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マイクロストラテジー株価とビットコインの相関性

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著者:
Shota Oba

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編集:
Shigeki Mori

06日 12月 2024年 17:40 JST
Trusted-確かな情報源

マイクロストラテジー(MicroStrategy)は、ビットコイン市場における革新的な企業戦略で注目を集めています。2020年に開始した大規模なビットコイン投資により、同社の株価(MSTR)はビットコイン価格との強い相関性を持つようになりました。同戦略は、ビジネスインテリジェンス分野で培った地位を基盤に、ビットコインを財務戦略の中心に据える大胆な試みです。特に、同社の株価がビットコインの変動と連動する現象は、投資家にとって新たな投資手段として注目されています。

本稿では、マイクロストラテジーの株価とビットコインの関係を探り、その背景やリスク、そして将来の可能性について分析します。

ビットコインの機関投資家マイクロストラテジーとは

マイクロストラテジー(MicroStrategy)は、アメリカに本社を置くビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェア企業です。1989年に設立され、データ分析や企業向けの意思決定支援ツールを提供してきた同社は、近年、ビットコイン(BTC)への積極的な投資で注目を集めています。同社の主要製品は以下の3つに分類されます:

  • ビジネスインテリジェンスプラットフォーム
  • クラウドサービス
  • アプリケーション開発ツール

これらの製品は、企業がデータから価値ある情報を引き出し、ビジネス意思決定を最適化するための支援を行います。MicroStrategyの顧客基盤は広範で、金融サービス、小売業、ヘルスケアなど、さまざまな業界の企業が含まれています。

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しかし、世界のビジネスインテリジェンス市場での競争が激化する中、MicroStrategyが直面する課題も増加しています。Microsoft、Oracle、Tableauといった強力な競合他社に直面し、MicroStrategyの市場シェアは徐々に縮小しています。この状況に対処するため、同社は新たな成長分野を模索し始めました。

マイクロストラテジーのビットコイン投資戦略

2020年8月以降、MicroStrategyはビットコインへの多額の投資によって、世界の金融市場で注目を集めるようになりました。その保有量は本稿執筆時点で同社は38万6700BTCを約220億ドルで取得しており、企業として世界最大級を誇ります。これはビットコインの総供給量の約1.9%に相当し、同社の保有するBTCはバランスシートの約99.5%を占めています。

この購入を実現するため、約90億ドルの債務を発行しており、中にはゼロ金利のものもあります。これらのBTC保有がこの債務の担保になっている場合、BTC価格が大幅に下落すると返済が困難になる可能性があります。また、46億ドルの株式発行を通じても資金調達を行っています。平均購入価格が約5万6500ドルであるため、ビットコイン価格の上昇が同社の時価総額に大きな影響を与えています。

この戦略は、インフレリスクを回避し、株主価値を向上させる目的で導入されました。同社の元CEOであり現エグゼクティブチェアマンのマイケル・セイラー氏は、「ビットコインはデジタルゴールド」と称しています。マイクロストラテジーのビットコイン保有は、同社の財務戦略だけでなく、企業文化にも大きな影響を与えています。さらに、暗号資産市場全体においてもビットコインの普及促進に寄与しており、機関投資家や一般企業がビットコインを採用する流れを後押ししています。

関連記事:MicroStrategy、MSTR急騰で米上位100社入り

ビットコインとは?

ビットコイン(BTC), リップルXRP

ビットコインは、2008年にサトシ・ナカモトと名乗る匿名の人物またはグループが発表したホワイトペーパーで初めて提唱された仮想通貨(暗号資産)です。その翌年の2009年にはネットワークが正式に稼働を開始し、最初のブロック(ジェネシスブロック)が生成されました。この技術革新により、従来の金融システムとは異なる分散型デジタル通貨としての基盤が築かれました。

