暗号資産ウォレットには様々な種類やタイプがありますが、ユーザー自身が秘密鍵を管理するウォレットとして、ノンカストディアルウォレットがあります。代表的なウォレットとしては、Trust WalletとMetaMaskが挙げられます。この2つのうちからウォレットを選ぶとすれば、どちらが良いでしょうか?これらのノンカストディアルウォレットはいずれもその主な目的は同じですが、機能はそれぞれ異なります。この記事では、セキュリティ面やユーザーエクスペリエンスなどの多くの観点から、Trust WalletとMetaMaskを比較し、ノンカストディアルウォレットとしての両者のメリット、デメリットを説明します。
Trust Wallet(トラスト・ウォレット)とは?
Trust Walletは、様々な暗号資産の取引、保管、売買、送受信が簡単に行なえ、特定の暗号資産をステーク(預け入れ)して報酬が得られる暗号資産ウォレットです。
また、携帯機器やデスクトップPCから直接NFTを保管、売買できる安全なNFTウォレットとしても使えます。
Trust Walletはノンカストディアルウォレットであるため、Trust Walletのユーザーは秘密鍵を自分自身で管理し、そのセキュリティについても自分一人で責任を負うことになります。ユーザーは、KYC(本人確認)手続きや第三者による認証を必要とせず、シームレスに取引が行えます。
Trust Walletは2017年11月に、ビクター・ラドチェンコ氏によって設立されました。その後、バイナンスにより2018年7月に買収され、以来、バイナンスにおける公式の分散型ウォレットとなっています。
このウォレットは、ユーザーフレンドリーで安全、そして使いやすいことで広く知られています。DAppブラウザを搭載したこのウォレットは、PancakeSwapやSushiSwapといった人気の分散型プラットフォームへアクセスする、橋渡し的な役割を果たしています。
Trust Walletのユニークな機能の1つは、中央集権型取引所のアカウントを接続し、暗号資産を転送する機能です。この機能により、ユーザーのTrust Walletアカウントと、バイナンスやコインベースなどの対応する中央集権型取引所のアカウントとの間に通信チャネルを確立しています。ユーザーにとっては、複数のプラットフォームでデジタル資産が管理できる便利な方法です。
MetaMask(メタマスク)とは?
MetaMaskは、暗号資産の保管、売買、取引、送受信ができるノンカストディアルウォレットです。多くのブロックチェーン上での幅広い資産の保管とやり取りを特徴とするTrust Walletとは異なり、MetaMaskはイーサリアムのブロックチェーン上に構築されたトークンと暗号資産のみに対応しています。
MetaMaskは、ユーザーがブロックチェーンのアプリケーションに接続し、分散型ウェブを安全に利用できる多様なソリューションを提供しています。また、Google Chrome、Firefox、Opera、Braveなどの人気ブラウザにおいてモバイルアプリやブラウザ拡張機能としても使用できます。ユーザーは、ウォレットの秘密鍵を自身で保管します。
ユーザーは、MetaMaskを使用すると、デスクトップのブラウザから直接、バイナンススマートチェーンや イーサリアムを含む様々なブロックチェーンに簡単に接続できます。このウェブブラウザ拡張機能は、分散型金融(DeFi)プラットフォームや非代替性トークン(NFT)マーケットプレイスなど、幅広い分散型アプリケーション(DApps)へ接続できるため、他には見られないユーザーエクスペリエンスが得られます。
MetaMaskウォレットは、アーロン・デイビス氏による2016年の創業以来、1,000万人を超えるアクティブユーザーを魅了してきました。このウォレットはまた、多様なERC-20トークンに対して質の高いサポートを行なっています。
Metamaskの主な強みは、そのマルチアカウントとマルチネットワーク管理機能にあります。ユーザーは、手軽に様々なイーサリアムベースのネットワークを切り替えて、異なるプラットフォーム上で資産管理ができます。
このウォレットにはまた、便利なスワップ機能(取引所を通さずに他の暗号資産へ交換できる機能)が付いており、ユーザーはガス代のカスタマイズができ、トランザクションにかかる費用を自分で調整できます。このように、デジタル資産の管理において強力かつ多目的に使えるツールとなっています。
Trust WalletとMetaMaskの類似と相違点
MetaMaskとTrust Walletには、多くの共通点がありますが、大きな違いもいくつかあります。以下にその違いを説明します。
ユーザーインターフェースとユーザーエクスペリエンス
Trust Walletはモバイルウォレットとしてスタートし、また2022年11月14日にブラウザ拡張機能をリリースしました。この拡張機能は、分散型アプリケーション(DApps)として通常のパソコン画面向けに設計されているため、シームレスなWeb3エクスペリエンスが得られます。ユーザーはモバイル機器とデスクトップ間をスムーズに行き来できます。
