米国の大手暗号資産取引所コインベース(ティッカー:COIN)の株価は、ビットコイン(BTC)の価格と非常に密接な関係があります。特に2021年4月のNASDAQ上場以来、ビットコイン価格が動けばコインベース株もほぼ同時に反応してきました。その背景には、収益モデルや投資家心理など複数の要因が複雑に絡み合っています。
本稿では、コインベース株とビットコイン価格の連動性を、2021年から2025年中盤までのデータをもとに分析し、投資判断にどう活かせばよいのかを詳しく解説します。
コインベース株とビットコインの価格は連動するか?
米国の大手暗号資産取引所コインベース(Coinbase Global, ティッカー: COIN)の株価は、ビットコイン価格と密接に関連しています。
コインベースは2021年4月にNASDAQに上場しましたが、初日からビットコイン価格と同調した値動きを見せました。例えば、ビットコインが当時の史上最高値となる6万3000ドルを超えた際、コインベース株は基準価格の250ドルから328.28ドルへと大幅に上昇しています。
その後も、コインベース株価とビットコイン価格の間には強い相関関係が見られます。実際、2023年前半における90日間の短期的な相関係数は1.0に近く、ほぼ完全に連動した時期もありました。ただし、この相関係数は市場環境や特定イベントにより変化するため、一時的に低下する場面もあります。
それでも大局的には、「ビットコインが上昇すればコインベース株も上昇、下落すれば共に下落」という関係性は明確です。
連動性の背景
コインベース株とビットコイン価格の連動が強い背景には、以下の理由があります。
- コインベースの主な収益源は取引手数料であり、その取引高はビットコイン価格に大きく左右されるため。
- 投資家にとってコインベース株は暗号資産市場への「プロキシ(代理投資手段)」と見なされているため。
つまり、ビットコインを直接保有せずとも、コインベース株を通じて間接的に暗号資産市場の成長に投資できる仕組みとなっており、これが両者の強い連動性につながっています。
過去の価格動向:強気相場と弱気相場での連動関係

ここでは、2021年〜2025年7月の主要な相場局面におけるコインベース株価とビットコイン価格の相関関係を整理します。
2021年:上場直後の急騰と急落
コインベースは2021年4月14日、暗号資産市場が活況な中でNASDAQに直接上場しました。同日ビットコインは過去最高値約6万4000ドルを記録し、コインベース株も初値381ドルから一時429ドルまで急騰(終値328.28ドル)。暗号資産市場の好調を反映しました。
しかし5月、中国規制強化を受けてビットコインが約半値(6万ドル→3万ドル台)に暴落。コインベース株も328ドルから224ドルへ約32%下落しました。両者の値動きに連動性が明確となり、市場は「コインベース株=ビットコイン次第」と認識します。
2021年後半には再び市場が盛り上がり、11月ビットコインが約6万8000ドルと史上最高値を更新。コインベース株も同月343ドル近くまで回復し、強い相関関係を示しました。
2022年:バブル崩壊と連動した暴落
2022年は暗号資産の「冬の時代」となり、ビットコインは年初の4万7000ドルから年末に約1万6000ドル(約65%下落)。連動するようにコインベース株価も年初251ドルから11月に45.98ドルまで下落(年間約80〜86%減)しました。
下落局面の連動例としては以下が挙げられます。
- 1〜3月: FRB利上げ懸念やウクライナ情勢でリスク資産から資金流出。ビットコインが急落し、コインベース株も250ドル→150ドル台に下落。
- 5月: テラ(LUNA)崩壊でビットコインが3万ドル割れ。コインベース株も53.72ドルまで急落。
- 11月: FTX破綻によりビットコインが1万5000ドル近辺へ暴落。同月コインベース株は史上最安値の45.98ドルを記録。
また、下落時のコインベース株の変動率はビットコイン以上に大きくなる傾向がありました。これは業績見通しや市場不安がレバレッジ的に増幅され、株価のボラティリティが高まるためです。
コインベースの年間業績とビットコイン市場動向
以下は、ビットコイン市場の状況とコインベース年間売上高を整理した表です。
年度 | ビットコイン市場動向 | コインベース売上高 | 前年比成長率 |
---|---|---|---|
2021 | 強気相場(BTC最高値更新) | 78.3億ドル | +513.7% |
2022 | 弱気相場(価格急落) | 31.9億ドル | −59.3% |
2023 | 市場停滞(横ばい基調) | 31.0億ドル | −2.7% |
2024 | 回復局面(価格反発) | 65.6億ドル | +111.2% |
上記のように、コインベースの収益はビットコイン市場の動向とほぼ完全に一致しています。2021年の好況時は収益が急増しましたが、2022年の市場暴落時には大幅減収となりました。
結論として、ビットコイン相場が好調な時ほどコインベースは収益・株価とも好調であり、市場低迷期にはその逆が明確になる傾向があります。
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2023年:相関の一時的な崩れと再連動
2023年前半、ビットコイン市場は回復基調を示し、価格は1月の約1万6000ドルから4月には3万ドル台へ上昇。これに伴いコインベース株も年初の30ドル台後半から4月には80ドル超まで倍増し、両者の相関係数も再び0.9近くまで上昇しました。
しかし6月初旬、米SECがコインベースを提訴したことで株価が急落。一方でビットコイン価格は比較的安定していたため、短期間で相関係数がほぼゼロまで急落する異例の事態となりました。CoinDeskも「SEC訴訟など個別要因で相関が50%程度まで低下」と報じています。
この状況は長続きせず、同月中旬にブラックロック社がスポット型ビットコインETFを申請すると、ビットコイン価格が急騰。さらに、コインベースが同ETFのカストディ業務を担当する可能性が浮上し、株価も反発。これを機に両者の相関は再び上昇し、7月以降は約0.5程度で安定推移しました。
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2024年〜2025年中盤:再び強まった相関性と市場要因

