ホワイトハウスAI政策顧問のマイケル・クラツィオス氏は、中国のスタートアップであるMoonshot AIがアンソロピック社のClaude Fable 5を密かにコピーしたと非難した。同氏によれば、このコピーが新たなKimi K3モデルの開発に使われたという。
クラツィオス氏は水曜日、Xに投稿し、この主張を明らかにした。同氏によると、Moonshotは米国モデルの大規模なディスティレーション(蒸留学習)のための特殊なプラットフォームを構築したとされる。同社は摘発を避けるため、アクセス経路を絶えず変更していたという。
ホワイトハウス、Moonshot AIのディスティレーション問題に警告
今回の問題の中心となっている「ディスティレーション(蒸留学習)」とは、強力なAIモデルの回答を利用し、新たなAIモデルを訓練する技術。オープンな形で行えば合法で広く使われているが、クラツィオス氏は、隠密かつ産業規模での実施は窃盗だと指摘する。
「Moonshot AIがK3モデルの開発においてAnthropic社のFableをディスティレーションしたとの情報を得ている。しかし、独自の米国技術の窃取や米国の研究を損なう目的で行われる大規模かつ隠密な産業レベルのディスティレーションは容認できない」ホワイトハウス科学技術政策局長マイケル・クラツィオス氏 声明。
Anthropic社も同様の指摘をしている。2月の報告書で、同社は340万件超のClaudeによる応答がMoonshot社に流れていたと明らかにした。トラフィックは数百の偽アカウントから発生。アカウント記録にはMoonshot幹部の公的プロフィールと一致するものもあった。
Anthropic社はこの行為がClaudeの推論・コーディング・画像認識能力を標的にしたものだったと述べている。
クラツィオス氏はさらに、Moonshot社がNVIDIAのGB300サーバーを入手し、タイで使用しているとも主張。GB300はNVIDIAの最先端AIチップで、米国規制により中国への販売は禁じられている。米国は5月にAIチップの輸出規制を強化。6月には台湾でスーパーマイクロ社のオフィスに対する家宅捜索も行われ、中国へのチップ密輸疑惑が浮上している。
Kimi K3、米中AI競争を激化
Moonshot社は7月16日にKimi K3を公開した。パラメータ数は2兆8000億で、公開型ウエイトモデルとしては最大。需要が殺到し、Moonshot社は公開から48時間以内に新規Kimiサブスクリプションの受付を一時停止した。全モデルのウエイトは7月27日までに一般公開される。
この日付が重要だ。Anthropic社は、コピーされたモデルは安全装置(ガードレール)を失うと警告している。一度オープンソース化すれば、どの国・組織でも手に負えなくなる可能性。
同様の指摘はこれが初めてではない。2025年1月にはホワイトハウスAI責任者デイビッド・サックス氏がDeepSeek社がOpenAIモデルをコピーしていると非難。DeepSeek社はこれを否定。北京政府はAnthropic社の2月の検証結果を「根拠がない」と一蹴した。
クラツィオス氏から制裁措置の発表はなく、Moonshot社も沈黙を守っている。米国はAI分野でなお23倍の支出優位を維持するが、中国勢は着実に追い上げている。次の一手はワシントンの判断に委ねられた形だ。