ビットコインの大きな特徴は、中央銀行や政府の管理を受けず、ユーザー同士が直接取引を行える点にあります。この分散型システムは、ブロックチェーン技術によって支えられており、全ての取引履歴が透明かつ改ざん不可能な形で記録されます。さらに、ビットコインの供給量は2100万枚に厳密に制限されており、この希少性が価値の源泉の一つとされています。初期はニッチな存在でしたが、近年では投資対象や決済手段として注目を集め、取引所や企業決済での利用が拡大しています。

中央集権型通貨との違い

ビットコインは従来の中央集権型通貨とは大きく異なります。通常の法定通貨(例:円、ドル)は中央銀行や政府が発行・管理し、その供給量や政策は中央集権的に決定されます。一方、ビットコインは管理者が存在せず、ネットワーク参加者全員が平等に取引を承認・検証します。この仕組みにより、以下のような利点が生まれます。

  • 迅速な取引: 銀行や決済機関を介さないため、遅延が抑えられます。
  • 越境送金: 国境を越えた送金も行えるため、グローバルな利用に適しています。
  • インフレ耐性: 発行量が2100万枚に制限されているため、法定通貨に見られるようなインフレリスクが低減されます。

このように、ビットコインは既存の金融システムに対する革新的な代替手段として注目され、個人や企業の資産保全や取引手段として幅広く利用されています。

関連記事:ビットコインの仕組みをわかりやすく解説

マイクロストラテジーのビットコイン購入履歴

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日付購入BTC数量購入額総BTC保有量総保有額
2024年12月2日15,400$1.5B402,100$23.41B
2024年11月25日55,500$5.4B386,700$21.91B
2024年11月18日51,780$4.6B331,200$16.51B
2024年11月11日27,200$2.0B279,420$11.91B
2024年9月20日7,420$458.2M252,220$9.91B
2024年9月13日18,300$1.11B244,800$9.45B
2024年8月1日169$11.4M226,500$8.34B
2024年6月20日11,931$786.0M226,331$8.33B
2024年4月1日 – 5月1日164$7.8M214,400$7.538B
2024年3月19日9,245$623.0M214,246$7.53B
2024年3月11日12,000$821.7M205,000$6.91B
2024年2月26日3,000$155.0M193,000$6.09B
2024年2月6日850$37.2M190,000$5.93B
2023年12月27日14,620$615.7M189,150$5.90B
2023年11月30日16,130$593.3M174,530$5.28B
2023年11月1日155$5.3M158,400$4.69B
2023年9月24日5,445$147.3M158,245$4.68B
2023年7月1日 – 7月31日467$14.4M152,800$4.53B
2023年4月29日 – 6月27日12,333$347M152,333$4.517B
2023年4月5日1,045$29.30M140,000$4.170B
2023年3月27日6,455$150.00M138,955$4.140B
2022年12月24日810$13.65M132,500$4.027B
2022年12月22日-704$11.8M131,690$4.012B
2021年11月1日 – 2022年12月21日2,395$42.8M132,395$4.024B
2022年9月20日301$6M130,000$3.981B
2022年6月28日480$10M129,699$3.975B
2022年2月15日 – 4月5日4,167$190M129,218$3.965B
2022年1月1日 – 1月31日660$25M125,051$3.775B
2021年12月30日1,914$94.2M124,391$3.750B
2021年11月29日 – 12月8日1,434$82.4M122,478$3.655B
2021年11月28日7,002$414M121,044$3.573B
2021年9月13日8,957$419M114,042$3.159B
2021年6月21日13,005$249M105,085$2.740B
2021年5月18日229$10M92,079$2.251B
2021年5月13日271$15M91,850$2.241B
2021年4月5日253$15M91,579$2.226B
2021年3月12日262$15M91,326$2.211B
2021年3月5日205$10M91,064$2.196B
2021年3月1日328$15M90,859$2.186B
2021年2月24日19,452$1.026B90,531$2.171B
2021年2月2日295$10M71,079$1.145B
2021年1月22日314$10M70,784$1.135B
2020年12月21日29,646$650M70,470$1.125B
2020年12月4日2,574$50M40,824$475M
2020年9月14日16,796$175M38,250$425M
2020年8月11日21,454$250M21,454$250M
出典:BitBO

MSTR株の急騰背景は?

