q:7月に開催した、QAQAを使った「Web3クイズ王決定戦」ですが、こちらを開催された目的・意義・見どころについて教えて下さい。

このイベントの目的は、Web3の知識を広め、より多くの人々にその魅力を伝えることです。30以上のWeb3関連の企業やプロジェクトが参加するので、Web3の世界がいかに広くて面白いかを感じてもらえるはずです。

見どころは、いろいろな分野のクイズが出題されること、Xを使って他の参加者と競い合えること、そして頑張った分だけトークンという形で報酬がもらえることです。

この大会は単なるクイズ大会ではありません。学びと楽しさ、そして新しい経済の形を一度に体験できる場なんです。Web3って何だろう?と思っている人も、Web3をもっと広めたいと思っている人も、ぜひ参加してください。

この大会を通じて、Web3の可能性を多くの人に知ってもらい、この分野がもっと発展することを願っています。

Q:真田CEOは「i-mode」の黎明期からインターネット業界の最先端を走り続けていますが、どこからそのようなスピリットや情熱が湧いてくるのですか?

私の情熱は「次の波」に乗ることへの強い欲求から来ています。インターネット黎明期から技術の進化を見続け、その中にある「パターン」を理解し、次に来るものを予測する能力を磨いてきました。

i-mode時代のモバイルインターネットやWeb3時代のブロックチェーン技術など、常に先を見据えた挑戦を続けています。「根拠のない自信」と失敗を恐れない姿勢が、新しい分野への挑戦を支える原動力です。変化を楽しみ、学び続け、挑戦し続けることが私の情熱の源です。

Q:真田CEOのプライベートにおけるWeb3との携わり方についても教えて下さい

プライベートでのWeb3との関わりについて、私は暗号資産への直接投資はほとんどしていませんが、業界の動向を把握するために主要な暗号資産の相場をチェックしています。家族にはブロックチェーンやWeb3の基本的な概念を教えており、将来この技術が当たり前になると考えています。

休日にはデジタルデトックスを完全には実践していませんが、家族との時間を大切にし、仕事関連の連絡は控えるようにしています。日常生活でブロックチェーン技術の活用方法を考えることが多く、Web3は私の生活の一部として統合されています。

Q:御社のHPでもさまざまな求人が掲載されています。Web3業界で活躍できる人材とはどのような人材だと感じますか?

Web3業界で活躍できる人材は、主に3つの特徴を持っていると考えています。

まず、好奇心旺盛で学習意欲が高いことです。Web3の世界は日々進化しているので、常に新しい知識を吸収し続ける姿勢が不可欠です。

次に、柔軟な思考力です。従来の常識にとらわれず、新しい可能性を探れる人が求められます。Web3は既存の仕組みを大きく変える可能性を秘めていますから。

最後に、チームワークとコミュニケーション能力です。Web3プロジェクトは多岐にわたる専門知識が必要で、1人では成し遂げられません。異なる背景を持つ人々と協力し、アイデアを形にできる人材が重要です。

技術的なスキルも大切ですが、それ以上にWeb3の可能性を信じ、新しい世界を創造する情熱を持った人材を我々は求めています。経験の有無よりも、挑戦する意欲を重視しています。

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Shigeki Mori
大阪府出身。日本では雑誌編集者、読売テレビ広報記者、豪州では日系メディア編集・記者などを経てフリーに。日本とオーストラリアで20年以上、ジャーナリスト、編集者、翻訳者、ウェブプロデューサーとして活動してきた。近年は暗号資産関連の記事の執筆や翻訳、コンテンツ・マネジメントを行っている。
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