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インフレが進む中、退職後に対処する7つの方法

29 mins
記事 Ayotomiwa Oladotun

「上げ潮はすべての船を持ち上げる」という諺がありますが、残念なことに、上げ潮は船を浸水させることもあります。エネルギーコストや燃料油の減退が大きいにもかかわらず、インフレが上げ潮をさらに押し上げる可能性は大いにあります。結局のところ、失業率は上昇し続け、企業や個人の倒産は増え、電気料金は最高値に達し、ドル安が進み、インフレ懸念が高まるおそれがあります。

一般的に、インフレは誰にとっても悪夢です。もし労働者であれば、幸いなことに働いて得られる賃金によってインフレ対策ができます。しかし、退職してしまうと、頼れるのは自分だけになり、上司もなく、投資も一人で抱え込むことになります。では、どのように退職後の生活プランを立てれば、いかなる状況に置かれても利益を確保できるでしょうか。このページでは、インフレを考慮した退職後の生活を維持するいくつかの方法を探っていゆきます。

目次:

  1. インフレとは何か
  2. インフレがファイナンシャル・プランニングに与える影響
  3. インフレが退職後の生活プランに与える影響
  4. インフレは401kやIRAにどのような影響を及ぼすか
  5. インフレが進行する中、退職後に対処する7つの方法
  6. なぜインフレに備えた老後生活プランが必要なのか
  7. よくある質問

インフレとは何か

インフレとは、物価の平均水準が上昇し、購買力が低下することを表す経済用語です。長期的な平均は通常約3%ですが、毎年変動します。

インフレ率は様々なビジネス/経済指標に使用されており、FRB(米連邦準備制度理事会)による平均値は通常年2%程度ですが、これは随時変化しています。基本的に、インフレ率は消費者物価指数(CPI)-米国政府が毎月発表する物価の統計-によって決定されます。その他のツールには、FRBが使用するPCE価格指数があります。

表面上は、インフレが高まれば消費者が買うすべての値段が上がります。一年前に部屋のマットレスの下に入れておいた1ドルが、そのまま同じ場所にあるとしても、今日この日は一年前と同じ購買力は持っていません。それはインフレが起きたからです。商品価格は、企業経営者が意図的につり上げるケースもありますが、一般的には、商品やサービスの全般的な上昇は、インフレによって引き起こされます。

インフレは時間の経過とともに貨幣価値を低下させるため、個人は持てる資金を有効に活用し、適切なファイナンシャル・プランを立てる必要があります。

インフレがファイナンシャル・プランニングに与える影響

インフレを考慮せずに、綿密なファイナンシャル・プランを完成させることはできません。インフレは消費者の購買力を低下させ、各分野にさまざまな形で影響を及ぼします。

端的にいえば、インフレは、定収入のある個人や退職者などのリスク志向の低い人々にとっては、大きな悩みとなります。ただしその影響の度合いは、インフレに対する備えがどれだけできているかによります。充分にファイナンシャル・プランが立てられていれば、いつでも物価上昇を補うためにプラン内容を変更することができます。インフレが最も悪影響を及ぼすのは、それが予想していないときに起きる場合です。

購買力について

購買力は、ある時点で1単位の通貨で購入できる財やサービスの価値のことです。インフレは、商品のコストが徐々に上昇することで、購入できる量や質が低下するため、家計に影響を与えるおそれがあります。

たとえば、5年前の物価について考えてみましょう。50ドルで、今と比べて何個の商品が手に入れられたでしょうか?一般的に、物価は時間の経過とともに上昇しますから、これを自身のファイナンシャル・プランに織り込んでおく必要があります。通常、50ドルは5年後にはそれほど役に立つ価値にはなりませんから、こうした認識は重要です。

つまり、こうした基本的な流れを理解しておけば、将来インフレがひどくなったときの備えができるのです。

貯蓄について

銀行の預金金利がインフレ率を下回れば、投資に対するリターンがマイナスになり、損をすることになります。

例として、個人の保有資金が中央銀行の標準的な金利である年利2%の銀行預金口座にあり、その国のインフレ率が年3.5%だとすると、その個人が持つ資金は毎年1.5%の購買力を失っていることになります。しかし、3.5%の金利で資金を運用すれば、収支はプラスを維持し、保有資金の価値は変わりません。