ユーザーは、Trust Walletのマルチチェーンモバイルアプリを使えば、暗号資産の購入、ネイティブコインのステーキング、スワップ、保管、NFT取引など、忙しい合間にも暗号資産の管理が簡単に管理できます。加えて、インターフェースの構造がシンプルなため、モバイル機器上でのユーザーのコインやNFTの保管か簡単にできます。
これに対し、MetaMaskは当初、ブラウザ内の拡張機能としてスタートしましたが、2020年9月3日にモバイルプラットフォームにもサポートを広げました。ユーザーは、MetaMaskのモバイルウォレットにより、セキュリティや使いやすさを損なわずに、ブロックチェーンベースのアプリケーションとのやり取りが簡単にできます。またユーザーは、鍵の保管庫、安全なログイン、トークンウォレットも利用できます。その他にも、デジタル資産の閲覧や取引、暗号資産ローンや残高の管理、ブロックチェーンベースのゲームプレイ、メッセージの署名、取引の送信、NFTの保存が行なえます。
Trust Walletは、使いやすさとユーザーエクスペリエンスにおいて、MetaMaskよりもやや初心者に優しいと言えます。また、バイナンスとシームレスに統合しているため、暗号資産の初心者にとってはコインやトークンの購入・保管には最高の選択肢です。
セキュリティ
セキュリティ面では、MetamaskとTrust Walletはともにオープンソースソフトウェアを使用しています。多要素認証やマルチシグネチャーのサポートはどちらも行っていません。
これらのウォレットは個人情報の保管はしていません。ユーザーアカウントは、ウォレットのインストールとセットアップの際に、ユーザーが入力するパスワードまたはモバイルデバイスの生体認証によって保護されます。
両ウォレットとも、セキュリティ強化のために、ユーザーは自分のモバイルアプリ用に「Touch ID」または「Face ID」を使用できます。加えて、オートロック時間を設定して、ウォレットへの不正アクセスを制限できます。
Trust WalletとMetaMaskは、全体的によく似たセキュリティ機能を備えており、ユーザーは自分のデジタル資産のセキュリティをかなりコントロールできます。
ただし、どちらもインターネット接続が必要なデジタル暗号資産ウォレットであるホットウォレットです。このため、両方とも利便性が高い反面、フィッシング詐欺に遭いやすいという欠点があります。
悪意のある攻撃については、MetaMaskは集中的に大規模なハッキングを受け、ユーザーの資金が盗まれるような事態に陥ったことはありません。一方、Trust Walletは2023年1月、イタリアの組織犯罪集団の仕業とされるソーシャルエンジニアリング攻撃で、400万ドル流出の被害を受けたことがあります。
Ledgerのセキュリティ専門家チームは、上記のTrust Walleの拡張機能のリリース(2022年11月)からわずか3日後に、致命的なセキュリティ上の欠陥を発見しました。チャールズ・ギルモット氏はTwitterのスレッドで問題の深刻さを説明しています:
「攻撃者は、Trust Walletの拡張機能の脆弱性を突いて、ウォレットの資金をすべて流出できました。所有者は(ウォレットを保管している)機器に触ってもいません。ハッカーは、(所有者の)アカウントアドレスを知ってから、その秘密鍵を計算して割り出し、すべての資金にアクセスできました。
Ledger社チャールズ・ギルモットCTO(Twitter)」
MetaMaskのセキュリティは、これまでのセキュリティ記録を見る限りでは、Trust Walletより優れていると言えます。
Trust WalletとMetaMaskがサポートしているコインとトークン
Trust WalletとMetaMaskは、イーサリアムネットワーク上の様々な暗号資産をサポートしていますが、Trust Walletの方が幅広い資産をサポートしています。Trust Walletは、ERC20トークン全部と70種類のブロックチェーンにまたがる数千の資産に対応しています。一方、MetaMaskはイーサリアムベースのトークンのみに対応していますが、ラップドビットコイン(WBTC:ビットコインをイーサリアムネットワークに送信し、イーサリアムのDeFiシステムでビットコインが使用できる方法)のようなラップドト-クンを使ってビットコイン等の資産を保管できます。
Trust Walletはまた、サポートしている資産が幅広いだけでなく、暗号資産の交換(スワップ)機能も付いています。一方、MetaMaskでは、トークンを交換するには分散型取引所(DeX)への接続が必要です。経験豊かな暗号資産トレーダーはこれをシームレスに感じるかもしれませんが、初心者には難しい操作になるかもしれません。
サポートしている暗号資産の面から見ると、Trust Walletのマルチブロックチェーンサポートと資産管理機能の方が、MetaMaskのサポートより優れています。
Trust WalletとMetaMaskの手数料
MetaMaskは無料で使用できます。ただし、このウォレットでは、主としてガス代という形で、ユーザーがトランザクションにかかる費用を支払う必要があります。ユーザーは、暗号資産を購入する際に、処理手数料、基本手数料、ガスリミット手数料を見込んでおく必要があります。加えて、スワップにはすべて0.875%のサービス料がかかります。
