2025年に入り、グレースケールやビットワイズといった大手資産運用会社が、SEC(米国証券取引委員会)に対してドージコインETFの申請を行ったことで、市場は再び活気づいています。ビットコインやイーサリアムのETFが承認された際と同様に、ドージコインETFが正式に認可されれば、その影響力は計り知れません。また承認プロセスや予測市場の状況を踏まえ最短で2025年末、遅くとも2026年上半期には承認される可能性が高いされています。
本稿では、ドージコインETFの概要、承認の可能性、そして具体的な承認時期について、最新の情報とデータをもとにわかりやすく解説します。
ドージコインとは?
ドージコイン(DOGE)はもともと、2013年にビリー・マーカス氏とジャクソン・パーマー氏によってインターネットミームを基に作られた初のミームコインで、当時流行していたビットコインと、柴犬のかぼすの画像を使った「Doge」というミームを組み合わせたのが、ドージコイン誕生のきっかけとなっています。
ドージコインは、ライトコインを基盤としており、そのコードベースを継承しています。ライトコインは2011年にビットコインをモデルに開発され、ビットコインのトランザクション処理速度の課題を改善することを目的としています。このため、ビットコイン、ライトコイン、ドージコインの3つには多くの技術的な共通点があり、取引承認にはPoW(Proof of Work)というコンセンサスアルゴリズムが採用されています。
しかし、ドージコインはビットコインと異なり、供給量に上限がなく、毎年50億DOGEが新たに発行されるため、インフレ資産として位置付けられています。当初はオンラインでのチップ用暗号資産として開発され、迅速な取引確認と低い手数料が特徴です。
ドージコイン支持者とコミュニティの影響
ドージコインは多くの著名人や企業に支持されており、特に実業家イーロン・マスク氏の影響力が価格変動に大きく寄与しています。スポーツチームや慈善団体でも利用され、2014年の冬季オリンピックではジャマイカのボブスレーチーム支援のために5万5,000ドル以上が集められました。
マスク氏は2019年以降のツイートでドージコインの価格に影響を与え、2021年には「月に吠えるドージ」のミーム効果で史上最高値を更新。同年5月にはサタデー・ナイト・ライブで自らを「DogeFather」と称し、価格が急騰しました。さらに、2023年には旧Twitter(X)のロゴを一時的にドージコインの「かぼす」に変更し、2024年11月にはバイオテック創業者ヴィヴェク・ラマスワミ氏とともに新設された政府効率化省(D.O.G.E)を共同で率いることを発表するなど、ドージコインへの強い関心を示しています。
ドージコインETFの基礎知識と仕組み
![ビック_DOGE_ドージコイン-カバーズ_コインズ_ネガティブ](https://jp.beincrypto.com/wp-content/uploads/2024/10/bic_doge-covers_coins_negative-850x478.jpg)
ドージコインETFは、ドージコインの価格動向に連動する金融商品であり、投資家が実際にドージコインを保有することなく、その価格変動から利益を得ることができる投資手段です。ETF(上場投資信託)として証券取引所で取引されるため、伝統的な株式と同様に売買が可能であり、次のような特徴があります。
- 簡便性:暗号資産取引所での口座開設やウォレット管理が不要。
- 安全性:厳格な規制下で取引されるため、投資家保護が強化される。
- 流動性:市場の取引時間中、リアルタイムで売買可能。
この仕組みにより、暗号資産に対する知識が限られている投資家でも、ドージコインへの投資が容易になります。
通常の暗号資産投資との違い
従来の暗号資産投資は、直接的にドージコインを購入し、個人ウォレットで管理する必要がありました。しかし、ドージコインETFを利用することで、次のような違いが生まれます。
項目 | 従来の暗号資産投資 | ドージコインETF |
---|---|---|
購入方法 | 暗号資産取引所で直接購入 | 証券取引所を通じて取引 |
保管方法 | 個人ウォレットで管理 | カストディアンによる安全な保管 |
投資家保護 | 自己責任が基本 | 規制機関(SECなど)の監督下 |
