アルトシーズンはビットコイン(BTC)の上昇後に資金がイーサリアムへ流れ、さらにアルトコイン全体に波及するというパターンで展開されてきました。しかし、2024年以降の市場環境では、機関投資家のETF需要や個人投資家の投資行動の変化により、この従来のモデルが通用しなくなりつつあります。特に、ビットコインドミナンスが依然として高い水準を維持し、アルトコインへの資金流入が限定的であることが大きな要因です。
そこで、アルトシーズンが発生する条件や市場動向の変化、そして今後どのような形でアルト市場が成長する可能性があるのかを詳しく分析していきます。
アルトシーズンとは?
暗号資産市場では、ビットコインが主導する時期と、アルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産)が急騰する時期が交互に訪れる傾向があります。この中でも、特に、アルトコイン全体の時価総額がビットコインを上回るペースで成長する状況が続くと、市場はアルトシーズン入りしたとみなされます。
アルトシーズンは、投資家心理、市場の流動性、規制の変化など多くの要因によって左右されるため、時期を特定するのは簡単ではありません。しかし、過去の市場サイクルを分析することで、次のアルトシーズンを予測するヒントを得ることができます。
アルトシーズンとビットコインシーズンの違い
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- アルトシーズン
- ビットコインのドミナンス(市場占有率)が低下
- アルトコインの取引量が増加
- 新規プロジェクトが多く登場し、投資家の注目を集める
- リスク資産への資金流入が加速
- ビットコインシーズン
- 市場がビットコインに集中
- アルトコインの価格が停滞または下落
- 投資家がリスク回避のためにビットコインやステーブルコインに資産を移す
- マクロ経済の影響を受け、資金の安全性が重視される
ビットコインドミナンスとは、暗号資産市場においてビットコインが占める市場全体の時価総額の割合を示す指標です。ビットコインドミナンスは、ビットコインの市場規模が他の暗号資産に対してどれほどの影響力を持っているかを示す動的な比率です。
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アルトシーズンは、ビットコイン価格が一定期間上昇し続けた後に訪れることが多く、その背景には「ビットコインが高騰しすぎて一般投資家が手を出しづらくなったため、アルトコインへ資金が流れる」といった動きが見られます。特にビットコインの半減期後、アルトコイン全体の時価総額が増加し、そのピークに達するまで約505日かかることが一般的で、この影響はイーサリアムをはじめ他の暗号資産などにも波及します。
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過去のアルトシーズンとその要因
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2017年〜2018年:ICOブーム
- 背景:イニシャル・コイン・オファリング(ICO)の急増
- ビットコインのドミナンス:87% → 32%
- 主なプロジェクト:イーサリアム(Ethereum)、リップル(XRP)、ライトコイン(LTC)
2017年後半から2018年初頭にかけて、多くのプロジェクトが独自のトークンを発行し、投資家が熱狂的に資金を投じました。しかし、詐欺的なICOの乱立や規制強化により、市場は急激に冷え込みました。
2021年:DeFiとNFTの台頭
- 背景:分散型金融(DeFi)とNFT市場の急拡大
- ビットコインのドミナンス:70% → 38%
- 主なプロジェクト:ユニスワップ(Uniswap)、アクシー・インフィニティ、ソラナ
この時期は、スマートコントラクトを活用した金融サービスが注目を集め、特にイーサリアムが市場を牽引しました。また、NFT市場の成長により、多くの投資家が新たな収益機会を求めてアルトコインを購入しました。
2023年〜2024年:AI・GameFi・Web3の発展
- 背景:ビットコイン半減期、AI関連プロジェクトの台頭
- ビットコインのドミナンス:下降傾向
- 主なプロジェクト:アーウィーブ、ジャスミーコイン、ワールドコイン
この期間には、特にAIとブロックチェーンの融合が大きな話題となりました。レンダー、アカシュ・ネットワークといったプロジェクトが1000%を超える価格上昇を記録し、新たな投資テーマとして浮上しました。
アルトシーズン到来はどのような指標で確認すべき?