2024年には米国および世界的な金融緩和(利下げ)期待を背景に、暗号資産市場と株式市場の相関性が過去最高水準に達しました。2024年9月には暗号資産市場と米国株式市場との相関係数が0.67に達し、コインベース株も従来以上に市場全体の動向に影響を受けやすくなりました。
実際、2024年後半には米FRBの利下げを追い風にビットコインが6万4000ドルを突破。コインベース株価もこれに連動し、2021年の上場来高値429ドルに迫るほど急騰しました。さらに2025年1月にはビットコインが10万ドル超えを果たした際、コインベース株価も300ドルを突破。しかし、2025年2月に米国の景気後退懸念と規制強化観測からビットコインが約17%急落した際、コインベース株は約30%の急落を記録。短期間で株価が201ドルまで落ち込みました。
総じて、2025年前半時点でもコインベース株とビットコイン価格は強く連動しています。2025年7月の90日相関係数も約0.5と、中程度ながら安定的な正の相関を維持。18日には米下院での暗号資産関連法案の可決を受けて過去最高の436ドルに急騰しました。特殊要因での一時的な相関低下を除けば、「ビットコイン市場の動きがコインベース株価に直接波及する」という構図は変わっていません。
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なぜコインベース株とビットコインは連動するのか?

コインベース株価とビットコイン価格が強く連動する背景には、以下の要因があります。
収益モデルがビットコイン市場に依存
コインベースの主な収益源は取引手数料であり、売上は取引量に直結しています。2024年時点でコインベースの全取引量の約32〜33%はビットコイン取引で占められていました。
- ビットコインが上昇 → 投資家の取引が活発化 → コインベースの収益増 → 株価上昇
- ビットコインが下落 → 取引需要が減少 → コインベース収益減 → 株価下落
こうした明確な因果関係が相関性の中心的要因となっています。
投資家心理:ビットコイン市場のプロキシとしての需要
コインベース株は伝統的な株式投資家にとって「ビットコイン市場の代理的な投資手段(プロキシ)」として利用されています。
- 米国株式市場では直接ビットコインに投資する商品が少なかったため、コインベースやマイクロストラテジー株が代替手段として人気化しました。
- 「ビットコインを直接買わずに暗号資産市場に投資したい」という需要が、コインベース株の価格に影響します。
コインベースのビットコイン保有資産
コインベースは自社資産として約10,766 BTCを保有(世界第4位の上場企業)しており、ビットコイン価格が変動すると同社のバランスシート評価額も動きます。これは株価に一定の影響を与える要素となっています。ただし、保有規模はマイクロストラテジーなどに比べると小さいため、影響は限定的です。
マクロ経済要因での連動
近年、暗号資産市場と株式市場の相関性が高まっています。特に米国の金融政策や景気指標など、マクロ経済の動きにビットコインとNASDAQ上場銘柄が連動する傾向があります。
- 2020〜2021年:金融緩和で株式市場とビットコインが同時上昇
- 2022年:インフレ・利上げで両市場とも同時下落
NASDAQ銘柄であるコインベースもこの流れに乗るため、ビットコインとの連動性がさらに強化されています。コインベースの24年のリサーチによれば、市場が混乱する局面では短期的にナスダックなどへの相関が高まることがあるものの、平常時の相関は低く、特に経済環境が安定すれば、ビットコインは伝統資産と異なる動きをする資産クラスとしての特徴を保つと考えられるとしています。