流動性 | 取引所の営業時間に依存 | 株式市場の取引時間に準拠し、高い流動性を維持 |
コスト構造 | 取引手数料、ネットワーク手数料が発生 | 管理手数料(例:グレースケールの2.5%)が発生 |
このように、ドージコインETFは投資家にとって管理の手間が少なく、よりシンプルな投資手段となります。
投資家にとってのメリット
ドージコインETFが注目される理由は、その投資家にとっての数々のメリットにあります。
- 規制の透明性:SECの監督下にあることで、詐欺や市場操作のリスクが軽減される。
- 分散投資の容易さ:株式や債券と並行してポートフォリオに組み入れやすい。
- 税制上の利点:ETFとして取引することで、特定の税優遇措置を受ける可能性がある。
- アクセスの広がり:個人投資家だけでなく、機関投資家も参入しやすくなる。
特に、ビットコインETFが承認された際に見られたような大規模な資金流入が期待されており、ドージコインETFにも同様の期待が寄せられています。
申請の現状と主要プレイヤーの動向|25年2月現在
![ドージコイン価格分析、DOGE、ドージコインETF](https://jp.beincrypto.com/wp-content/uploads/2024/10/bic_doge-covers_coins_positive-850x478.jpg)
グレースケールのドージコインETF申請
2025年初頭、グレースケールはドージコイン信託を立ち上げ、その後すぐにETFへの転換申請を行いました。グレースケールは既にビットコインやイーサリアムのETFで実績を持つ資産運用会社であり、その申請は市場に大きなインパクトを与えました。
申請の概要
- 申請日:2025年1月
- 運用会社:グレースケール
- 保管機関:コインベース・カストディ
- 管理手数料:2.5%
- 申請内容:既存のドージコイン信託を現物ETFへ転換する形式
グレースケールの申請は、NYSE Arcaを通じてSECに19b-4フォームを提出する形で行われました。このフォームは、取引所が新たなETFを上場するための規制変更申請に使用され、SECは45日以内に承認・拒否、または審査の延長を決定します。
ブルームバーグのETFアナリストエリック・バルチュナス氏は以下のように述べています。
ドージコイン信託を立ち上げたその日にETFへの転換申請を行うのは極めて異例です。この動きは、グレースケールが暗号資産ETF市場でのリーダーシップを維持しようとする意志の表れでしょう
エリック・バルチュナスアナリスト|ブルームバーグ
ビットワイズのドージコインETF申請
グレースケールの動きに続き、ビットワイズ・アセット・マネジメントもSECにドージコインETFの申請を行いました。ビットワイズは1933年証券法に基づいて申請を提出しており、現物ドージコインを保有する構造を採用しています。
申請の特徴
- 申請日:2025年1月28日
- 運用会社:ビットワイズ
- 法的根拠:1933年証券法に基づく現物ETF申請
- カストディアン:コインベース・カストディ
この申請は、従来の1940年投資会社法に基づくETFと異なり、ドージコインの現物を直接保有する点が特徴です。ブルームバーグのシニアETFアナリスト、エリック・バルチュナス氏は次のようにコメントしています:
これは初の1933年法に基づくドージコインETF申請であり、物理的に裏付けられた構造が投資家にとっての透明性と信頼性を高めるでしょう
エリック・バルチュナスアナリスト|ブルームバーグ
Rex SharesのミームコインETF申請
さらに、Rex SharesもTRUMP、BONK、DOGEを含む複数のミームコインETFを申請しました。この動きは、ミームコイン市場に対する規制当局の姿勢が変化していることを示唆しています。
Rex Sharesの申請内容
- 申請日:2025年1月21日
- 対象銘柄:TRUMP、BONK、DOGEなど
- 追加申請:ビットコイン、イーサリアム、ソラナ、XRPのETFも含む
ジェームズ・セイファート氏は次のように指摘しています:
ジェームズ・セイファートアナリスト|ブルームバーグ
関連記事:レックス、TRUMP・DOGE・BONK ETF申請
主要プレイヤーの比較
以下の表は、グレースケール、ビットワイズ、Rex Sharesの申請内容を比較したものです。