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アルトシーズンの到来を察知するには事前のリサーチをおこなうことが重要となります。以下に注目すべき指標をまとめます:
ビットコイン・ドミナンスの低下
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ビットコインの市場支配率(ドミナンス)が50%を下回ると、アルトコインの活発な動きが示唆されます。過去のアルトシーズン(アルトコイン市場の急騰)は、ビットコイン・ドミナンスが急落した際に始まる傾向があります。
ETH/BTCレシオ
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イーサリアムとビットコインの価格比率は、アルトコイン市場のパフォーマンスを測る指標となります。ETH/BTCレシオが上昇すると、イーサリアムがビットコインを上回るパフォーマンスを示しており、しばしばアルトコイン全体の上昇に先行します。一方、レシオが低下すると、ビットコイン市場の強さを示す場合が多いです。
アルトシーズン・インデックス
Blockchain Centerの「Altseason Index」のような指標は、アルトコイン市場のパフォーマンスをビットコインと比較して数値化します。このインデックスが75を超えると、アルトシーズンの開始を示唆しています。
アルトコインの取引量の増加
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特定のセクター、特にアルトコインとステーブルコインのペアにおける取引量の増加は、市場の信頼感の高まりを示します。
ソーシャルメディアのトレンド
ハッシュタグ、ミーム、インフルエンサーの言及は、小口投資家(リテール投資家)の関心の高まりを示すことが多いです。
市場センチメント
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市場の心理が「恐怖」から「強欲」に移行すると、アルトコイン市場に強気の勢いが生まれやすいです。
ステーブルコインの流動性
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USDTやUSDCといったステーブルコインの流動性や取引量は、アルトコイン市場の活性化に重要な役割を果たす。ステーブルコインの流動性が高まることで、投資家はアルトコイン市場への参入や退出が容易になり、資本の流入を促進する。ステーブルコインの採用が進むことで、アルトコインの取引機会が増え、市場参加が活発化する基盤となる。
2025年にアルトシーズンは来ないのか?
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これまでの4年周期と異なる資金流入の流れがみられていることから多くの投資家がアルトシーズンの到来を疑い始めています。結論から言うと、同サイクルを契機にこれまで見られなかった資金流入が起こり、従来通りのアルトシーズンが発生する可能性が低くなっています。
ETFと機関投資家がビットコイン市場を席巻
かつては、アルトシーズンは「ビットコインからアルトコインへ資金が移る」形で始まっていました。特に2017年のICOブームや2020年のDeFiブームでは、ビットコインが一定の価格帯に落ち着くと、投資家はより高いリターンを求めてアルトコインへ移行する傾向がありました。しかし、過去のアルトシーズンの傾向とは異なり、25年の市場ではビットコインのドミナンスが依然として高い水準を維持しており、典型的な資本移動が見られない状況にあります。
オンチェーン分析会社CryptoQuant CEOのキ・ヨン・ジュ氏は、24・25年のアルトシーズンの遅れについて、市場に流入する資本の性質が前回のサイクルとは大きく異なっていることが主な要因であると指摘しています。同氏によると、今回のビットコインの上昇は主に機関投資家やスポットETF(上場投資信託)の需要によって牽引されており、従来の個人投資家による取引とは異なる動きを見せているとのことです。
現在のビットコイン投資の主流はETFや機関投資家であり、彼らは基本的に資産をアルトコインへローテーションさせる意図がないため、これまでのような資金流入がアルトコイン市場で発生しにくくなっていると同氏は分析しています。
また、同氏によると、機関投資家は暗号資産取引所を通じて資産を運用しているわけではないため、従来の取引所中心の市場構造とは異なる状況が生まれていると指摘しています。ETFを通じたビットコインの購入は従来のような流動性の流れを作らず、大手アルトコインには多少の資金が流れる可能性があるものの、小規模なアルトコインには依然として取引所の個人投資家の存在が不可欠であるとジュ氏は述べています。
アルトコイン市場の時価総額が過去最高値を下回っている現状についても、同氏は新規資本の流入が減少していることを示していると指摘しています。これまでのアルトシーズンでは、新しい投資家が取引所を通じて市場に参入することでアルトコインに流動性が生まれていましたが、現在の市場環境ではその流れが生じにくくなっています。
また、ジュ氏は「もしビットコインの価格上昇によって個人投資家のFOMOが再燃すれば、取引所ユーザーの活動が増え、それがアルトコイン市場の活性化につながる可能性はある」と述べています。しかしながら、現在のビットコイン市場はETFや機関投資家、さらには政府の資金流入によって成長しているため、個人投資家の影響力がこれまでよりも小さくなっていることを強調しています。
そのため、ジュ氏は「アルトコイン市場が成長するためには、ビットコインの上昇に依存せず、独自の資本流入戦略を確立する必要がある」と警鐘を鳴らしています。一方で同傾向は、アルトコイン市場がビットコインの価格変動に依存せずに成長できる兆しを示しています。