全体としてみれば、資金の価値は時間に比例します。したがって、個人の貯蓄は、当該国の通常のインフレ率よりも高い率で投資運用されたときにのみ利益を得ることができるのです。 

ですから、それぞれの国のインフレ率の上昇に目を配り、それに沿ってファイナンシャル・プランを立てる必要があります。

インフレが退職後の生活プランに与える影響

退職後、毎月の収入源となるのは、社会保障と年金の2つです。実際のところ、こうした収入源でまかなえない支出は、取り崩して補わなければなりません。インフレが進むと、生活水準の維持のために引き出す必要のある金額の予定が立てられなくなります。

つまり、インフレの上昇によって、必要な引き出し額も増えるので、基本的な生活必需品を購入することが難しくなります。結局、退職時の収入でどれだけ生活を維持できるかという問題に、インフレは直接影響してくるのです。

社会保障

社会保障には、米国政府が米国民全員に支給するさまざまな給付があります。退職者には、生活費の約40%を支える給付金が提供されます。米国の場合、退職時の平均年齢は62〜67歳です。そして、これらの退職者の大多数がそうした給付金に依存していることはよく知られています。

ですが、右肩上がりのインフレが大きな懸念材料となっています。一般的に、40%分の金額では生活費の上昇と日毎に高くなる物価に対応できません。医療費、食費など、基本的に必要なコストが高騰すると、政府の給付金は退職者にとっては不充分です。米国高齢者連盟(The Senior Citizens League)の統計によると、2000年以降、支給される社会保障給付は購買力の30%分を賄えていないとのことです。こうした状況から、適切な退職後の生活設計が必要になります。

年金

年金は、将来の高齢に備えて貯蓄する主要な手段です。年金制度において、個人が払った金額は利益を得るために投資に回されますが、そのおかげで政府または雇用者側が将来年金を支払ってくれます。しかし、こうした年金資金は、貯蓄や投資においても、やはりインフレの影響を受ける可能性があることに注意しなければなりません。

たとえば、年間3万ドルの年金をもらい、10万ドルの年金貯蓄があり、残高に対して年率5%の投資リターンが期待できたと想定します。その場合、オンラインの退職資金計算ツール(retirement calculator)を使って、退職後にインフレ率が平均1%、3%、5%のとき、年金貯蓄が何年続くか調べてみましょう。

平均1%のインフレなら約7年、平均3%のインフレなら約4年半で年金はゼロになります。しかし、年5%のインフレ率では、貯蓄は3.5年しか持ちません。ただ、これらの値は年金所得によって変わってくるので注意が必要です。

米国の州や自治体によっては生活費を負担して、インフレの影響と釣り合うように年金支給額を調整しているところもありますが、個人年金では生活費の調整は対象外なので、その点を留意する必要があります。

インフレは401kやIRAにどのような影響を及ぼすか

退職にかかる預金(退職勘定)を効果的に用いる際に、最も重要なことは、信頼できる退職プランにどのように投資するか、です。この点では、おそらく401k/IRAプランが最も一般的に受け入れられています。

IRAは個人の退職勘定ですが、一方401kはほぼ内容が同じで、従業員を抱える組織が使う専門用語を使用しているという違いだけです。

一般的に、従来のIRA/401k勘定に個人が預金を積み立てると、税金が免除されます。これは、その積立投資が、それを引き出す準備が整うまで、課税されずに毎年増え続けることを意味します。しかし、退職時に退職勘定を受け取る準備が整うと、インフレ率の上昇と税金の影響を受けることになります。

たとえば、現在のインフレ率が4%で、401kのROI(投資収益率)が5%の場合、得られる純利益は1%になります。一方、401kのROIが3%であれば、純利益は-1%となり、損失が生じます。つまり、インフレに打ち勝つには、それを上回る投資が必要なのです。401kの退職勘定をいつまで続けるかは、個人がリタイアメントにどれだけ近づいているか、およびその投資戦略によって異なります。

ここでは、退職資金をインフレから守るための方法をいくつか紹介します。

インフレが進行する中、退職後に対処する7つの方法

1. ポートフォリオを分散する

インフレに対処するには、インフレを回避し、購買力を強化できる資産に投資して、ポートフォリオを充実させる必要があります。若い投資家なら、これは株式主体のポートフォリオへ注力することになるでしょうが、リスク志向が低い退職者にとっては、商品や債券などのインフレ対策資産に目を向けることが大事です。

