政府と日本銀行は26日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)導入に向けた初の連絡会議を財務省内で開催した。会議は、財務省理財局長を議長とし、内閣府、警察庁、金融庁など関連する府省庁の幹部と日銀の理事が参加。23年6月に政府が閣議決定した「骨太の方針」を踏まえ、CBDCの制度設計の大枠を整理することが目標である。
政府と日銀は、現時点でCBDC発行の計画はないと説明しているが、23年12月に財務省の有識者会議は、プライバシー保護やセキュリティ対策などに関する制度設計の論点をまとめた。導入時に必要な実務的事項に関する検討作業も進める方針である。CBDCを導入する場合、個人情報保護や所有・移転、不正利用などの問題に対処する必要があり、現行法にはデジタル通貨を想定したものがないため、法制度上の課題を洗い出す作業が重要となる。
CBDC専用の法整備と実証実験
有識者会議の委員である井上聡弁護士は24日報道関係者にに対し、CBDC発行のための専用法整備の必要性を指摘。「現行法の解釈や運用の見直しが必要だが、法改正が不要な範囲も存在するため、必要な対応範囲はこれからの検討によって決まる」と述べた。
日本銀行はCBDCの実証実験を昨年4月から「パイロット実験」として進め、7月には「CBDCフォーラム」の設置と開催、12月には有識者会議の取りまとめを公表している。CBDC導入の決定は国民的議論を経てなされるべきものとされており、現時点での決定はない。日銀は11日、CBDCフォーラムに参加する追加企業を発表していた。
財務省は今後、関係省庁・日本銀行と連携し、制度設計の大枠を整理するとともに、CBDC導入を判断した場合には迅速に発行できるよう、国際的な動向や技術進展を踏まえて更なる具体化や必要な見直しを行うと述べている。
CBDCの開発は日本は一歩出遅れか
CBDCの開発や研究は海外が先行しており、新興国から先進国への波及が見られる。欧州中央銀行(ECB)は28年ごろの発行を目指し、23年11月に準備段階に入った。欧州連合(EU)は同年6月にデジタルユーロに関する法案をまとめ、ECBは法整備後に導入を最終判断する。
米国ではバイデン大統領がCBDCの開発を政権の最優先課題に位置づけているが、11月の大統領選を控え、トランプ前大統領は18日には否定的な考えを示しており、大統領選に注目が集まるところだ。中国は20年にデジタル人民元を導入し、取引は1.8兆元に達した。ブラジルもデジタル通貨DREXのパイロットを計画しており、これはトークン化された銀行預金に基づく取引を目的とする。
金融大手のモルガン・スタンレーはこのほど公開したレポートで、中央銀行デジタル通貨(CBDC)への世界的な関心が高まっていると主張。23年半ばには111カ国がCBDCを開発しており、これらの国々は世界GDPの95%以上を占めると指摘した。
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