専門用語に慣れることは、 高度な技術分野について学ぶうえで重要なことです。金融やテクノロジーは、高度に専門化した言語を用いることで知られています。暗号資産(仮想通貨)は、まだ新しい金融テクノロジーなので、金融用語を使って表現するときに、混乱を招くことが往々にしてあります。
暗号資産の初心者は、「ブロックチェーン」 や 「分散型台帳 」などの用語を覚えたあとで、「メインネット」 や 「テストネット」 などの言葉に出会ってとまどうかもしれません。この2語は、「メインネットワーク 」と 「テストネットワーク 」の略称です。では、メインネットとは何なのか、なぜ重要なのか?そして、テストネットとは?これらの問いに対する答えを以下に見ていきましょう。
目次:
- 暗号資産(仮想通貨)におけるメインネットとは?
- メインネットの特徴とは?
- なぜメインネットが必要なのか?
- テストネットの重要性
- メインネットとテストネットにはどのような違いがあるのか?
- 新しい暗号資産(仮想通貨)メインネットの立ち上げ、およびそのプロセス
- メインネットの立ち上げは暗号資産(仮想通貨)の価格に影響を与えるか?
暗号資産(仮想通貨)におけるメインネットとは?

通常、人がビットコインネットワークについて語るとき、それは実際にはビットコインのメインネットのことを意味しています。それは、ライブ配信でフル稼働するビットコインのブロックチェーン・ネットワークのことで、トランザクションのブロードキャスト、検証、記録が活発に行われているのです。メインネットの定義を要約すれば、起動してからフル稼働し、分散型台帳技術を使用して取引を精力的にこなすブロックチェーン・ネットワークということになります。
メインネットの特徴とは?
メインネットは、それぞれ独自の技術および暗号資産(仮想通貨)を使用して、それ自体で動く独立したブロックチェーンです。シバイヌ(shiba inu)のようなERC-20仮想通貨トークンは、イーサリアムネットワーク上で取引されていることから、独自のメインネットは持っていません。一方、ドージコイン(dogecoin)は独自技術に基づく専用のブロックチェーンを持っているため、独自のメインネットを有していることになります。
同様に、イーサリアムネットワーク上に構築されるフル機能のライブ配信分散型アプリケーション(DApps)は、独自のメインネットを持っていません。これらは、イーサリアムのメインネット上で稼働しているのです。イーサリアムのようなメインネット上で取引される暗号資産は、実世界での価値とユーティリティを持つように設計されています。
なぜメインネットが必要なのか?

メインネットの登場(ローンチ)により、暗号資産技術は知的な思索の段階から現実の世界へ移行しました。メインネットには、分散型暗号資産金融システムのすべてが構築されます。ですからメインネットがなければ、暗号資産(仮想通貨)革命は起きなかったといえます。
謎の開発者、サトシ・ナカモト(偽名)は、2009年半ばにビットコインのメインネットを立ち上げ、新たな幕が開きました。ナカモトがビットコインの仕組みを説明した初の暗号資産「ホワイトペーパー」を発表してから、わずか1年足らずでメインネットが登場したのです。その後、ライトコイン(Litecoin)メインネットは2011年に、ドージコイン(Dorgecoin)のメインネットは2013年にスタートしました。スマートコントラクトを初めてサポートしたイーサリアムのメインネットは、2015年に登場しました。
テストネットの重要性