ポートフォリオを分散させる一方で、リスクを長期または短期の目標に合わせます。たとえば、あなたが50歳の女性で、すでに401kに5万ドル投資しており、退職に向けて収入を増やすために手持ち資金を分散させたいとします。その場合、退職金の引き出しが可能になるまでの残り数年間、潜在的な市場機会を探ることにすればよいのです。

たとえば、最も成長が期待できる株式にポートフォリオの40%程度を投資するとよいでしょう。同様に、国債に30%、暗号資産に20%、有価証券に10%投資することも可能です。リタイヤメントの時期が近づいたら、有価証券を増やし、株式を減らして、リスクを最小限に抑えることができます。

リスクの低い債券とリスクの高い株式への投資を組み合わせ、また株式、商品、暗号資産に分散投資すれば、インフレの進行や特定産業の長期的な暴落にも備えられます。

2. 主な出費を減らす

固定収入があるなら、退職後の緊急事態に資金が足りなくなるのを防ぐ確実な方法のひとつは、支出を減らすことです。ですから、支出を減らして、より多くの貯蓄を始めることが重要です。支出を減らすことは、退職後の不要な緊急事態から身を守るだけでなく、文字通り、富を築くための入り口でもあります。

一般的に、予算を立てずにお金を使うのはとても簡単なことです。出費を最小限に抑えるには、月々の限度額を決めて現金のみで決済するのが効果的です。必要に応じて、月収の5%程度を現金でまかなえばよいのです。これには、外食、娯楽、雑費といったものが含まれます。毎週現金を取り出し、使い切ったら次の週まで待ちます。そうすれば、間違いなく浪費癖が抑えられ、より多くの貯蓄ができるようになります。

3. 転居を検討する

定年退職は、人生における大きな転機の一つです。そしてそれは、日常生活、個人的な目標、金銭面など、人生のあらゆる側面に影響を与える大きな変化を伴います。毎月の収入は、年金か社会保障費かにかかわらず、減少してゆく可能性が高く、そうなれば生活水準を下げざるを得ないことにもなりえます。

こうした状況で最も効果的な手段は、インフレ率や生活水準が低い他の都市への転居を試みることです。たとえば、年俸10万ドルで、生活水準が非常に高いニューヨークに滞在していると、収入が減る可能性が高いので、生活費の安い別の都市への移住を挑戦してみるのもいいでしょう。そうすれば、光熱費、エネルギー費、食費を節約できます。

4. 徹底的な予算分析を行う

自身の経済状態を把握し、決して予算を超えないようにすることが常に重要です。退職後、または退職間近になると、集中的な予算分析が極めて重要になります。多くの場合、退職者は収入源が少ないので、予算を立てる際には戦略を練る必要があります。生活水準を完全に崩す必要はありませんが、ある程度の調整は必要です。

綿密な予算分析には、経費などの些細な費用を検証することも含まれます。まず、固定費と変動費に分類して必要事項を確認します。

さらに、保険契約も調べます。生命保険がまだ必要かどうかを判断し、保障を適切に見直す必要があります。生命保険に加入している場合は、利用可能期間の延長を試みてください。

さらに、退職時に、退職勘定からの資金をIRAが指定した制限内に留めるようにしてください。そうすることで残りの積立勘定が現金価値を持つようになります。これは、あなたがより少ない収入を申し立てることになりますので、税金やインフレ対策として投資または貯蓄に回すことができます。

5. 社会保障給付の開始を遅らせることを検討する

前述の通り、社会保障給付のコンセプトは単純で、一定の年数働き、制度に寄与することです。そうすることで、政府から毎月の退職給付金が支給されます。しかし、こうした給付は固定されているわけではないので、うまく戦略を立てることで、収入を最大限に増やす方法があります。

実際には、62歳という早い時期に社会保障給付を申請すると、受給額が減ります。完全な給付は、通常66-67歳または70歳の完全退職年齢で行われます。経験則では、遅くなるほどより多くの給付金が受給できます。受給開始を遅らせた方が、回収までの期間が短くなると予想されるので、毎月の収入が増えるという仕組みです。

