デジタル通貨と聞くと、ビットコインやイーサリアムなどの暗号通貨(仮想通貨)を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか? しかし、近年、暗号資産とは異なる種類のデジタル通貨が注目を集めています。それが「CBDC(中央銀行デジタル通貨)」です。
CBDCとは、各国の中央銀行が発行する法定通貨をデジタル化したもので、現金と同じように強制通用力があります。CBDCは、決済システムの効率化やコスト削減、犯罪対策などの目的を達成するために利用される可能性が高いです。 しかし、CBDCは電子マネーや暗号資産と何が違うのでしょうか?
この記事では、CBDCの概要や特徴、暗号資産との違いをわかりやすく解説していきます。
CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは?
CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは、各国の中央銀行が発行するデジタル化された法定通貨のことです。法定通貨とは、国家が法律で定めた通貨のことで、円やドルなどが該当します。CBDCは、中央銀行の債務として発行されるため、国家によって価値が保証されており、価格変動が起きにくいのが特徴。CBDCは、現金や銀行預金とは異なる新しい形態の電子マネーと考えることができます。
現在、CBDCの導入に積極的な国は中国やスウェーデン、バハマなどです。これらの国では、CBDCの実証実験や正式発行を進めており、日本では、CBDCの実用可能性について検証中です。CBDCは、民間銀行や既存の金融システムへの影響など検討すべき課題も多いことから、多くの中央銀行は慎重な姿勢を維持しています。
CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは?暗号資産との違い
CBDC(中央銀行デジタル通貨)と暗号資産との違いについて、要点を3つに絞って解説します。
- 発行主体と法的地位の違い
- 技術的な仕組みの違い
- 利用目的や効果の違い
CBDCと暗号資産との違い①:発行主体と法的地位の違い
CBDCは、国家の機関である中央銀行が発行する法定通貨のデジタル化です。CBDCは、現金と同じように誰に対しても支払い手段として使用できます。
また、CBDCは国家が価値を保証しており、価格変動が起こりにくいという特徴があります。 暗号資産は、民間組織や個人が発行する独自のデジタル通貨。暗号資産には法的な強制通用力はなく、決済を受け入れるかどうかは個人の判断に委ねられます。また、暗号資産は需給関係によって価格変動し、ボラティリティが高いという特徴があります。
CBDCと暗号資産との違い②:技術的な仕組みの違い
CBDCは、分散型台帳技術と呼ばれる技術を用いて開発されることが多いです。分散型台帳技術とは、ネットワークの参加者が同じ台帳を管理・共有することができる技術です。ブロックチェーンは、分散型台帳技術を代表する技術の一つで、暗号資産も、分散型台帳技術を利用して発行・管理されています。
しかし、暗号資産は中央機関の介在なしにネットワーク参加者間で合意形成を行うため、コンセンサスアルゴリズムと呼ばれるルールや仕組みが必要です。コンセンサスアルゴリズムには、プルーフオブワーク(PoW)やプルーフオブステーク(PoS)など様々な種類があります。
CBDCと暗号資産との違い②:利用目的や効果の違い
CBDCは、決済システムの効率化やコスト削減、デジタル環境への適応、マネーロンダリング防止などのメリットが期待されています。CBDCは通貨主権や金融安定性などの観点からも重要な役割を果たす可能性があり、一方暗号資産は、中央機関に依存しない自由な取引や投資、イノベーションなどのメリットが期待されています。暗号資産は金融商品として個人の利益を目指すものであり、国際送金やマイクロペイメントなどのニーズに応える可能性があります。
CBDC(中央銀行デジタル通貨)のメリット
CBDC(中央銀行デジタル通貨)のメリットについて、解説します。
- コストを削減できる
- 透明性が高く不正が起きにくい
- 決済システムを効率化できる
CBDCのメリット①:コストを削減できる
現在の硬貨や紙幣などの発行には、大きなコストがかかっています。通貨の製造や廃棄だけでなく、レジ・ATMなどにも費用が必要ですが、CBDCを導入すれば、このようなコストが削減できるとされています。
また、決済手数料も低く抑えられる可能性があります。現在は民間企業が運営する電子マネーでは、システム利用料として2〜5%程度の決済手数料が店舗にかかっていますが、公共財であるCBDCでは手数料無料で使用できる可能性が高いと言われています。
CBDCのメリット②:透明性が高く不正が起きにくい
