デジタル化が急速に進む現代社会において、日本の行政サービスも大きな転換期を迎えています。とくに、マイナンバーカードの活用とブロックチェーン技術は、行政手続きの効率化やセキュリティの向上に大きな可能性を秘めています。平将明デジタル大臣は、ブロックチェーン技術を活用してマイナ保険証を進化させようとしているのでしょうか?
本記事では、平大臣の記者会見での発言や、マイナンバーを活用した他の取り組みを交えながら、そのビジョンおよび、方向性に迫ります。
マイナンバーカードとブロックチェーンの親和性
まず、マイナンバーカードとブロックチェーン技術がどのように連携できるのかを理解する必要があります。マイナンバーカードは、個人番号を基に行政サービスを受けるための身分証明書として機能します。一方、ブロックチェーンは分散型のデータベース技術であり、高いセキュリティと透明性を持つため、データの改ざんが困難です。この2つを組み合わせることで、個人情報の安全性を確保しつつ、行政手続きの効率化が期待できます。
マイナンバーカードのICチップには「公開鍵と秘密鍵のペア」が格納されており、これはブロックチェーンの根幹を成す公開鍵暗号技術と同様のものです。公開鍵暗号技術は、公開鍵を使ってデータを暗号化し、秘密鍵を持つ者だけが復号できる仕組みです。誰でもデータの暗号化は可能ですが、復号は秘密鍵を所有する者に限られます。
マイナンバーカードでは、この技術を活用し、秘密鍵で暗号化した文書を受信者が公開鍵で復号することで、秘密鍵の正当性を証明します。同時に、その秘密鍵が本人のものであることも確認される仕組みです。さらに、ICチップ内の秘密鍵を外部から不正に取り出そうとするとチップが破壊されるため、高いセキュリティを維持しています。
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平将明デジタル大臣のビジョン
平大臣は、デジタル化の推進においてブロックチェーン技術やWeb3の活用を重視しています。同氏は記者会見で次のように述べています。
今回、石破総理よりデジタル大臣をはじめとしたさまざまな職務を任命されたことを重く受け止め、誰ひとり取り残さない、人に優しいデジタル化を進めるよう、近年発展著しいAIなど新しい技術の活用も含めて、関連する取り組みを強力に進めて行きたいと考えている
平将明デジタル大臣:デジタル庁
同発言からも、新興技術を積極的に取り入れる姿勢が伺えます。また平氏は、地方創生においてもブロックチェーン技術の活用を示唆しています。
ブロックチェーンとかDAOやNFTなどを使って、10年前にできなかった地方のアナログの価値を最大化をする。そういったことはできるんだろうと私自身は思っている
平将明デジタル大臣:デジタル庁
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マイナ保険証の現状と課題
マイナ保険証とは、マイナンバーカードに健康保険証機能を追加することで、従来の健康保険証に代わるものです。登録は医療機関や専用アプリを通じて行え、2024年12月2日からは新規の健康保険証発行が廃止され、マイナ保険証が基本的な保険証となります。しかし、現状ではデジタル化への不安や懸念が国民の間で存在します。特に、高齢者やデジタルデバイドの問題を抱える層にとって、手続きの複雑さやセキュリティへの懸念が課題となっています。これに対し平大臣はこれらの懸念に、以下のように説明しています。
新型コロナの時に、保険証にICチップが入っていないので、マスクの配布もできなかった。災害のときにも、お年寄りの方々が急いで逃げてきた場合に薬がわからないとか、そういった様々な問題・課題を解決できるのが、いわゆるマイナ保険証だろうというふうに思っている。医療にかかる社会保障全体の金額のボリューム感をご理解いただきたい。デジタル化によるメリットも桁が違うと言えるだろう
平将明デジタル大臣:デジタル庁
12月2日以降も従来の健康保険証は1年間利用可能ですが、国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険証には有効期限があるため、期限切れに注意が必要です。マイナ保険証の利用登録がない人は、健康保険組合から自動的に発行される「資格確認書」を使えば、従来の保険証と同様に診療を受けられます。