項目 | グレースケール | ビットワイズ | Rex Shares |
---|---|---|---|
申請日 | 2025年1月 | 2025年1月28日 | 2025年1月21日 |
法的根拠 | 19b-4フォーム(ETF転換申請) | 1933年証券法に基づく現物ETF申請 | 1940年投資会社法に基づくETF申請 |
保管機関 | コインベース・カストディ | コインベース・カストディ | 未公開 |
管理手数料 | 2.5% | 未公開 | 未公開 |
申請の目的 | 信託からのETF転換 | 現物保有型ETFの新規申請 | ミームコインETFの新規申請 |
市場への影響と反応
![](https://jp.beincrypto.com/wp-content/uploads/2025/02/image-10-850x520.png)
グレースケールやビットワイズの申請は、ドージコインだけでなく、暗号資産市場全体に波及効果をもたらしました。Polymarketのデータによると、ドージコインETFの承認確率は1月末時点で申請直後に56%まで上昇し、市場の楽観的な見方が強まっています。
さらに、ドナルド・トランプ大統領が暗号資産政策に前向きな姿勢を示していることも、規制環境の変化に寄与しています。グレースケールは次のように述べています:
ドージコインは、従来の金融インフラからサービスを受けられない人々に新たな金融アクセスを提供しています。この可能性を広げることが私たちの使命です
グレースケール
ドージコインETF承認はいつ?|SEC(米国証券取引委員会)の役割
![ドージコイン価格分析、DOGE、DOGEオープンインタレスト](https://jp.beincrypto.com/wp-content/uploads/2024/10/bic_doge-covers_coins_neutral-850x478.jpg)
予測市場や申請プロセスの要因を加味するとドージコインETFは、最短で2025年末、遅くとも2026年上半期には承認される可能性が高いと言えるでしょう。
SECとは?
SEC(米国証券取引委員会)は、米国の証券市場を監督する主要な規制機関であり、暗号資産ETFの承認においても中心的な役割を担っています。特に暗号資産ETFに関しては、市場操作のリスク、投資家保護、市場の健全性維持といった観点から厳格な審査基準を適用しています。
2024年初頭にビットコイン現物ETFが複数承認されたことで、SECの姿勢に大きな変化が見られました。この動きは暗号資産市場全体に対して前向きなメッセージを送り、ドージコインETFの承認可能性についても新たな期待を生み出しています。
さらに、SECの規制姿勢は、過去数年間で大きな変化を遂げています。特にゲイリー・ゲンスラー前議長の退任後、新たな規制環境が形成されつつあります。マーク・ウイエダ氏が暫定の委員長として就任し、暗号資産関連の政策において柔軟な姿勢を示しています。
関連記事:ゲンスラー氏が正式に辞任=ウエダ氏がSEC委員長代理に
ドージコインETFの審査プロセス
ドージコインETFの承認プロセスは以下のステップで構成されています。
- 申請書の提出
- グレースケールは19b-4フォームを提出し、ドージコイン信託を現物ETFへ転換する申請を行いました(参考資料2)。
- ビットワイズはS-1フォームで新規の現物ドージコインETFを申請しました(参考資料3)。
- 初期審査(45日以内)
- SECは申請を受理した日から45日以内に、承認、却下、または審査延長を決定します。
- 審査延長(最大240日)
- 申請が複雑な場合、最大240日間まで審査期間を延長することが可能です。
- 最終判断
- SECは最終的に申請の承認または却下を決定し、公式に発表します。
承認後の市場への影響
ドージコインETFが承認された場合、以下のような市場の変化が予想されます。
- 短期的な価格上昇
市場は、ドージコインETFの承認後に短期的な価格上昇を経験する可能性があるとの指摘もあります。 - 機関投資家の参入
- ETF承認により、機関投資家の参入が増加し、ドージコイン市場の安定化が期待されます。
- 投資家心理の変化
- ドージコインが単なるミームコインではなく、正式な投資商品として認識されることで、投資家心理にも大きな影響を与えるでしょう。
ドージコインETF承認への障壁となる要因は?