たとえば、完全退職年齢での支給額が、2022年の平均給付額である$1,666/月とします。2022年に62歳でリタイアした場合、その75%、つまり約$1249/月が受け取れることになります。

67歳(2027年)まで給付を待つとどうなるのでしょうか。注意すべき点は、給付にはインフレ調整が毎年あることです。つまり、67歳の場合、2022年適用の$1666/月の給付からスタートするのではなく、5年間の待機期間中のインフレ分を調整して基本給付が増額されることになります。

このように、給付開始期間を遅くすると、生活費の上昇があっても実質的に収支は均衡します。

6. 退職後所得の必要項目を算定する

退職後所得でまかなえる必要項目を正確に査定し、インフレに備えるには、いくつかのステップと計算が伴います。

例をあげると、1960年から2021年までの平均インフレ率が年率3.8%で推移したように、生活費は時間の経過とともに上昇するものです。それとともに、退職後の経費も毎年変化するとみられます。

そこで、医療や保険など、いくつかの変動費に優先順位をつけておくことが大切です。これらの変動費に備えるために、計算上は柔軟な幅をもたせておきましょう(この点、保守的であることは良い点です)。

7. 医療コストの計画を立てる

老後に病院を転々として、予定外のことに出費を余儀なくされる生活は避けたいものです。医療費にかかるプランを立てること、また保険に加入しておくことは、最重要課題です。なぜなら、もし基礎疾患を抱えていたり、あるいは毎日の糖度チェックが必要だったりすると、日々の出費を強いられることになるからです。

定年退職のときに貯蓄が少ないと想定される場合、どう対処できるのか?答えは保険プランにあります。医療保険を選ぶことで、経済的負担を大きく克服することができます。

保険の中には、インフレに対応しているものもあります 。たとえば、メディケア(Medicare)とインデムニティ・ヘルス(Indemnity Health)の保険プランでは、最良のオプションが用意されており、老後の貯蓄を守り、巨額の医療費がかからずに済みます。

なぜインフレに備えた老後生活プランが必要なのか

建物の構造を想像してみてください。基礎があって、屋根、側壁があります。自分のファイナンシャル・プランも、重要なパーツで構成されていると想像してみてください。それらは、資産、負債、投資、そして貯蓄です。貯蓄を考慮し、これまで見てきた方法で退職後のプランを立てることで、インフレによる購買力の低下から身を守り、自信をもって老後生活を楽しむことができるようになります。

注)この記事は財務的なアドバイスではありません。投資や投資に関する決定をする前に、ご自身で調査をお願いします。

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よくある質問

ー インフレは退職後の生活にどのような影響を与えるのでしょうか?

平均的なインフレ率は年2%程度と言われています。つまり、固定収入のあった退職者が、退職後に長期にわたり購買力を維持するには、より多くの資金が必要になるということです。

ー 退職者はインフレから恩恵を受けることはありますか?

インフレは、退職者の貯蓄を切り崩し、購買力を低下させるという意味で、退職者に大きな影響を与えます。これは、生活水準が下がるというマイナスの結果を生みます。

ー インフレから退職後の生活を守るにはどうしたらよいでしょうか?

インフレ保護債への投資が、インフレから保有資金を守るリスクの少ない方法としてあります。その他の方法としては、ポートフォリオを分散化することや、経費を削減することが挙げられます。

ー 退職にあたってインフレ対策はどのくらい見込んでおけばいい?

一般的には、年間3%程度のインフレ率を想定しておくと、より安全な生活を送ることができます。

ー なぜインフレは定年退職者にとってつらいのか?

定年退職者の多くは固定収入を得ているため、インフレは彼らの購買力を低下させ、生活水準に支障が出るという点で最も大きな影響を与えます。

ー インフレは401K制度にどのような影響をもたらすか?

インフレになると、商品の価格は跳ね上がります。また、401kやIRAを利用している退職者にとっては、長期的なインフレが起きると、株式やその他の投資がその影響を避けられなくなくなるので、投資に破綻をきたす恐れもでてきます。

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Takashi Higashi
国際広報、海外の先端技術調査、海外企業との提携等をこれまで行ってきました。ここ数年、暗号資産に関心を持ってウオッチしています。
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