SAXOの投資ストラテジスト、コーエン・フールルベケ氏は同社のMSTR急騰の背景を以下のように分析しています

1. レバレッジETFの影響

2024年8月、MSTR株価に連動する初のレバレッジ型シングル株ETFが取引を開始しました。これらのETFは、MicroStrategy株に2倍のレバレッジをかけたエクスポージャーを提供しており、投資家から大きな資金流入を引き寄せました。その結果、MSTR株に対する需要が急増しました。2024年11月時点で、これらのETFはMicroStrategyの時価総額の約9%を占めています。

2. フィードバックループ(循環的な動き)

MicroStrategyの戦略は、同社株価の上昇をさらに加速させるフィードバックループ(循環的なダイナミック)を生み出しています。この仕組みは以下のように進行します:

  1. 同社が株式や債券を発行し、ビットコインを購入する。
  2. 購入したビットコインがビットコイン市場の価格を押し上げる。
  3. ビットコイン価格の上昇がMSTR株価の上昇を促進する。
  4. 上昇した株価を利用して、さらに株式を発行し、追加のビットコインを購入する。

このような戦略は、ビットコインのブル(上昇)市場ではMSTR株価のパフォーマンスを劇的に引き上げる一方で、ビットコイン価格が下落に転じた場合には大きなリスクを伴います。

マイクロストラテジー株とビットコインの相関性

出典:MSTR-tracker.com

MicroStrategy(以下、MSTR)が2020年にビットコイン投資戦略を導入して以降、同社の株価とビットコイン価格との間には非常に強い相関関係が生まれました。それ以前のMSTR株価は、主に同社の基幹事業であるビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェア事業の業績によって動いていました。しかし、大量のビットコインを保有する方針を採用してからは、株価がビットコイン市場の動きに引っ張られるようになったのです。

ビットコイン保有がもたらす株価の変動要因

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MicroStrategyの大規模なビットコイン投資は、同社の株価に新たな側面を加えました。株価は従来のBI事業だけでなく、ビットコイン市場の変動を反映する指標としても機能するようになりました。これは投資家にとって、MSTRがソフトウェア企業であると同時に、事実上ビットコインの代替的な投資手段でもあることを意味します。特にトランプ大統領再選後に同社株価は急騰し、これまで過去5年間で1995%以上の上昇を記録しています。

統計が示す高い相関性

複数の統計データによれば、MSTRが初めてビットコインを購入した2020年8月以降、同社株価とビットコイン価格の相関性は劇的に高まりました。coinglassのリサーチによれば相関係数は0.7から0.9の範囲で推移しており、これは両者の動きが非常に似ていることを示しています。相関係数とは、2つのデータセット間の関係の強さを示す値で、1に近いほど強い正の相関、-1に近いほど強い負の相関を意味します。0は相関がないことを示します。

出典:コインデスク

また、コインデスクが直近12カ月間の日次終値を基に分析したデータによれば、MSTR株価とビットコイン価格のピアソン相関係数とスピアマン相関係数は約65%を記録しました。

  • ピアソン相関係数は、2つの変数の線形関係を測定する指標で、直線的な関連性の強さを示します。
  • スピアマン相関係数は順位を基にした非線形な関係を測定し、極端な値(外れ値)の影響を受けにくい特徴があります。

相関関係を左右する要因

ただし、この相関性は完全ではありません。MSTRが年間約5億ドルを稼ぎ出す収益性の高いBIソフトウェア事業を持つことも株価に影響を与えています。しかし、同社がビットコイン市場に対してレバレッジ(借入を利用した投資の増幅効果)をかけていることで、この相関がより顕著になっています。このレバレッジの影響により、MSTR株価のボラティリティはビットコインの約2.5倍にも達しています。