2023年8月時点でマイナ保険証の利用率は12.43%で、マイナンバーカード保有者の約8割が登録済みですが、実際には従来の健康保険証を使っているケースが多いです。メリットとしては、医療情報の共有や高額療養費の自動免除などがありますが、対応していない医療機関があることやシステムトラブル、個人情報の誤紐付けなどのリスクも指摘されています。これらの不安を抱える人々への対応策として平大臣は、資格確認書を申請なしで送付する仕組みも整えていると述べています。
不安な人には資格確認書を申請なしで届く。そのため、従来の日程通りに進めたい
平将明デジタル大臣:デジタル庁
ブロックチェーンでマイナ保険証はどう変わるのか
ブロックチェーン技術をマイナ保険証に導入するとなると、いくつかのメリットが浮上すると見られています。
- セキュリティの強化
- ブロックチェーンはデータの改ざんが極めて困難であるため、個人情報のセキュリティが大幅に向上します。マイナンバーカードのICチップに格納された公開鍵と秘密鍵のペアを利用し、ブロックチェーン上で個人の認証を行うことで、不正アクセスや情報漏えいのリスクを低減できます。
- データの一元管理と共有
- 医療データをブロックチェーン上で管理することで、異なる医療機関間でのデータ共有がスムーズになります。患者の診療履歴や処方情報をリアルタイムで共有できるため、重複診療の防止や迅速な医療サービスの提供が可能となります。
- 利便性の向上
- スマートフォンへのマイナンバーカード機能の搭載が進むことで、物理的なカードを持ち歩く必要がなくなります。さらに、ブロックチェーン技術により、オンラインでの本人確認や各種行政手続きをワンストップで行えるようになります。
実際国内では、自治体や企業がブロックチェーン技術を活用したセキュリティ強化の取り組みを進めています。福岡県飯塚市では、住民票発行手続きに試験的にブロックチェーンを実証実験で導入し、データ改ざん防止や個人情報保護の面で高い効果を示しました。つくば市では、Society 5.0トライアル事業の最終審査において、ブロックチェーンとマイナンバーカードを組み合わせたインターネット投票が実施され、さらに顔認証技術を活用した本人確認や自宅からのPC投票が可能となり、技術の進展が示されました。
東京都でもブロックチェーン技術を活用した電子行政サービスの導入が進められており、これにより行政手続きの効率化とデータセキュリティの強化が期待されています。
マイナウォレットの活用はあるか
ブロックチェーン業界では現在、マイナンバーカードを利用したウォレット「マイナウォレット」の開発が行われています。これは、スマートフォンでマイナンバーカードを読み取り、その情報から一意のウォレットアドレスを生成するものです。これにより、ブロックチェーン上でのトランザクションや本人確認が容易になります。これらの機能が導入されるかは未定ですが、平大臣も一目おいていることを公言しています。
参考にどうぞ!
— 平将明(たいらまさあき/Taira Masaaki) (@TAIRAMASAAKI) June 7, 2023
マイナウォレットは必見 https://t.co/20ym6qxa2N
マイナウォレットを利用することで、以下のような利点が期待できます。
- 本人確認(KYC)の効率化:マイナンバーカードをかざすだけで本人確認が完了し、自撮りや身分証の写真を送る手間が省けます。
- プライバシーの保護:必要最低限の情報だけを共有し、個人情報の流出リスクを減らします。
- 相互運用性の向上:異なるサービス間でのデータ共有が容易になり、ユーザー体験が向上します。
関連記事:マイナンバーカードを使用したWeb3ウォレットがイーサリアム財団の助成プログラムに採択
Web3との連携と未来展望
Web3は次世代のインターネットとして注目されており、分散型ネットワークを基盤としています。マイナンバーカードとブロックチェーン技術を組み合わせることで、Web3時代における新たな行政サービスの提供が可能となります。
平大臣は、地方創生においてもWeb3技術の活用を示唆しています:
ブロックチェーン、DAO、NFTなどを使って、地方のアナログ価値を最大化できる。内閣府と連携してやっていきたい
平将明デジタル大臣:デジタル庁