イーサリアムの弱気相場および、ステーブルコインの台頭
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BybitとBlock Scholesは独自のレポートで、今回のサイクルにおいてアルトシーズンが到来していない主な要因としてETFや機関投資家の台頭意外に、以下の点を挙げています。
- ビットコインのドミナンスの継続的な強さ
- 歴史的にビットコインの半減期後、約230日後にアルトコインへの資本回転が起こる傾向がありました。
- しかし、2024年4月の半減期後もビットコインのドミナンスが下がる兆候がなく、過去のサイクルとは異なる市場構造になっていると指摘しています。
- イーサリアムの相対的な弱さ
- BybitとBlock Scholesの分析によると、これまでのアルトシーズンではイーサリアムが主導的な役割を果たし、その後アルトコイン市場全体に資金が流れました。
- しかし、2022年以降、イーサリアムはビットコインだけでなく、ソラナ(Solana)やスイ(Sui)といった「イーサリアム・キラー」とされるプロジェクトに対しても劣勢となっており、市場のリーダーシップを発揮できていないと指摘しています。
- ステーブルコインの供給増加
- BybitとBlock Scholesのレポートによると、2024年初めからステーブルコインの供給量が66%増加しているとのことです。
- これは、機関投資家の影響だけでなく、個人投資家の市場参加も増えていることを示唆していますが、アルトコイン市場への本格的な資金流入にはまだ至っていないと指摘しています。
その他専門家の意見
元Messariのリサーチアナリストであり、Syncracy Capitalの共同創設者であるRyan Watkins氏は、暗号資産市場がこれまで以上に長期間にわたって上昇し続けると予測しています。同氏は、従来の「4年周期」や「アルトシーズン」といった概念が過去のものになりつつあると指摘し、暗号資産ETFの登場、市場適応したプロジェクトの成熟、暗号資産に友好的な米国政府の誕生などが市場構造の変化をもたらしていると述べています。
また、Watkins氏は次の長期的な弱気相場に入るまで、市場は予想以上に高い水準で推移し、しかしピークに到達するまでには時間がかかる可能性があると指摘しています。現在の市場心理は過度に感情的であり、冷静な視点を持つことが重要であるとも述べています。さらに、市場に流通するトークンの増加についても肯定的な見解を示し、投資家はこれまで以上に慎重に資産を選別することが求められると強調しています。
アナリストのマイルズ・ドイチャー氏も、2025年以降の暗号資産市場では従来の「アルトシーズン(altseason)」の概念が通用しなくなると主張しています。同氏は個人投資家の行動も変化しており、従来のようにビットコインからイーサリアム、さらに主要アルトコインへと資金が移動する流れが一般的ではなくなっていると主張。現在では、そのプロセスを飛ばして直接ミームコインやオンチェーンの高リスク資産に投資する傾向が強まっており、中・大型アルトコインへの資金流入が減少しているため、過去のような循環的な資金の流れが生まれにくいと述べています。
今後のアルトシーズンの在り方とは?
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ドイチャー氏は、今後の市場では「単一のアルトシーズン」ではなく、短期間の「ミニバブル(mini echo-bubbles)」がテーマごとに発生すると予測しています。実際2024年には、11月にミームコイン、12月にAI関連、1月にエージェント系プロジェクトが注目を集めたように、特定の分野が一時的に資金を集める傾向が強まっています。
さらに、Bybitのレポートでは以下の複合的な要因がアルトシーズンの引き金となる可能性を指摘しています。
- 市場の調整と資金流入:ビットコインの高騰が続く中、利益確定による資金の移動がアルトコイン市場を活性化させる可能性があります。
- イーサリアムの回復:イーサリアムがビットコインを上回るパフォーマンスを示せば、アルト市場全体への資金流入が加速する可能性があります。
- 機関投資家の関心:規制の変化に伴い、機関投資家が実用性の高いアルトコインへの投資を拡大すれば、市場の成長を後押しする可能性があります。アルトコインETFの承認も大きく寄与する可能性があります。
- 個人投資家とミームコインの動向:最近のミームコインブームは市場全体には波及していませんが、個人投資家の関心が持続すれば、アルトコイン市場全体の活性化につながる可能性があります。
まとめ:アルトシーズンは来るがこれまでとは異なる
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暗号資産市場におけるアルトシーズンは、従来の4年周期やビットコインからの資金移動を基盤とした流れから変化しつつあります。過去の市場サイクルでは、ビットコインの上昇後に資金がイーサリアムへ流れ、続いて中・小型のアルトコインへと循環する傾向が見られました。しかし、2024年以降は機関投資家によるETF需要の増加や市場構造の変化により、ビットコインのドミナンスが維持され、典型的なアルトシーズンの到来が難しくなっています。一方で、個人投資家の行動も変化し、ミームコインやオンチェーンの高リスク資産へ直接資金が流れるケースが増加しています。今後のアルト市場は、特定のテーマごとの短期的なミニバブルが発生しやすくなり、単一のアルトシーズンではなく、断続的な資金流入が市場を形成する可能性が高いでしょう。
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