2025年3月、新興レイヤー1ブロックチェーンSui(SUI)のネイティブトークンであるSUIに連動する米国初のETF(上場投資信託)の申請が提出され、市場の注目を集めています。このETFを申請したのは新興のデジタル資産投資会社Canary Capitalであり、SUIを対象とする世界初の現物ETFを目指す動きです。
本稿では、SUI ETF申請の概要と背景、市場動向やSECの審査状況、SUIの技術的特徴などを整理します。
Canary Capitalによる仮想通貨Sui ETF申請の概要

申請の概要と手続き
2025年3月17日、暗号資産運用会社のCanary Capitalは、SuiのネイティブトークンSUIの現物価格に連動するETF「Canary SUI ETF」の登録届出書(フォームS-1)を米SEC(証券取引委員会)に提出しました。これは米国初のSUI現物ETFの申請となります。
Canary Capitalは2024年10月に、元ValkyrieのSteven McClurg氏によって設立された新興企業です。同ETFの信託はデラウェア州法に基づき設立されており、SECへのS-1提出に先立ち、3月7日に州当局への登録も完了済みです。
今後、ETFを上場する証券取引所による規則改正案(フォーム19b-4)の提出が予定されており、S-1登録と合わせて審査が進行する見込みです。
ETFの設計と構造
Canary SUI ETFは、信託がSUIトークンを現物で保有し、その価格に基づいてETFの価値(NAV=純資産価値)を算出する現物担保型ETFとして設計されています。
NAVは保有SUIの価値から運用費用を差し引いて計算され、価格データにはCoinDesk社のSUIインデックスを参照する計画です。
なお、申請書類には上場予定の証券取引所やティッカーシンボルは未記載で、これはETF申請プロセス上、信託設立と上場手続きが別途進行するためです。また、同資産管理会社は最近、Axelar(AXL)ETFのためのS-1登録声明を提出。これまでにも、Litecoin(LTC)、XRP(XRP)、Solana(SOL)、Hedera(HBAR)の現物ETFの申請を米SECに提出しています。
市場の反応と仮想通貨Sui価格の動き
申請発表を受けて、SUIトークンには短期的な買いが入り、価格が反発。申請が公表された3月17日時点でSUIは約2.3ドルとなり、週初から7%以上の上昇を記録しました(ただし年初来では依然として50%以上の下落水準)。
この上昇には、同月初に報じられたトランプ氏関連のDeFiプロジェクトがSUIを準備資産に採用するニュースも影響したとみられます。実際、3月6日にはこの報道を受けてSUI価格が一日で14%以上急騰する場面もあり、3月上旬から中旬にかけてはポジティブな材料が重なり市場が活発化しました。
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仮想通貨Sui ETFはいつ承認されるのか?|SECの審査プロセスと現状