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 地方特産品のNFT化:地域の伝統工芸品や特産品をNFTとして発行し、国内外に販売。これにより、地方経済の活性化を図る。
- 地域通貨の発行:ブロックチェーンを利用した地域通貨を発行し、地域内の経済循環を促進。
- DAOによる自治:住民参加型の分散型自律組織(DAO)を活用し、地域の課題解決やプロジェクトの推進を行う。
技術的な課題と解決策
ブロックチェーン技術をマイナ保険証に導入するには、技術的な課題も存在します。
- スケーラビリティ
- 大量のデータをリアルタイムで処理する必要があるため、ブロックチェーンのスケーラビリティが問題となります。これを解決するために、セカンドレイヤー技術やプライベートチェーンの活用が検討されています。
- プライバシー保護
- 個人の医療データは極めてセンシティブな情報であるため、プライバシーの保護が不可欠です。ゼロ知識証明や匿名化技術を組み合わせることで、データの機密性を保ちながら必要な情報共有を実現します。
- インフラ整備
- 全国的なブロックチェーンインフラの整備が必要です。これには、技術者の育成や既存システムとの統合、法的な整備が含まれます。
オンチェーンKYCの重要性
ブロックチェーンの特性上、取引の透明性や不変性は担保されますが、匿名性が高いためにマネーロンダリングなどのリスクも指摘されています。そこで、オンチェーンでの本人確認(KYC)が重要となります。
平大臣もこの点について、デジタル庁としてセキュリティの強化に取り組む姿勢を示しています。
サイバーセキュリティは、かなり深刻の度合いを増してきている。民間企業が攻撃されるのみならず、国家を背景とした攻撃も増えている
平将明デジタル大臣:デジタル庁
マイナンバーカードを活用したオンチェーンKYCにより、ブロックチェーン上での取引の信頼性と安全性を高めることが可能です。さらにオフチェーンKYCは、コスト面での負担が大きいだけでなく、Web3のネイティブ機能と互換性が低く、情報漏えいのリスクが高いという問題があります。また、オンチェーンKYCを採用することで、プロジェクトや取引所は法的遵守を確保し、罰則や業務停止のリスクを回避できます。
国際的な動向と日本の立ち位置
世界的にも、ブロックチェーン技術を行政サービスに活用する動きが進んでいます。エストニアでは、国民IDカードにブロックチェーン技術を導入し、電子政府を実現しています。日本もこの流れに乗り遅れないよう、積極的な技術導入が求められています。平大臣は、DX化において国際的な競争力強化も視野に入れています。
関係大臣と協力をしてAIに関する競争力強化と安全確保に向けた取り組みを進めることなどについて指示をもらった
AIに限らず、ブロックチェーン技術を活用した技術の統合は、日本のデジタル社会における国際的な地位向上にも寄与すると考えられます。
デジタルデバイドへの対応
デジタル化を推進する上で、デジタルデバイド(情報格差)の問題は避けて通れません。特に高齢者や障がい者、デジタル機器に不慣れな人々への配慮が必要です。
一方で平大臣は「誰ひとり取り残さない、人に優しいデジタル化」を目指すと述べています。具体的な対応策としては、以下が考えられます。
- デジタル教育の推進:地域の公民館や図書館でデジタル機器の使い方講座を開催。
- サポート体制の整備:行政窓口でのサポートや、デジタルコンシェルジュの配置。
- アクセシビリティの確保:誰でも使いやすいユーザーインターフェースの開発。
結論:Web3推進派の平氏が舵を取ることにより、ブロックチェーンが統合される可能性はある
平大臣は、デジタル庁の設立に関わり、提案から10カ月でデジタル庁が発足しました。官僚とIT専門家が同じ建物内でうまく協力できるか不安があったものの、現在は順調に機能していると述べています。また、マイナンバーカードの普及率はデジタル庁設立時の約16%から70%以上にまで達し、9,300万枚を超える成果を上げているとしています。
国民一人ひとりがデジタル化の恩恵を受けられる社会を目指し、技術と政策が融合する新しい時代が到来しつつあります。ブロックチェーン技術を活用したマイナ保険証の進化は、その一端を担うものとなる可能性があります。デジタル庁の今後の取り組みに注目が集まります。
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