メタプラネットは、日本で唯一の「ビットコイン・トレジャリー企業」として、積極的にビットコイン(BTC)を購入・保有する戦略を採用している企業です。同社は2024年4月に「ビットコイン・スタンダード」を採用し、企業資産の大部分をBTCに変換することで、長期的な価値保存手段として活用する方針を打ち出しました。この戦略により、株式発行や社債発行を活用しながらBTCを買い増し、株主価値を最大化することを目的とする経営モデルを確立しています。
本稿では、メタプラネットの戦略、資金調達、ビットコイン市場との関係性、リスク要因、今後の展望について解説します。
メタプラネットとは?
メタプラネット(Metaplanet)は、日本を拠点とする投資会社で、もともとは不動産や企業投資をおこなっていました。しかし、戦略を転換し、ビットコイン(BTC)を主要な資産として保有する方針を打ち出しました。アメリカのマイクロストラテジー(MicroStrategy)と同じように、ビットコインを長期的に保有する戦略をとっており、日本市場では「ビットコイン関連株」として注目されています。とくに2024年のビットコイン価格の上昇とともに株価も急騰し、暗号資産市場で影響力を持つ企業のひとつとなっています。
企業の歴史と経営陣
メタプラネットは、もともと不動産・ホテル事業を手掛けていましたが、2024年にビットコイン・トレジャリー企業へと転換しました。
主要経営陣一覧
- サイモン・ゲロヴィッチ氏(代表取締役・社長)
- 阿部好見氏(取締役兼COO)
- 貴久イクルミ氏(CFO)
主要戦略投資家
- MMXX Ventures
- デジタル資産分野の投資を行うプライベート投資会社です。
- 中小型株の上場企業への投資も手掛けています。
- UTXO Management
- ビットコイン関連の資産運用を専門とする投資ファンドです。
- 「Bitcoin Ecosystem Fund」や「210k Capital」などを運用し、ビットコイン市場に関与しています。
メタプラネットの企業戦略
ビットコイン・トレジャリー戦略
メタプラネットは、日本企業として初めて「Bitcoin Treasury Company」を標榜し、企業資産の大部分をビットコインに変換する戦略を採用しています。同戦略の目的は以下の通りです。
- 長期的な価値保存
日本円の価値下落リスクを回避し、BTCをデジタルゴールドとして活用します。 - 資本市場を活用したBTC蓄積
株式や社債の発行を通じて資金を調達し、その資金でビットコインを購入します。 - BTCイールド(Bitcoin Yield)の最大化
「1株あたりのビットコイン保有量の増加率」 を指標とし、株主価値を増加させるKPIとして運用します。
BTCイールドとは?
メタプラネットの経営戦略の中心にあるのが「BTCイールド(Bitcoin Yield)」です。これは、完全希薄化後の発行済株式数に対するビットコイン保有量の増加率を示し、企業の成長を測る主要なKPIとして活用されています。
BTCイールドの計算方法は以下の通りです。
- 保有するビットコインの総量 ÷ 完全希薄化後の発行済株式数
この比率の上昇が、投資家にとっての価値向上を示す指標となります。
2024年のBTCイールド推移は以下の通りです。
- Q2 → Q3:41.72%増加
- Q3 → Q4:309.84%増加
同戦略により、株式の希薄化を大幅に上回るペースでBTCを取得し、1株あたりのBTC保有量を増やすことに成功しています。
関連記事:ビットコインは2025年に暴落するか?
メタプラネットの資金調達戦略
21ミリオン計画
2025年にメタプラネットは「21ミリオン計画」を発表し、1,166億円の資金調達を実施しました。この資金の使途は以下の通りです。
資金用途 | 金額(億円) |
---|---|
ビットコイン購入 | 1,113.6 |
ビットコイン・インカム事業 | 50 |
同資金調達は、最大21000BTCの取得を目標とし、2026年末までの達成を計画しています。
新株予約権の発行
- 発行規模: 21,000,000株(希薄化率53.6%)
- 調達総額: 約1,166億円(1株5,555円で行使)
- 行使期間: 2025年2月18日~2027年2月17日
同新株予約権の発行により、株価に影響を与えずに資金調達を進める設計になっています。
関連記事:メタプラネット、2025年末までにBTC1万枚取得を目指す
2024年のビットコイン取得データ
- 1,761.98BTCを208.7億円で取得
- 平均取得価格:11,846,002円/BTC。
メタプラネットのリスク
メタプラネットのビットコイン投資戦略には、大きな成長ポテンシャルがある一方で、いくつかの重要なリスクも存在します。特に、ビットコイン価格の変動や企業の財務構造がもたらす影響は無視できません。
債務超過のリスク
メタプラネットはマイクロストラテジー同様、ビットコインを財務戦略の中核に据えていますが、ビットコイン価格が77%下落(1BTC = 190万円以下) すると、債務超過に陥る可能性があります。
この状況になると、以下のような影響が考えられます。
- 財務の健全性が低下し、投資家の信頼が損なわれる
- 株価が急落し、株主価値が大幅に下がる
- 上場廃止や企業の存続リスクが高まる
ビットコイン市場はボラティリティが高く、過去には1年で70%以上の下落を記録したこともあります。そのため、ビットコイン価格の急落は企業にとって大きなリスクとなります。
株式の希薄化
2025年に発表された「21ミリオン計画」による新株予約権の発行は、希薄化率が53.6%に達する可能性があります。
これにより、1株あたりの価値が低下するリスク があります。
株式の希薄化が進むと、以下のような影響が予想されます。
- 既存株主の持ち株比率が低下し、利益が分散される