申請から承認までの流れ
Canary SUI ETFは、2025年3月17日にSECへフォームS-1(登録届出書)を提出し、現在は審査待ちの段階にあります。今後は、上場予定の証券取引所がフォーム19b-4を提出し、SECが取引所ルールの改正を審査する流れとなります。
19b-4が提出されると、官報掲載から最大240日以内に承認・却下・審査延長の判断が下される仕組みです。過去の暗号資産ETFでも延長が繰り返された経緯があり、SUI ETFも同様のスケジュールが想定されています。
特に現物暗号資産を保有する「スポットETF」は、SECがこれまで市場操作リスクや投資家保護の懸念を理由に、承認を繰り返し拒否してきた領域です。ビットコインETFだけでも、2018年から2023年3月までに20件以上が却下されています。SECは一貫してCMEなどの規制市場との連携を重視しており、先物取引の存在が重要な評価軸とされています。
ただし、この姿勢もトランプ政権の再登場以降、転換の兆しが見られ、今後は従来の慣例にとらわれない判断が下される可能性も高まっています。なお、先物ETFについては比較的早期に道が開かれました。
- ビットコイン先物ETFは、2021年10月にProSharesなどが初承認
- イーサリアム先物ETFも、2023年10月に複数社が同時ローンチ
SUI ETFの審査においても、SECが重視するのは市場の信頼性と監視体制です。中でも、以下が重要とされています。
- 主要取引市場との監視共有協定(Surveillance-Sharing Agreement)
- 規制市場における価格発見メカニズムの明確性
将来的にCMEやICEがSUI先物を上場すれば、ビットコインETFと同様の評価が可能となるでしょう。
また、ETF承認には流動性の高さも不可欠です。SUIの時価総額は2025年3月時点で約70億ドルと中堅規模ながら、主要取引所での24時間出来高は約7億ドルに達しており、単一資産ETFとして一定の条件は満たしています。今後、Suiネットワーク上の実需拡大や価格発見の透明性が進むことで、承認への道がさらに開かれていくと期待されます。
アルトETF全般の審査状況と政治的背景
2025年3月時点で、SECはビットコイン・イーサリアム以外の現物ETFを一件も承認していません。現在、ビットコイン・イーサリアムに続くアルトコインの現物ETFについても、複数の申請がSECに提出され、審査中となっています。SUIのほか、SOL・XRP・LTC・DOGEなどのETF申請も同月に最初の判断期限を迎えましたが、いずれも延期が発表されています。主要アルトコインの申請状況は以下の通りです:
対象資産(トークン) | 主な申請会社 | 審査状況(2025年3月現在) |
---|---|---|
Solana (SOL) | VanEck、21Shares、Canary 他 | 審査中(延期) ─ SECは2025年3月に判断延期、最終期限は2025年10月 |
XRP (Ripple) | Grayscale、Bitwise、21Shares 他 | 審査中(延期) ─ 同上(2025年10月最終期限) |
Litecoin (LTC) | Grayscale、Canary 他 | 審査中(延期) ─ 同上(※承認確率90%との分析あり) |
Dogecoin (DOGE) | Grayscale、Bitwise、Canary 他 | 審査中(延期) ─ 同上(※承認確率75%との分析あり) |
Cardano (ADA) | Grayscale 他 | 審査中(延期) ─ 同上(2025年10月最終期限) |
Aptos (APT) | Bitwise | 申請提出(審査開始) ─ 2025年3月にS-1提出 |
Sui (SUI) | Canary Capital | 申請提出(審査開始) ─ 2025年3月にS-1提出 |
背景には、2025年1月に発足したトランプ政権下でのSEC人事の停滞があります。新議長候補のポール・アトキンス氏はまだ上院の承認を得ておらず、SECは暫定体制で積極的に新規案件を進めにくい状況です。
ブルーバーグのアナリストジェームズ・セイファート氏も「Atkins氏の就任前にアルトETFが承認される可能性は極めて低い」としており、業界では2025年第2四半期から年後半までの“持久戦”になるとの見方が広がっています。
今後の見通しと承認の可能性
トランプ政権は暗号資産への規制緩和方針を打ち出しており、2024年にはビットコイン・イーサリアムのスポットETFが初めて承認された前例もあります。これを受けて、多くの運用会社が相次いでアルトコインETFを申請しました。
Canary Capitalのスティーブン・マクラーグ氏は「2025年末までに複数のETFが承認される可能性が高い」と楽観的な見方を示しており、一部のアナリストは年内にアルトETFが承認される確率は65%以上と予測しています。
とはいえ、実現にはアトキンス氏の議長就任とSEC内の方針転換が不可欠です。2025年3月末時点で同氏の承認は財務開示の遅れなどにより停滞しており、上院承認は春末〜初夏ごろになる見通し。したがって、SUI ETFを含む審査が本格化するのは2025年後半以降となる可能性が高いと見られています。
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仮想通貨SuiがETF対象として選ばれた理由と市場背景