さて、メインネットとは何か、なぜメインネットが重要なのかが理解できたところで、テストネットについて見てみましょう。
テストネットは、メインネットと並行して稼働するブロックチェーンで、メインネットとほぼ同じ機能を持ちます。ただし、メインネットとは異なり、ユーザーはメインネットのように有形価値を持つトークンを取引するわけではありません。テストネットの役割は、暗号資産の開発者がサンドボックス(sandbox)に近い環境で暗号コードをテストし、磨きをかけることです。もし暗号開発がメインネット上で行われた場合、ネットワークの中断という多大なコストがかかるリスクが生じ、開発者はネットワークの過密状態を引き起こし、取引手数料も負担しなければならないという事態を招きます。テストネットはそのような問題を回避するために存在するのです。
トークンはテストネットとメインネットの間で送ることはできません。送信しようとすると、回復不能なアドレスに送信されるため、当該コインは消滅してしまいます。
暗号資産開発におけるテストネットの重要性を示す良い例として、最近のイーサリアムの 「マージ 」(Merge)が挙げられます。マージとは、2022年9月中旬に(暗号資産)ネットワークがプルーフ・オブ・ワーク(POW)のコンセンサスメカニズムからプルーフ・オブ・ステーク(POS)に移行したことを指します。
メインネットのマージに先立ち、イーサリアムの開発者は公開のイーサリアムテストネット上で3つの大規模なドレスリハーサル(本番に近いリハーサル)を実施しました。これらは、「Ropsten」、「Sepolia」、「Goerli」の各テストネットで、2022年5月から7月にかけてアップグレードが行なわれました。こうした成功を経て、メインネットのマージも行われることとなりました。
メインネットとテストネットにはどのような違いがあるのか?

メインネットとは何か、テストネットとは何かが理解できたところで、それらの違いを明確にしましょう。メインネットとは、実世界におけるユーティリティすべてを提供するブロックチェーンのことです。メインネットで取引されるデジタル資産は、現実の価値を持っています。メインネットは、一般の参加メンバーによる実際の使用に供されるライブ配信型ブロックチェーンです。つまり、暗号資産開発における 「完成品 」なのです。
「完成品 」と「」書きにした理由は、メインネット・ブロックチェーンのほとんどが、機能向上のために開発を続けており、時間の経過とともにアップグレードされてゆくからです。一方、テストネットは、メインネットの機能向上を図る開発者用のものです。テストネットでは、開発者はメインネットの安全性を脅かすことなく、また余計な手数料を負担することなく、新しいコードやアプリケーションを試すことができるのです。
ちなみに、テストネットで取引されるデジタル資産には価値はなく、開発ミスによってコストが発生するリスクはありません。
新しい暗号資産(仮想通貨)メインネットの立ち上げ、およびそのプロセス
新しい 暗号資産(仮想通貨)のメインネットをリリースするには、かなりのリソースが必要となります。これには、製品やコミュニティの開発、プロモーションの費用が含まれます。そのため、メインネットの立ち上げ前に、多くの暗号資産開発チームが資金調達を行なう傾向にあります。これは通常、イニシャル・コイン・オファリング(Initial Coin Offering:ICO)またはイニシャル・エクスチェンジ・オファリング(Initial Exchange Offering:IEO)を介して行われます。
ICOでは、暗号資産開発者がブロックチェーンベースのトークンを初期投資家に販売し、投資家間でトークンが取引されます。プロセスは大きく異なりますが、一般的な考え方は新規株式公開(IPO)、つまり企業が初めて公開株式市場から直接資金を調達する場合と同じです。
イーサリアムが2014年に独自にICOを実施したときは人気化しました。その後、2017年にICOブームが起きました。一方、IEOはICOとは少し異なり、トークンの販売は取引所(バイナンスなど)が主体となって行います。
ところで、暗号通貨開発者チームがまだメインネットを立ち上げていない状況で、トークンを販売したいと考えた場合、既存のメインネット上でのトークン発行を選択するかもしれません。これについては、たとえば、イーサリアムは代替トークン(ERC-20標準など)の発行と取引をサポートしています。
まもなく自社のメインネットをリリースしたいと考えている開発者チームは、自身のメインネットを立ち上げたときに、将来的な価値を持つという条件でERC-20トークンを販売し、資金を調達することができます。調達資金が確保され、開発とテストが完了し、大々的な宣伝が実施されると、開発者たちがメインネットを立ち上げる態勢が整います。
メインネットの立ち上げは暗号資産(仮想通貨)の価格に影響を与えるか?