MicroStrategy、ビットコイン54億ドル分を再び購入=株価は80%急騰

今後の見通し:21/21計画:MicroStrategyの戦略的BTC累積計画

出典:マイクロストラテジー

MicroStrategyは2024年第3四半期の決算報告で「21/21計画」を発表しました。この計画では、2025年から2027年にかけて420億ドルを調達し、約466,667BTC(現在の価格基準で計算)を取得することを目指しています。これはビットコインの供給量全体の約2.2%に相当します。

資金調達の概要

  • 期間:2025年〜2027年
  • 調達方法:株式発行と債券発行を均等に分配
  • 年間計画
    • 2025年:100億ドル
    • 2026年:140億ドル
    • 2027年:180億ドル
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パフォーマンス測定と目標

MicroStrategyはBTC利回り指標を開発し、新たな株式発行に対するビットコイン取得効率を追跡します。2025年から2027年にかけて、1株あたり106〜110BTCを保有することを目標としており、2024年時点ではすでに118BTCを超えています。また、年率6〜10%のBTC利回りを維持する方針です。

この計画は、MicroStrategyのビットコイン投資戦略をさらに拡大し、長期的な利益創出を目指した野心的な取り組みです。

マイクロストラテジーに追従する企業

MicroStrategyの影響で、ビットコインを主要な財務資産として採用する企業が増えています。フランスのThe Blockchain Groupは94万9000ユーロで15BTCを購入し、シンガポールのGenius Groupは90%以上の準備金をビットコインで構成する予定です。さらに、Microsoftもビットコイン投資を検討しており、株主の投票結果は12月の総会で発表されます。

さらに国内企業のメタプラネットは、ビットコインを主要な財務資産として採用し、資産の多様化と価値保全を目指しています。24年11月28日、同社は新株予約権を発行し、最大約95億円の資金調達を計画しました。その大半である約91億6700万円を、12月から2025年6月にかけてのビットコイン購入に充てる予定です。同社の本稿執筆時点でのビットコイン保有量は約1142.289BTCとなっています。

MSTR投資において注意すべきこと

Michael Saylor, PDG de MicroStrategy

ビットコインマガジンおよび、エコノミストのアンセル・リンドナー氏はMSTRへの投資のポイントを以下のように説明してます:

MSTRの活用方法

  • ビットコイン投資家向け: 既にビットコインに多く投資しており、レバレッジを追加したい場合、MSTRが有効です。CEOのマイケル・セイラー氏は「手数料なしのビットコインのレバレッジ投資」と評価しています。
  • 分散投資の補完: ビットコイン関連株(マイニング企業、チップメーカー、取引所など)の低ベータリスクを補う手段としてMSTRを活用できます。
  • 市場の橋渡し役: MSTRは株式市場に関連しており、特にS&P 500に組み込まれる場合、ビットコインと株式市場をつなぐ存在になります。

リスクと留意点

  • 高いベータ値は、MSTRがビットコインへの直接投資よりリスクが高いことを示しています。
  • リセッション(景気後退)では、ビットコインやMSTRが影響を受ける可能性があり、MSTRは特にその影響を直接的に受けやすいです。ただし、ETFや新たな需要により、今回はビットコイン価格の変動が抑えられる可能性もあります。

まとめ:今後のマイクロストラテジーの戦略に注目

マイクロストラテジー、ビットコイン

MicroStrategyは、ビットコインへの積極的な投資戦略を通じて、従来のビジネスインテリジェンス企業から「ビットコインを保有するプラットフォーム」へと進化しました。膨大なBTC保有量や相関性の高いMSTR株の動向は、同社が単なるソフトウェア企業に留まらない存在であることを示しています。同社の「21/21計画」や資金調達戦略は、さらに多くのビットコインを保有し、長期的な成長を目指すことを目標としています。

一方で、ビットコイン市場の変動性やレバレッジ戦略のリスクも大きく、特に景気後退局面では慎重なリスク管理が求められます。MicroStrategyの今後の動向は、暗号資産市場の方向性や企業投資の新たなトレンドを占う重要な指標となるでしょう。

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