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文科省、200億円増で理系支援を拡充へ―Web3人材育成の起点にも

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執筆&編集:
Shigeki Mori

27日 11月 2025年 14:16 JST
Trusted-確かな情報源
  • 文科省が理工系学部の新設・拡充を支援する基金を拡充し、情報・デジタル分野の人材育成を強化
  • 経産省は2040年にAI・ロボット人材が約300万人、理系人材が100万人以上不足すると推計
  • Web3やブロックチェーン分野は理工系基礎知識を前提とし、専門カリキュラム設計が今後の課題
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文部科学省は「成長分野を牽引する大学・高専の機能強化に向けた基金」を200億円増やす方針を固めた。朝日新聞が27日、報じた。今年度補正予算案に盛り込む。

情報・デジタル分野を中心とする理工系学部の新設・拡充を支援する制度で、全国の大学が改組・新設を進めている。理系学位取得者の割合が主要国と比べて低い日本において、この施策は将来的にWeb3やブロックチェーン分野の人材供給基盤を強化する可能性を秘めている。

理系人材不足への対応策として拡充

文科省の基金支援は、日本が直面する構造的な理系人材不足への対応策である。国際比較において日本の理系学位取得者割合は約35%と、主要国と比較して相対的に低い水準にある。そのため、文科省や内閣府は、人工知能をはじめとする技術革新のスピードに対し、理系知識を備えた人材の育成が追いつかないという危機を感じている。経済産業省の試算によれば、2040年時点でAIやロボット技術の活用を担う人材が約300万人、大学・大学院を卒業した理系人材が100万人以上不足する可能性があるという。

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海外でもブロックチェン業界における人材不足は顕著になりつつある。

アニモカブランズのジョナ・ラウ氏は「クリプトはタレントを急速に失っている。24/7文化ではなく、努力が無駄になる(例: エンジニアが0ユーザーの製品を構築)ことが原因。間違った優先順位付けが人材の燃え尽きを加速させる」と語る。

デジタル化や脱炭素化といったグローバルな産業トレンドが加速する中、企業や産業界からは高度な理工系スキルを持つ人材への需要が一段と強まっている。学校法人や国公立大学、高等専門学校などを対象としたこの支援制度は、複数回の公募・選定を経て、全国の教育機関で理工系学部の改組・新設を促進してきた。成長分野の人材基盤を強化するという明確な意図のもと、情報・デジタル分野への投資が重点的に進められている。

Web3分野との親和性が高まる

注目されるのが、情報・デジタル分野への拡充が進む大学において、AIはもちろん、Web3やブロックチェーン、暗号資産、分散型システム、暗号理論、スマートコントラートといった高度専門性をカリキュラムに取り込む余地がある点だ。ブロックチェーン分野は暗号技術、セキュリティ、分散設計、データ構造、分散コンセンサスといった理工系の基礎知識を前提とするため、理系拡充の流れと親和性が高い。

BeInCryptoは3日、日本の大手金融機関が、数学博士やAI専門家といった理工系バックグラウンドを持つ人材を積極的に採用する動きを強めていると報じた。伝統的金融からWeb3、分散型金融、現実資産のトークン化まで、多様な領域で理工系・デジタル人材の需要が高まっている。企業側の人材志向の変化は、教育側の理系拡充と相まって、Web3を含む先端技術分野の人材供給構造に追い風を与える可能性がある。

実効性には専門カリキュラムの設計が不可欠

ただし、理系学部や情報系学科が増えるだけで、自動的にWeb3人材が供給されるわけではない。大学側や政策当局、産業界が、単なる情報・デジタル系学部とするのではなく、ブロックチェーン、暗号技術、スマートコントラート、分散型セキュリティ、法規制・コンプライアンスといったWeb3特有の専門科目や実践カリキュラムを設計・導入する意志を持つかが肝要である。

学部の新設や再編には時間を要するため、今回の基金拡充の効果がWeb3人材の実需に結びつくには、数年単位の中長期的な展望が必要だ。短期的な人材不足を補うには、社会人教育、リカレント教育、産学連携プログラムといった複合的な手段を並行して整備すべきである。

それでも、文科省の理系拡充支援はWeb3・ブロックチェーン業界にとって重要な種まきになる可能性がある。金融機関を含む産業界が理工系・AI・デジタル人材を重視し始めた今、若手理系人材が大学でWeb3に関連するスキルを正式に学ぶ機会が増えれば、将来的な人材基盤の底上げにつながる。産業界、教育機関、政策当局が連携し、Web3の可能性と必要性を共有し、カリキュラム設計、講座開設、就職支援、産学協働プロジェクトといったロードマップを描ければ、日本国内で制度・教育・市場の三位一体によるWeb3人材育成が現実味を帯びてくる。

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