メインネットの立ち上げが成功すれば、暗号資産(仮想通貨)の価格状況を強気にかまえる人がでてくるかもしれません。たしかに、メインネット立ち上げの成功は、投資家にとってはプロジェクトが実を結びつつあることを意味します。しかし、金融市場の常として、物事はそれほど単純ではありません。
暗号資産の価格ーメインネット立ち上げ前に上昇、その後下落
2017年9月~2018年6月の間に11件のメインネット立ち上げについて、2019年に暗号資産調査会社トークンゲイザー(TokenGazer)が行った調査によると、トークン価格はおおむね 「メインネットの立ち上げ(ローンチ)前に上昇、その後下落に転じた」とのことです。このうち多くは、当時の暗号通貨市場全般にわたる下降トレンドによって説明できます。

ここでトークンゲイザーは、暗号資産市場全体の時価総額に占める各トークンのシェアを調べました。その結果、ほとんどのトークンで、メインネットの立ち上げ時に時価総額が最大になっていることがわかりました。つまり、立ち上げ(ローンチ)までの間に時価総額が増加し、その後減少しているのです。

なぜメインネット立ち上げ後に価格が下落してしまうのか?
暗号資産アナリストは、メインネットの立ち上げが暗号資産価格に対して強気になれそうもない理由をいくつか挙げています。それらはメインネットの立ち上げが成功すれば、初期投資家が利益を確定する可能性があること、また、メインネットの立ち上げが成功すると、開発チームのメンバーが保有するトークンのロックが解除され、売り圧力がさらに強まる可能性がでてくること、です。
他方、メインネットのパフォーマンス基準も期待したほどではないかもしれません。たとえば、メインネットは予定したほど高いTPS(1秒当たりのトランザクション処理件数)レートを提供できないかもしれません。いずれにせよ、メインネットのリリース前に投機的な暗号資産に投資することは、極めてリスクが高いことに変わりはありません。
メインネットー暗号資産プロジェクトの巨大マイルストーン
メインネットとテストネットの違い、そして両者がどのようにリンクしているかを理解することは、暗号資産ネットワークが時間経過とともにどのように進化していくかを理解したい投資家にとって重要な足がかりとなります。
テストネットは開発チームのアイデアの実験台として機能し、暗号資産ネットワークプロトコルの改良に大きく貢献します。一方メインネットは暗号資産プロジェクトのマイルストーンとしての役割を果たしますが、これはプロトコルが一般に公開されるのに十分な条件を満たす発達を遂げ、また広く利用される有形価値を有することが前提となります。
よくある質問
ーメインネットとは?
メインネットは、あらゆる「アクション」が起きる、フル機能のライブ配信型ブロックチェーンです。そこでは現物の価値を有するデジタル資産が取引されます。
ー(すでにある)暗号資産がメインネット化するとどうなる?
これは、ある暗号資産プロジェクトがその主要ブロックチェーンを立ち上げ(ローンチ)たときに起きることです。おそらく立ち上げ前に、当該暗号資産トークンは別の暗号資産のメインネットで取引されていた(おそらくイーサリアムネットワークのERC-20トークンとして)と想定されます。価格への影響という点では、暗号資産市場は投機性が高いため、価格変動は極めて予測しにくいものとなります。
ーメインネットの仕組みは?
メインネットとは、暗号資産プロジェクトの中心となる、ライブ配信型ブロックチェーンのことです。
ーなぜメインネットが重要なのか?
メインネットは、暗号資産開発チームのプロトコルやアイデアが、一般大衆に利用される態勢が整っていることを示すものです。その実際の価値はメインネット上で利用できるようになっています。
ーメタマスク(MetaMask)でポリゴン(Polygon)のメインネットを追加する方法は?
すでにメタマスクがインストールされていると仮定して、クローム(Chrome)拡張機能から 「Expanded View」をクリックします。次に、「Add Network 」をクリックし、以下の内容を入力します。
ネットワーク名(Network Name): Polygon
新しいRPC URL(New RPC URL): https://rpc-mainnet.matic.network
チェーンID(ChainID): 137
シンボル(Symbol): MATIC
ブロックエクスプローラーURL(Block Explorer URL): https://polygonscan.com/
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