![イーロン・マスクのドージコイン訴訟](https://jp.beincrypto.com/wp-content/uploads/2024/10/bic_doge-covers_coins_negative-1-850x478.jpg)
ドージコインETFの承認におけるリスクとして、ミームコイン特有のボラティリティが懸念されています。
ホワイトハウス顧問のデイビッド・サックス氏は、ミームコインやNFTについて「証券や商品としてではなく、切手や野球カードのようなコレクターズアイテムとして扱うべきだ」と主張。感情的価値や記念的な要素が強く、投資対象というよりは個人の趣味に近いものだと強調しました。この認識は、規制の枠組みを曖昧にし、承認プロセスに不確実性をもたらしています。
一方、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は、TRUMPコインなどの政治関連のあるミームコインに対して厳しい警鐘を鳴らしています。同氏は、暗号資産の制度化が悪質な行為者を増長させ、ミームコインが「無制限の政治的賄賂」の手段となり得るリスクを指摘。特に、外国勢力が介入する危険性や、規制の抜け穴が存在することへの懸念を表明しました。
これらの意見は、ミームコインETFの承認に際して、市場の健全性や投資家保護の観点から重要な議論を呼び起こしています。特に、価格の不安定さと規制上の曖昧さが、主要なリスク要因となっています。
関連記事:暗号資産の帝王、NFTとミームコインをコレクションとして明確なルールを推進
ミームコインそのものが持つリスク
CoinWireが2024年11月に発表したレポートによると、過去3か月間に377人のインフルエンサーが宣伝した1,567種類のミームコインを分析した結果、76%のインフルエンサーが価格が90%以上下落したコインを推奨していたことが明らかになりました。
同レポートではさらに、インフルエンサーが宣伝したミームコインのうち約67%が現在無価値となっており、3か月後には86%のコインが価値を10分の1にまで減少していることが示されています。一方で、10倍以上のリターンをもたらすコインを宣伝できたインフルエンサーは全体のわずか1%にとどまっています。
![](https://jp.beincrypto.com/wp-content/uploads/2025/02/image-11.png)
短期的なパフォーマンスも芳しくなく、宣伝されたコインの80%が1週間以内に70%の価値を失い、1か月後には損失が80%に拡大します。特に、フォロワー数が20万人を超える大規模インフルエンサーが最も悪い成績を示しており、3か月後の平均損失率は89%に達しています。一方で、フォロワー数が5万人未満の小規模インフルエンサーはやや良好な結果を示し、場合によってはプラスのリターンを提供するケースも見られます。
また、インフルエンサーは1件のプロモーションツイートあたり平均399ドルの収益を上げており、多くのプロモーション活動が投資家利益よりも収益性を優先している実態が浮き彫りになっています。
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さらに、CHAIN PLAYのデータによると、2024年時点でミームコインの数が急増している一方で、その97%が破綻しており、投機的で短命な性質が際立っています。ミームコインの平均寿命は約1年で、他の暗号資産プロジェクトの平均寿命である3年と比較すると著しく短いことがわかります。
また、BeInCryptoが2024年8月に報じた内容によると、Pump.funでローンチされた170万以上のミームコインのうち、1,000万ドル以上の時価総額を複数週にわたって維持できたのはわずか15件にとどまっています。
さらに、2024年にBinanceへ上場したミームコインの中でポジティブなリターンを記録したのは1つだけで、残りの29トークンは価値を失い、一部は最大90%近い下落を経験しています。
ドージコインETFは25年内に承認される可能性あり
![](https://jp.beincrypto.com/wp-content/uploads/2024/05/bic_dogecoin_general-2-850x478.png)
ドージコインの歩みは、単なるインターネットミームから世界的な金融資産へと進化する過程を象徴しています。2025年、グレースケールやビットワイズといった大手資産運用会社がSECに対してドージコインETFの申請を行い、ミームコインとしての枠を超えた存在感を示しました。
過去のビットコインやイーサリアムETF承認が市場に与えた影響や予測市場を鑑みると、ドージコインETFは、最短で2025年末、遅くとも2026年上半期には承認される可能性があります。
短期的な価格上昇だけでなく、機関投資家の参入による市場の成熟化も期待されます。
しかし、ミームコイン特有の価格変動性や規制上の課題も依然として存在しており、投資家はその可能性とリスクのバランスを見極める必要があります。ドージコインETFの承認は、単なる金融商品の誕生ではなく、暗号資産の新たな時代の幕開けを示す重要な一歩となるでしょう。
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