急成長する仮想通貨Suiエコシステムへの評価
Canary CapitalがSUIをETFの対象に選んだ背景には、Suiネットワークの急速な台頭と高い市場注目度があります。Suiは2023年5月にローンチされた新興のレイヤー1ブロックチェーンで、元Meta出身のMysten Labsによって開発されました。
高速処理や低手数料を可能にする独自技術に加え、Move言語によるスマートコントラクト、高スループット設計、PoSによるステーキングやオンチェーン投票など、多用途な設計が評価されています。
成長を裏付けるデータ
2024年末時点で、SuiのTVL(ロックされた資産総額)は16億ドルに達し、年初から6倍以上増加。競合チェーンのアバランチやポリゴン追い抜き、TVLランキング8位に浮上しました。
トークン価格も2023年の0.77ドルから2024年末には一時3.50ドル超(+380%)、2025年1月には過去最高の5.35ドルを記録(その後調整)。さらに、累計アドレス数6,700万件、DEX取引高700億ドルといったオンチェーン指標も急増しており、実需の裏付けが強まっています。
関連記事:仮想通貨Sui(SUI)とソラナ(SOL)はどっちが優れている?
WLFIなどによるSUI採用が市場の信頼感を後押し
2025年3月初旬、トランプ大統領のファミリーが支援する分散型金融プロジェクト「WLFI」が、準備資産の一部にSUIを組み入れると発表。この提携はSUIの信頼性と象徴性を高める大きな材料となりました。
WLFIはドルの地位強化を掲げるDeFi機関で、準備金にはBTC・ETH・米国債担保トークンなどを含みます。そこにSUIが追加されたことで、「次世代の金融資産として認められた」と受け止められました。
Trump氏の次男エリック・トランプ氏も「Suiの技術革新に期待している」とコメント。発表当日にはSUI価格が14%急騰しました。
ETF申請のタイミングと国際的な流れ
Canary CapitalによるSUI ETF申請は、このWLFIニュースの約10日後に提出されており、市場の注目が高まっているタイミングを狙った動きと見られます。
実際、機関投資家の間でもSUIへの関心は高まっており、
- GrayscaleがSUI信託を適格投資家向けに提供開始
- Franklin TempletonがSui財団と提携しエコシステム支援を表明
- Ant FinancialがSui上での実資産トークン化に参入
といった事例が相次いでいます。
欧州などで先行するSUI投資商品
米国に先駆け、欧州ではSUI連動の上場投資商品がすでに登場しています。代表例はVanEckのSUI ETN(2024年11月上場)と、21SharesのSUIステーキングETPです。両商品はSUIを100%保有し、ステーキング報酬や価格連動の仕組みを通じて投資家にSuiエコシステムへのエクスポージャーを提供しています。SUIへの投資商品はすでに海外で動き出しており、Canary Capitalとしても米国市場における先行者利益を狙ってETF申請に踏み切ったと考えられます。
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仮想通貨Sui ETFの承認可能性とその意義

Canary CapitalによるSUI現物ETFの申請は、暗号資産業界における新たなマイルストーンとなる可能性があります。仮に承認されれば、SUIはビットコイン、イーサリアムに次ぐ「ETF化されたアルトコイン」となり、その市場インパクトは非常に大きいと考えられます。Sui財団もこの動きを歓迎しており、以下のようにコメントしています:
ETFを通じて個人・機関を問わず幅広い投資家がSUIにアクセスできるようになれば、Suiが次世代の金融インフラとして認識されるだろう
さらに、このSUI ETFの申請は他のアルトコインプロジェクトにとっても一つのベンチマークとなるでしょう。昨年承認されたビットコインETFは、上場後わずか数カ月で取引高950億ドルを記録し、金ETFを上回る資金流入を実現しました。この事例は、ETFという投資ビークルの影響力と、暗号資産に対する潜在的な需要の大きさを如実に示しています。
SUI ETFが誕生すれば、それは単なる価格面での後押しにとどまらず、Suiネットワーク上で展開されているDeFiやゲーム、Web3サービスなどにも信用強化という形で波及し、エコシステム全体の成長を促進する原動力となるでしょう。
まとめ:25年内の仮想通貨Sui ETFの承認に期待

Canary CapitalによるSUI現物ETFの申請は、仮想通貨Suiが伝統金融と本格的に接続する第一歩となり得ます。規制緩和への期待やSuiの成長が追い風となる中、市場は米国初のアルトコインETF誕生に大きな注目を寄せています。承認されれば、Suiエコシステムはもちろん、暗号資産業界全体にとっても重要な転換点となるでしょう。今後のSECの判断と市場の反応を慎重に見守る必要があります。
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