コインベース株のボラティリティ(変動率)の高さ

コインベース株は、ビットコイン価格よりも大きく変動する傾向があり、上昇局面ではより高いリターンを狙える投資手段として注目されています。
- 2023年1〜8月:BTCが約73%上昇した一方でコインベース株は約135%上昇
ただし下落局面ではその分下落幅も大きくなりやすく、ビットコインの値動きが増幅される形で株価に反映されます。
複合的要因と長期的見通し
以上の要因は常にすべて同時に影響するわけではなく、市場環境によってその重要度は変動します。個別の企業ニュース(大型提携、新製品発表)などにより、一時的に相関が低下するケースもあります。
しかし長期的に見ると、ビットコインが暗号資産市場の中心的存在であり続ける限り、コインベース株とビットコインの連動性は引き続き強固なものとなるでしょう。
相関が崩れる場合と注意点 – リスクと例外要因

コインベース株とビットコインは強く連動しますが、例外的に相関関係が崩れる場面があります。投資家は以下の要因にも注意が必要です。
規制・法的リスクによる分断
2023年6月、SEC(米証券取引委員会)がコインベースを提訴した際には、ビットコイン価格は安定していたにもかかわらず、コインベース株は急落しました。
- コインベース固有の規制問題が起こると、一時的にビットコイン価格との相関は低下します。
- 特定の暗号資産が証券と判断されるとコインベースは打撃を受けますが、商品扱いのビットコインには影響がないため相関が崩れる原因になります。
一方でBeInCryptoとのインタビューで、Coinbaseの広報担当者は、特に米国で明確な規制を支持してきたことを語っています:
Stand With Cryptoのようなイニシアチブを通じて、米国での革新を維持しつつ、裁判所での明確化を求め、議会と協力して超党派の立法を推進するための支援を動員している
Coinbase広報担当者
業績サプライズや企業戦略
四半期決算が市場予想と大きく乖離(アーニングサプライズ)すると、一時的に相関関係が乱れることがあります。
- 好決算ならビットコイン価格が横ばいでも株価が急騰、悪化ならビットコインが上昇しても株価が下落する可能性があります。
- ただし長期的にはビットコイン市場に収益が依存するため、基本的な連動性は維持されます。
他の暗号資産の影響
コインベースはビットコイン以外にも、イーサリアムやDeFi、NFTなど他の暗号資産取引から収益を得ています。そのため、特定のアルトコイン市場が急騰・暴落すると、短期的に相関が崩れるケースがあります。
- アルトコインのバブル期には、ビットコインが低調でも株価が上昇することがあります。
- ビットコインが取引の中心であるため、影響は限定的で一時的な場合が多いです。
株式市場全体の要因
コインベース株はNASDAQ市場の一銘柄として、市場全体のセンチメントに影響を受けます。
- NASDAQが暴落すると、ビットコインが安定していても株価が下落する可能性があります。
- しかし2022〜2023年の相場では、ビットコインとNASDAQは共に動く傾向が強く、極端に乖離することは少ない状況でした。
将来的にはビットコインがリスクオフ資産(安全資産)として買われるようになれば相関は弱まる可能性がありますが、現状はリスク資産としての性質が強いため、両者の連動性は高いままと考えられます。
相関性を投資判断にどう活かすか