- 株価が下落する可能性が高まる
- 新たな投資家を呼び込むための調整が必要になる
しかし、メタプラネットは 「BTCイールド」 の向上により、株式希薄化の影響を最小限に抑える方針を示しています。
ビットコインETF承認のリスク
現在、日本ではビットコインETFが承認されていませんが、将来的に承認される可能性があります。
もしビットコインETFが日本で承認された場合、メタプラネットの株式を購入するインセンティブが低下する可能性があります。
- 投資家はビットコインETFを通じて、税制優遇を受けながらビットコインに投資できる
- メタプラネット株を購入するメリットが減少する
- 株価の下落につながる可能性がある
現在、日本ではビットコインETFの承認には法改正が必要ですが、長期的にはその可能性があるため、企業戦略の調整が求められるでしょう。
関連記事:フランクリン・テンプルトンとSBIによる日本初のビットコインETF承認へ
ビットコインETFとメタプラネットの比較
比較項目 | メタプラネット株 | ビットコインETF |
---|---|---|
税率 | 約20%(株式) | 最大55%(暗号資産) |
保有形態 | 企業の一部として保有 | 投資信託として保有 |
国内規制 | 日本の証券取引所で上場 | 国内では未承認 |
ビットコイン・ホテルの詳細
メタプラネットは、東京・五反田に位置する「ホテルロイヤルオーク五反田」を「The Bitcoin Hotel」 としてリブランドする計画を進めています。このホテルは、ビットコインを活用した新しい形の宿泊施設として、以下の特徴を持ちます。
ビットコイン・ホテルの主な特徴
- ビットコイン決済の導入
- 宿泊料金やサービスの支払いにビットコインを使用可能にする。
- ビットコイン教育イベントの開催
- 宿泊客向けにビットコインの基礎知識や最新情報を提供するセミナーを開催。
- ビットコインコミュニティの拠点
- ビットコイン愛好者や企業が集うイベントスペースを提供し、ネットワーキングを促進。
このホテルのリブランドにより、メタプラネットはリアルな場でのビットコイン教育と普及を目指しており、デジタルとリアルの橋渡しを行うことを狙っています。
Bitcoin Magazine Japanを通じた教育の拡充
メタプラネットは、ビットコイン教育と普及を推進するために『Bitcoin Magazine Japan』の独占ライセンスを取得しました。これにより、日本国内におけるビットコインの認知度向上を目指し、正確で専門性の高い情報を提供しています。
『ビットコイン・マガジン』は、ビットコイン業界で最も権威のあるメディアの一つであり、世界的なビットコインイベント「Bitcoin2024」を主催するBTCMedia社が運営しています。メタプラネットは、このメディアの日本版を通じて、個人投資家から企業・金融機関まで幅広い層に向けてビットコインの最新動向や分析を発信し、国内のビットコイン市場の発展を支えています。
関連記事:メタプラネット、Bitcoin Magazine日本版をローンチ
メタプラネットの成長と株価の推移
メタプラネットのビットコイン保有量と株価は、ここ数年で急激に成長しています。ゲロヴィッチ氏によると、メタプラネットがビットコインを継続的に購入していた同じ期間に、同社の株主数は約5,000人から10倍以上に増加し、5万人を超えたそうです。2023年12月時点で1株約160円だったメタプラネットの株価は、1年後には3,500円を突破し、時価総額は1,200億円に達しました。
ビットコイン保有量の推移
時期 | 保有量(BTC) |
---|---|
2024年6月末 | 141 BTC |
2024年9月末 | 約2倍に増加 |
2024年12月末 | 1,762 BTC |
株主数の増加
時期 | 株主数 |
---|---|
2023年12月 | 5,000人 |
2024年12月 | 50,000人(10倍増) |
株価の推移
時期 | 株価(円) |
---|---|
2023年12月 | 160円 |
2024年12月 | 3,500円超 |
時価総額 | 1,200億円に達成 |
これらのデータは、メタプラネットがビットコイン投資を通じて急速に成長している証拠であり、投資家からの注目度が高まっていることを示しています。さらに同氏は25年1月、世界最大の政府系ファンドであるノルゲス銀行がメタプラネットの株式を0.55%保有していること明かしました。同氏はこの件に関して以下のように述べています:
ノルゲス銀行は1.7兆ドル以上の運用資産を持ち、マイクロストラテジーの0.72%の株式(5億ドル超相当)も保有しています。その規模を考えると、今後メタプラネットの保有比率を増やす可能性も十分にあると言えます
サイモン・ゲロヴィッチ代表取締役|メタプラネット
まとめ:今後のメタプラネットの動きに注目
メタプラネットは、ビットコインを企業財務の中心に据える日本唯一のビットコイン・トレジャリー企業です。2024年の戦略転換以降、積極的にビットコインを購入し、株式や社債発行を活用した資金調達を通じてBTC保有量を急速に拡大しています。
特に、「BTCイールド」を経営の指標とし、1株あたりのビットコイン保有量の最大化 に重点を置いています。また、「ビットコイン・ホテル」の開発や「Bitcoin Magazine Japan」の運営など、教育・メディア事業を通じた普及活動にも力を入れています。一方で、ビットコイン価格の変動リスク、債務超過、株式の希薄化、国内規制の変化などの課題も存在します。今後、目標とする21,000BTCの保有を実現し、世界のビットコイン保有企業トップ10入りを果たせるかが注目されます。
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