CBDCは取引履歴をすべて記録することが可能なため、現金を使った不正などが起きにくくなります。現金のデメリットに、マネーロンダリングや脱税といった不正が把握できないことが挙げられます。しかしCBDCであれば、取引履歴を追跡可能なため、上記のような不正を抑止できるでしょう。
また、中央銀行が通貨の価値を保証することで、信頼性が高まります。民間企業が発行する電子マネーや暗号資産では、発行者の信用や需給関係によって価値が変動する可能性がありますが、CBDCは法定通貨そのものであるため、価値の安定性や流通性に優れています。
CBDCのメリット③:決済システムを効率化できる
CBDCでは、決済システムを効率化でき、納税や送金の際もデジタル上で行うため、高速化されます。例えば、コロナ禍で支給された特別給付金なども、CBDCであれば迅速に対応可能です。
さらには、災害時や非常時にも迅速に対応可能です。現金の場合、災害時に現金が不足したり、非常時に現金の移動が困難になったりするリスクがありますが、CBDCであれば、デジタル上での決済が可能なため、そのようなリスクを回避できます。
CBDC(中央銀行デジタル通貨)のデメリット
導入の期待があるCBDCですが、一方デメリットがあります。CBDC(中央銀行デジタル通貨)のデメリットは、下記です。
- 取引の匿名性が失われる
- 災害時のリスクが大きい
- 民間銀行の金融仲介機能の低下
CBDCのデメリット①:取引の匿名性が失われる
CBDCは取引履歴をすべて記録することで、不正防止に有効ですが、同時に取引の匿名性を失ってしまうデメリットもあります。中央銀行に取引の流れを把握されるため、プライバシーが守られないとの声も上がっており、例えば、政府や企業が個人の消費行動や資産状況などを分析して、税制や価格設定などに利用する可能性があります。
CBDCのデメリット②:災害時のリスクが大きい
CBDCはデジタル上で展開されるため、災害時などによりネットワークの不具合が起これば、機能停止するおそれがあります。また、サイバー攻撃を受ける可能性もあり、そのため、オフラインでも使える仕組みをつくったり強固なセキュリティ基盤を整えたりするなどが必要です。現金の場合、電気や通信環境に依存しないため、災害時でも使用できるメリットがありますが、CBDCでは、そのようなメリットを享受できない可能性があります。
CBDCのデメリット③:民間銀行の仲介機能の低下
CBDCが普及すれば民間銀行への預金が減少し、貸出資金が不足する可能性があります。民間銀行は預金から貸出を行うことで金融仲介機能を果たしていますが、CBDCでは、中央銀行から直接デジタル通貨を入手できるため、民間銀行を介する必要がなくなります。これらは、民間銀行の収益源を低下させることにつながると危惧されています。
日本のCBDC(中央銀行デジタル通貨)とに対する取り組み
日本では、2020年10月に日本銀行がCBDCを作るための計画「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を発表しました。2021年4月からCBDCの実証実験を始めています。
日本銀行は、CBDCを作るための実験を段階的に行っており、まずは、基本的な機能や性能を確かめる実験を。次に、CBDCの詳細な機能や性能を確かめる実験を実施しています。
CBDCの促進を進めてる日本ですが、日本がCBDCに取り組むメリットとしては、下記が挙げられます。
- 現金取引にかかるコストや決済手数料を削減できる
- マネーロンダリングや脱税などの犯罪対策が強化できる
- デジタル社会に適応した決済システムを構築できる
- 国際的な決済や送金がスムーズになる
以上のように、日本はCBDCに関する研究・開発を進めており、将来的な発行の可能性が検討されています。CBDCは、現金や電子マネーとは違って、国が価値を保証してくれるデジタルの通貨。CBDCによって、さまざまなメリットを享受できるようになるため、国内のCBDC動向に注目が集まります。
CBDC(中央銀行デジタル通貨)と暗号資産の違いまとめ
CBDCと暗号資産は、どちらもデジタル通貨として注目されていますが、その特徴や違いについて知っておくことが重要です。この記事では、CBDCと暗号資産との違いについて解説しました。
CBDCは、国家が発行する法定通貨をデジタル化したもので、現金と同じように強制通用力があります。CBDCは、決済システムの効率化やコスト削減、デジタル環境への適応、マネーロンダリングや脱税の防止などのメリットがありますが、民間銀行の金融仲介機能の低下やデジタル取付けのリスク、プライバシー保護の問題、サイバー攻撃・災害に対する脆弱性などの課題もあります。
CBDCは現金のデジタル版であり、暗号資産は金融商品としての側面が強いと言えるでしょう。これらのデジタル通貨について理解し、適切に利用することが重要です。
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