コインベース株とビットコイン価格の相関は投資家にとってメリットとリスクの両面があります。
(1)暗号資産への間接投資手段としてのメリット
- 暗号資産を直接保有するリスク(ウォレット管理・ハッキング)を避け、株式市場経由でビットコイン市場の成長を取り込める利点があります。
- 米国の上場企業として財務情報が公開されているため、投資判断がしやすいメリットもあります。
(2)ポートフォリオ構築時の注意点
- コインベース株とビットコインの両方を保有すると、価格変動が同期するため分散投資効果が薄まります。
- 特にコインベース株はビットコインよりボラティリティ(変動率)が高いため、下落局面ではダメージが拡大するリスクがあります。
- リスク管理のためには資金配分の調整やヘッジ手段を検討すべきでしょう。
(3)コインベース株固有の特徴とリスク
- 将来的に配当が出る可能性があり、株式である以上完全に価値がゼロになるリスクは比較的低いです。
- コインベースはビジネスの多角化(ステーキング・NFTプラットフォームなど)により、将来的にビットコインとの相関が薄まる可能性もあります。
- 長期的には「暗号資産市場全体への投資」としてコインベース株を選ぶのか、「純粋なビットコイン投資」を選ぶのかを比較検討する必要があります。
(4)機関投資家の視点
- 一部のヘッジファンドはビットコイン関連株とビットコイン先物を使った裁定取引を行っており、相関関係を積極的に利用しています。
- ビットコイン現物ETFの登場は、コインベースに新たな収益機会をもたらす可能性があり、機関投資家もコインベース株を暗号資産市場全体への投資手段として評価しています。
(5)リスク管理と展望
- コインベース株の保有者は、常にビットコイン市場の動向を注視する必要があります。ビットコインのニュースは即座に株価に波及する可能性があります。
- 逆にコインベース株の動きはビットコイン市場の先行指標となることもあります。株価が先に動いた後、ビットコイン価格が追随することも過去に確認されています。
こうした相関性を意識しつつリスク管理を徹底することで、投資判断の精度を高めることが可能です。
コインベースの株価とビットコイン(BTC)価格相関を理解し投資判断に活かそう

コインベース株とビットコインの価格は非常に強く連動しており、投資判断にはこの相関の理解が欠かせません。ビットコインが好調なら取引が活発化してコインベースも儲かりますが、市場が冷え込めば株価も急落します。ただ、規制リスクや企業業績などで一時的にズレが生じることもあります。つまり、コインベース株を買うことは実質的にビットコイン市場の将来に賭けることであり、両者の特性を理解し、うまく組み合わせる必要があるでしょう。
よくある質問
いいえ、同じではありません。ただし、コインベース株価はビットコイン市場の影響を強く受けるため、間接的にビットコイン市場の動向に投資する手段として利用できます。
はい。SECの規制や企業業績のサプライズ、また他の暗号資産の影響により、一時的に相関が弱まることがあります。そのため、常に企業固有のリスクも意識する必要があります。
一般的に、コインベース株の方がボラティリティ(変動率)は高く、下落時のリスクはビットコインより大きくなる傾向があります。一方、企業の多角化により株価が安定する可能性もあります。
コインベース株を暗号資産市場への間接的な投資手段として活用したり、ポートフォリオ内のリスク分散やヘッジ戦略を立てたりする際に、相関性を意識することで投資判断の精度が向上します。
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