Trust Walletも同じように無料で使用でき、サブスクリプション(定期サービス)にかかる手数料はありません。アプリ内のDEXで暗号資産をスワップしたり、DAppブラウザを使用して分散型アプリとやり取りする際にも、ブロックチェーンのトランザクション手数料を除いて追加料金はかかりません。
ただし、Trust Walletのアプリ内で、ユーザーが第三者の取引所を通じて暗号資産を購入する場合、当該取引所から請求される手数料に加えて1%の手数料が課されます。ユーザーは、TWT BEP2、BEP20、またはSPLフォーマットで入手できる、Trust WalletのネイティブトークンであるTWTトークンを最低100個保有していれば、この種の手数料を払わずに済みます。
ユーザーはまた、MetaMaskとTrust Walletでともにガス代を調整し、カスタマイズできます。こうしたユーザーの裁量の余地がある背景には、マイナーは手数料が高いトランザクションを優先して実行する傾向にあるため、マイナーに高い手数料を支払って、より速いトランザクション処理を促すという考え方があります。
MetaMaskとTrust Wallet-秘密鍵とバックアップ
MetaMaskとTrust Walletは、どちらもノンカストディアルウォレットですが、これは、ユーザーが自分の秘密鍵を自ら保持し、鍵が暗号資産会社のサーバーに置かれていないことを意味します。ユーザーは、MetaMaskやTrust Walletを使用する場合、パスワードや秘密鍵の安全管理は自己責任で行う必要があります。
これらのウォレットの大きなメリットは、匿名性があることです。KYCプロセスがないため、ユーザーは匿名性を維持できます。またウォレットをバックアップする最も確実な方法は、リカバリーフレーズや秘密鍵を自分の手で書き留めておく(そして厳重に保管する)ことです。
また、ユーザーがマルチコインウォレットを作成すると、すぐにリカバリーフレーズが生成されるので、できるだけ早くバックアップしておくことが重要です。そうしておけば、使用機器に何かトラブルが起きても、ウォレットをリカバリーし、資金にすぐアクセスできます。また、どちらのウォレットにおいても、秘密鍵のエクスポートができます。この機能を使えば、ユーザーはウォレットをより確実ににコントロールでき、秘密鍵のバックアップも確保できます。
Trust WalletとMetaMask: メリット、デメリットの比較
機能 | Trust Wallet | MetaMask |
サポートしているプラットフォーム | iOS, Android | Chrome、Firefox、Brave、Edge |
マルチチェーンサポートの有無 | 〇 | 〇 |
ウォレットのタイプ | ホットウォレット | ホットウォレット |
スタート時期 | 2017年 | 2016年 |
使いやすさ | 使いやすい | 初心者には負担が大きい可能性 |
ステーキングの有無 | 〇 | 〇 |
セキュリティ | 2023年に400万ドルのハッキング被害 | 大きなハッキング被害はないが、 ウイルスとフィッシング詐欺で 一部顧客が資金を喪失 |
オープンソースの有無 | 〇 | 〇 |
秘密鍵の管理 | リカバリーフレーズ、生体認証 | リカバリーフレーズ、パスワード |
トークンに関するサポート | 幅広いトークンをサポート | 人気のあるERC-20トークンをサポート |
NFTサポートの有無 | 〇 | 〇 |
DAppとの統合 | モバイル上でDAppをサポート | デスクトップ上でDAppをサポート |
ガス代のカスタマイズの有無 | 〇 | 〇 |
モバイルアプリの有無 | 〇 | 〇 |
Trust WalletとMetaMask-どちらを選ぶべきか?
Trust WalletとMetaMaskのどちらを選ぶかは、ユーザーが考えている目標とプランによって変わります。DeFiのエコシステムとやりとりする計画ですか?それともNFTを取引したいですか?ビットコインを保管したいですか?それぞれのプランで求められる機能は異なり、それによっておそらくウォレットのオプションも変わってきます。
仮に読者が、初心者向きのウォレットを求めるのであれば、MetamaskよりもTrust Walletをお勧めします。一方、経験豊かな投資家で優れたDAppの統合機能を求めているのであれば、MetMaskが最適な選択です。どちらを選ぶにしても、これまでに説明した内容を踏まえて、自分の目的と計画に合う効果的な選択をしてください。
よくある質問
MetaMaskより優れているウォレットはありますか?
MetaMaskは最高のウォレットですか?
Trust Walletは最高の暗号資産ウォレットですか?
Trust Walletは安全ですか?
デスクトップPCでTrust Walletは使えますか?
MetaMaskをTrust Walletに接続できますか?
Trust Walletはマルチチェーンに対応していますか?
MetaMaskはバイナンススマートチェーンをサポートしていますか?
Trust WalletとMetaMaskはどちらが良いのでしょうか?
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