人工知能(AI)によるセキュリティ企業が、レジャー(Ledger)イーサリアムアプリのバグを公表した。レジャー側は、この脆弱性について2週間前に静かに修正済みだったと説明している。
最高技術責任者シャルル・ギユメCTOは、この開示を「不安を煽るもの」と評した。8月12日にパッチをリリースした際、1行のコメントだけでセキュリティ速報などは出さなかった。
レジャー・イーサリアムアプリのバグは何を引き起こしたか
レジャーの主な売りは1つ。画面で署名内容を確認できることだ。その名称は「クリアサイニング」。署名内容をデバイス画面で平易な言葉にして表示する仕組みである。詳細
TestMachineは、これを回避する方法を見つけたという。同社はAzimuthというAIエージェントを開発し、スマートコントラクトの脆弱性を自動で検出している。独自のEVMBenchでは、既知バグのおよそ86.3%を検知し、約2.7%が誤検知だった。
問題点を平易に説明する。悪意あるウェブサイトが、ユーザーが最初のコマンドを読む間に2つ目のコマンドを端末に送信できてしまった。
ブラウザとデバイス間はAPDU(Application Protocol Data Unit)というチャネルを使う。このチャネルは確認中も受信し続けるため、不正なコマンドも受け付けていた。
結果として、画面上では少額送金と表示されるが、承認ボタンを押すと、実際は第三者への無制限なトークン承認に署名してしまう。
この点が極めて重要である。チェイナリシスによれば、2021年5月以降、承認型フィッシングによる暗号資産の盗難額は約10億ドルに上る。被害者自身がこうした承認に署名していたことが分かっている。関連情報
TestMachineは、このバグをLedger Flexで確認したとする。レジャーは世界180カ国で700万台以上を販売してきた。
レジャーのDonjonチーム「先に発見した」と主張
ギユメCTOはタイムラインを逆転させる。Donjonはレジャー社内のハッキング専門チーム。同氏によれば、自社のAIツールでこのバグを事前に発見し、先に修正を出したという。
公開された変更履歴も日付を裏付ける。バージョン1.22.2は8月12日にリリースされた。セキュリティ面の記載は「Security issues」の一行のみだった。
Donjonはこれまで22件の番号付きセキュリティ速報を公表しているが、今回のバグに関する内容はない。最新のものも6月4日付のMoneroキーリカバリー問題だった。
こうした「沈黙」がTestMachineが公表に至った理由である。レジャーは問題を修正したが、利用者には内容を一切説明しなかった。
ギユメCTOの最大の苦言はやり方だった。同氏によれば、TestMachine側はパッチ公開後にのみバウンティプログラムへ連絡し、バウンティチームとは一切協議しなかった。
「…その後、問題が未解決かのようなスレッドを公開した。だが、それは事実ではない。これはセキュリティ研究ではなく、注目を集めるための恐怖の製造だ」シャルル・ギユメCTO コメント
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TestMachineは、修正の速さを評価し、報奨金は辞退した。レジャーのバウンティはビットコインで個別設定される。
AIが同じバグを2度発見も、人間の対立は解消せず
双方とも機械学習を用いて同じ欠陥を突き止めた。この点が今後、注視すべきポイントである。
レジャーはかねてより、AI攻撃者が弱いハードウェア以上にウォレットへの脅威になると経営陣が表明してきた。関連情報
ギユメCTOは規律の重要性を強調した。
「AIによる高速な調査も、基本的なセキュリティ手続きを守ってこそエコシステムは安全になる。責任ある開示を。公開前の検証を徹底すること。ノイズと結果を混同してはいけない」
こうした対立は珍しくない。これまでも、セキュリティ企業がTrezorハッキング時に大々的に告知した例や、2024年にはCertiKとKrakenの開示期限を巡る対立があった。
問題のバグ自体も再発である。2021年1月、Donjonは同じイーサリアムアプリについて「未対応資産の取引データ未表示」という欠陥を公表していた。何を見て署名したかが一致しない例だった。
今やAIはこうした脆弱性を数時間で発見する。だが、販売元や研究者の意思疎通は依然として人間的なテンポで進んでいる。このギャップが今回の論争の根底にある。
利用者にとっての対応は簡単である。Ledger Liveを開き、イーサリアムアプリを更新し、バージョンが1.22.2であることを確認すること。









